いのちとでんち

☆いのちとでんち

 子どもが家電量販店で、小さな電池が欲しいと言いました。

 「カブトムシが死んだから、電池を入れ替えて」

 AIBOのような犬が出てくると、笑い話では済まされない。

 ロボット犬が本物そっくりになればなるほど、電池さえ入れ替えれば復活すると思い込む子どもが増えそう。

 いずれロボット犬も、摩耗・老朽化してしまうのにね。

 命の価値や生きていることの意味とか、考えなくて済むようになる時代。

 新しい時代。


 AIが出てきて、「わたしの代わりはいくらでもいます」という時代に、

「あなたはあなたの、そのままでいい。あなたが必要なのです」

 と言ってくれる人が、親や恋人以外でどれだけいるんだろうか。


 ☆いろんな本を読んで……

 ライノベばかり読んでいた数年間、さほど気にならなかったことが、

 最近では気になって仕方ないんです。

 つまり、このまま使い捨ての作品を読んでいて、わたしはなにをしたいんだろう、

 ということ。


 ☆流れに任せるのが普通の魚なら、

 流れに逆らうのはイノベーターだと言った人もいます。

 最初は流れに逆らうはずのライノベが、時間つぶしの娯楽小説になり、

 堕落したように感じてしまうわたしは、成長したのか、はたまたライノベが変わったのか。

 ライノベ作家から直木賞が出てるって話も聞いたけど……。

 その人、いま、どうしてるんだろう。


 いままでと違う価値観が、必要になってくる。

 約三千年前にはお釈迦様だって、必死になって考えたという。

 わたしはそこまで必死になれないし、一流でもない。

 ストレスが原因で病気になるぐらいだから、そこまで手が届くとも思えない。

イノベーターというのは、責任もかなり重いといいます。

 光を当てれば、影ができるというもの。

 電池でなにかを動かす、ということが行われて以来、子どもに命の重さを教えてこなかった。深く考えなかったわけですよね……。

 それにしても……。

 モノが電池で動くなら、ヒトはなにで動くんでしょうねえ……。

 最近、NHKの『人体』を見る機会がありましたが、それによると、人体は心臓や脳といった個々の臓器で動くのではなく、全体で動いていると言うことなのでした。

 欧米が考えていた、「人体は魂の容れ物で身体は代用がきく」という、半分以上キリスト教的感覚は、この事実で打ち砕かれたわけですよね……。

 単純に、『魂』と言われても、電池みたいに見えるわけじゃないから。

 取り替えのきかない人間の命が、ロボットのように取り替えがきくなんて、思いたくないね! 


☆新しい時代の普遍的なもの

 グローバル時代はキリスト教と関係があるそうです。

 永遠に変わらない価値観はない。

 宗教だったら別だけどね!

 人間の本質について語ったひとびとは、それほど古びないかもしれない。

 技術的な問題はさておき、本質とか、コアになるところは、譲れないものがわたしにはあるような気がする。

だからこそ、作品を世に送り出すのは、昔ほどの勇気はなくなってきちゃったよ。

 昔はがむしゃらだったけど、いまはわりと冷静だもん。


 そう考えてみると、どんな作品も、自分自身への挑戦だということになる。

 書くことって、すごく、やりがいがある芸術活動だ。

 ―――だれだ、そこで商品にならねー活動だね? と突っ込んでるのは!

 

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