第2話 堅物メガネとマイたんとマナ子ちゃん
「まじかよ……」
ポニ子ちゃんの言う通り、明らかに現代の服を着た人がいた。しかも二人。見た感じはメガネのイケメン青年とおっとり系幼女。
よし、イケメンの方は「お出口はあちらです」とか言ってどこか違うところにでも行ってもらおう。もし反抗したら俺の華麗なる魔術を使って脅せばいいだろう。俺のパーティーに俺以外の男はいらん。
幼女ちゃんの方はドラフト二位でハーレムに入団させよう。おめでとう幼女ちゃん。
「変態もなんか言ってよ、さっきから耳も貸してくれないの」
で、一番頼りたくなかった俺に相談というわけですか。ふざけんな。
「そのあだ名傷つくし俺にはちゃんと名前が――やっぱいいや。とりあえず話を聞こう」
ポニ子ちゃんがあまりにもめんどくさそうな顔をするので仕方なく行くことにした。
俺は片方のいかにも堅物そうなメガネ青年をあたることにした。面倒なのは早めに対処しておこう。
「おーい、そこのメガネ君」
「何か用があるなら五秒以内に言ってくれ。僕は本を読むのに忙しいんだ。でも的確に情報は伝えろよ。あと俺はメガネ君ではない、俺は――と五秒だ。話は終わったな、では」
「無慈悲すぎんだろ!」
自分のセリフを言い終えるまではカウントすんなよ。この堅物メガネ野郎、かなりの変わり者だとは薄々思っていたが、やっぱりそうだ。意味の分からないこの状況で本を静かに読める奴なんて普通はいねぇ。
俺もおかしい方だがそれはこの世界観を熟知しているからで、何も知らないやつがこの状況に置かれたら普通はポニ子ちゃんみたいになるだろうが。
「ね、面倒くさいでしょ」
ほぼ初対面の人の目の前で愚痴れるポニ子ちゃんもすごいな。
「こいつ俺とは別の理由で友達いなさそうだな。かはっ!」
くそ! 俺のほぼ無限HPがめちゃくちゃ削られていく! なぜだ!
「あんた自分で地雷掘るのやめときなさいよ」
「ですよねやっぱり」
ポニ子ちゃんが冷静に忠告してくれた。やけにそこだけは心配しれくれるな。さっきの失言のせいかな。
「諦めて次に行きましょう」
ポニ子ちゃんは木の反対側に先回りする。俺もそれについて行く。
木陰にもたれかかる銀髪ショートの女の子。ちなみに俺の嫁候補二人目だ。おっとり幼女の攻略タイムスタート!
早速肝心な質問を訊ねていこう。
「ねぇ何歳?」
「大丈夫その質問?」
ポニ子ちゃんにツッコまれるが俺はそんなの気にしない。聞きたいことがある、ただそれだけだ。やましい気持ちなんてさらさらない。だから事案にもならない。
「マイたんは一四だ」
と言うことは中学二年生。名前は『マイ』をもじってマイたんなのか。
「あぁそっかー。俺も一六なんだ。ってことはお互いにあと二年だね」
「何がだ?」
マイたんがキョトンと首をかしげる。
「結婚が可能な年齢」
「そうかあと二年で結婚できるのか。それでマイたんは誰と結婚するんだ?」
「俺」
外見で決めつけてはいたがどうやら性格もおっとりらしい。ちょっとおっとり過ぎるとは思うけど。
「そこのまな板女さんと結婚するんじゃないのか?」
マイたんはそこのまな板女さん――ポニ子ちゃんを指さした。
「はぁ⁉」
「ああ大丈夫。ちゃんとどっちも妻として向かい入れるから。マイたん知ってる? この世界は一夫多妻制なんだよ」
「そうか。ならばいいだろう」
「よし俺のハーレムナンバー二はマイたんにけって――いだっ!」
「いたい」
「誰がこの変態と結婚するか!」
俺がメモ帳とペンをリュックサックから取り出し、見出しの『ハーレム』カテゴリーに書きなぐっていたその時。
いつ逆鱗に触れたのかは知らないが、ポニ子ちゃんが俺とマイたんの頭をチョップする。
僕は軽く地面に埋もれるくらいの力でチョップされたのにも関わらず、マイたんは超絶弱めのチョップだ。男女格差が甚だしいぞ!
「あと私はまな板じゃない!」
続けてマイたんにお説教をかますポニ子ちゃん。マイたんの言う通り本当だ、気づかなかったけどだんだんポニ子ちゃんがまな板の突然変異に見えてきた。
でも例えまな板でも人権というものがある。このままだとマナ子ちゃ、間違えたポニ子ちゃんが可哀そうだ。誰だよマナ子ちゃん。
「マイたん、人が気にしていることを言ったらダメだよ」
「わかった。悪かったな、まな・板子ちゃん」
俺とまな・板子ちゃんより身長が遥かに低いマイたんが見上げて謝る。
「はいよくできましたー。えらいぞーマイたん――って超無慈悲っ!」
俺はマイたんの頭を撫でてやる。そしてお腹にグーパンチをもらった。おかしい。
「言い方が変わっただけじゃない!」
だからってなんで俺が殴り飛ばされるんですかね。これほど悲しいことはない。
木に体を思い切り打ち付けた。俺の超回復魔術でヒールをかけてもいいが、それは後でにしよう。今はこの山積する課題を解決しなくては。
木を揺らしてしまったため反対にいた堅物メガネが舌打ちした。
「うるさいぞ僕は本を読んでいるんだ……っておい、ここはどこだ!」
「ごめ――は?」
普通に謝ろうとしたら、そんなとんでも発言が飛び出してきた。
「僕はさっきまで書斎にいたはずだぞ!」
「お前普通の人より時間遅れてんじゃねーの?」
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