角野栄子 講演会(2/4)

 角野栄子の娘さんは、五歳ごろのこと、お母さんの角野に、「あっちへいって、こっちへいって、そっちへいって、踏切をわたってかえるがいました」

 と、ちょっとしたファンタジーを話し始めるんだそうです。そのストーリーは、いつも、かえるや女の子と、キャラクターは変わるけれど、あっちへいって、こっちへいって、そっちへいってという冒頭には変わりがない。 

 ファンタジーというのは、こっちの世界へ行って、こっちへ行ってというお話なのではないでしょうか。と、角野栄子は言います。願い事があると、信じられないと思ってしまう、そんな体験と同じように。


 児童小説『ナルニア国物語』でも、ロンドンから疎開して、洋服だんすに行って……会ってみると、不思議なものは、信じる人と信じない人が多い。必ず扉があり、違う世界があるというのです。


 扉、ということばにこだわりがあるらしく、本の第一ページが扉というのは、日本と中国とスペインだけだという角野さん。英語では、ファーストページって言います。

 日本の場合は、中国から来たのでしょう。いい表現ですね。

 その話を、角野さんは思い起こすように語り出しました。

 スペインで、日本語の話になった。

 木を一本書いて、これは木という漢字です。

 木を二本書いて、これは林という漢字です。

 もう一本木を足すと、森になります。

 と、字を書いたら、スペイン人が、

「すごいね、字が絵になってるんだね。日本人はだれでも絵が描けるんだ」

 とびっくりしたらしい。

 それで調子に乗って、角野さん、

「忙しいって字は、こころが亡ぶって書くんだよ」

 と言ったら、

「素晴らしい感性を持っている日本人がいつも忙しいというのは、どういうこと?」

 ぎくーー。という話でした。


 それはともかく。

 ファンタジーのネタは、いろいろあります、と角野栄子さんが例に挙げたのは、旅行の時の車窓から見える景色。

「ふと見ると、電信柱にたまねぎが突き刺さってる。あれはいったい、なんだろう?」

 日常と違う景色を見たときに感じる違和感。

 また、栃木県には、『のるそれ』というものもあるそうです。食べ物なのか、動物なのか、いったいなになのかは不明なんだけど、奇妙に心に残る名前。

 このように、何気なくみたものにハッとしたとき、ファンタジーになるそうです。


 だから別に、異世界でなくてもファンタジーは作れるわけだよ。と、わたしは思ったね。普段から、Ingressのミッションで、あちこち写真を撮りまくってるわたしなので、ネタは仕入れてはいるけれど、かんじんの

「視点を変える」

 ことがなかなかできないのであった。


 かつて、「鉄が貴重な世界からやってきた悪魔が召喚されて、なぜか追い回されて部族の王子と巡り会い、王子とともに部族をたてなおす」

 という話(だったと思う)を読んだことがあるんです。

 タマネギが電柱に突き刺さってる話を聞けば、

「どうせカラスが突き刺したんだろ」

 みたいな常識的意見が当然出てくるわけなんですが、この話をファンタジーにしたって、別に全然かまわんわけだ。

 タマネギの正体は、見つめてくる緑色の怪獣の卵で、魔法少女が怪獣を倒したとき処理をするのを忘れてたとか! (笑)

 怪獣の皮がむけるたびに、少女が涙目になって、ボロボロ泣きながら怪獣に剣をつきたてたりしてね。

 電柱はそれを支えるマネージャーみたいな存在だったりするわけ。

 アイデアばっかり出してるけど、どうもどこかでありそうなネタだなぁ。

 わたしは魔法少女には詳しくないから、だれかやれそうなひとに任せよう(無責任)。


 明日はお休みしますが、あさってはこの話の最終回。金曜日は実写版『魔女の宅急便』

をお話しします。

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