庶民傭兵は仕事する
戦争が終わってナルフサと別れてから、何年も平和が続いてる。
喜ばしいことなんだけどさ、公認傭兵だから仕事もくるし指名もあるしきちんと収入もあるけど……
商業施設な宇宙船の護衛だったり、どこぞの金持ちの護衛だったりと、あんまり大口は入んないけど、なんとかなってるけどさ。
全くナルフサに会えないんだよね。
うん、
今年のクリス祭りに
年が明けの
色々仕事したけど、一番、すごかったのがゼカセハリス族が本能で操る超高速の宇宙船に乗って生きた宇宙虎の配送業務の護衛かな……生きた宇宙船操作管って呼ばれてる一族だけあってすごく早かったけど、一番すごかったのが、キナリ操縦士の砂糖の摂取量……ええ、スペーススーツに血糖値あげすぎですと言われまくって、整備士のミズサキさんに船体傷つけるなぁと言われてた。
うん、ミズサキさんの方が表情豊かだけど、心配症なところがナルフサそっくりって微笑ましく思って、守秘義務に抵触しない範囲で通信機だけはつながってるナルフサにメールを入れた。
それは大変だったなと笑い声が聴こえそうなメールが返ってきた。
ナルフサはソラヒコ皇太子殿下の近衛隊長で帝都キョホホトーラの清光宮廷につめているらしく、色々と気を張る仕事が多いらしい。
お前を帝都キョホホトーラに招待したいと言ってくれたメールはエルグレースケール種苗店の宇宙船の護衛でしばらく遠い星まで行ってたから受け取ったのは帝国宙域に戻った半年後で、その頃はナルフサもソラヒコ皇太子殿下の外交で別の宙域に行ってたから実現しなかった。
実際には会えなかったけど平和は良いけど食いっぱぐれないようにするのが大変とか愚痴ったら、お前ならやれるとメールが返って来て嬉しかった。
ナル坊何してやがる〜
そこは違うだろうがぁ〜
私がうれしくて話したら傭兵のおっさんたちが何故か突っ込んだ。
何が違うんだろう?
たまに宇宙ブラックホール宅配便でナルフサから貢物がじいちゃんとかおっさんとか傭兵団のみんなに届いてるから、仲間扱いなんだよねぇ。
私にもどっかの民族楽器送ってくれたよね……ナル坊〜っておっちゃんたちがツッコミ入れてたよ。
私もお礼に仕事で遠くに行った先の酒とかたまに送ってるけどね。
添えられてる自筆の文章も品があっていいとますますじいちゃんに見込まれてるみたいだよ。
今日も指名が入って綺麗なお姐さんやおにいさんをエルドローエ星のパーティ会場に運ぶ護衛についてます。
別に人身売買じゃなくてあくまでコンパニオンで雇われた人たちはピアノ弾けたり踊れたり色々芸術的なこともできるらしい。
宇宙船のサロンで技を磨いたりお茶を飲んだりしてるのは数人だけど美男美女ばかりだ。
今日、組んでるのは新人傭兵リンダちゃんと腐れ縁のディーム兄ちゃんです
「はあ、きれいどころ満載ですね〜」
「まあ、キレイだよね」
リンダちゃんが横目で見てうっとりしてたので警戒を怠らないように促した。
ディームさん、若長なんか感動薄くないですが? たしかにあたしたちが手が届かないような高級なコンパニオンたちですけど、別にみるのはただしゃないですか。とリンダちゃんがディーム兄ちゃんに迫った。
あ~ランちゃ……若長はもっときれいな知り合いがいるからな、それよりビーム銃のエネルギーは大丈夫か?
ディーム兄ちゃんはケルファーゼ傭兵団で育った身内同然なのでナルフサとは当然面識がある
うん、美しいの基準は色々あるけど、ナルフサならあそこでくつろいでても一番きれいかもしれない。
そう思ったら少し笑みがこぼれた。
あ~若長だって乙女ですもんね、その綺麗な知り合いって恋人ですか〜とリンダちゃんがちょっとうるさかった。
まったく、この宙域は宇宙海賊が出るって危険域なのに、のんきだよね……まあ、緊張して動けなくなるよりいいか。
リンダちゃんは本気で新人で傭兵団の入団試験を経てここにいるから、まだ場数は踏んでない。
「ケルファーゼの若長様ならナンバーワンになれますよ」
まるで執事さんのような燕尾服を来てモノクルをつけた美中年がゆったりと奥の部屋から現れた。
今回、連れて行ってる『
ディー厶兄ちゃんがさり気なく前に出ようとしたので抑えて前に出た。
過保護すぎだよ、ディー厶兄ちゃん。
「何か御用ですか? 」
「あなたは人を引きつける」
何故かうっとりとした目で私をオーナーが見て、こちらのお仕事も興味ありませんかと聞かれて速攻で断ったけど、なんか寒気を感じた。
今度この仕事が来たら理由をつけて他に回そうと心に決めた。
サッサか送るぞ〜と思ったら宇宙海賊がやってきたのでサクサク倒しといた。
やはりあなたは戦う姿が美しい、槍舞とかでお仕事しませんか? とオーナーに誘われたけどことわったよ。
私、未来のケルファーゼ傭兵団長なもんで。
エルドローエ星太守のパーティの片隅で護衛をしながら空を見上げると月が5つ出てた。
ナルフサはどんな月を見てるんだろう。
でももしかしたらキョホホトーラは昼間かもとなんかおかしくなって笑った。
ナルフサがオルギ星大公の公女様をエスコートする配信映像を帝国宙域ぎりぎりの辺境の星でなんか面白くない気分で見たときは、その星の自衛団の依頼で宇宙海賊を退治が終わった打ち上げのときだった。
「若長さんよ〜飲んでるか〜」
酔っぱらいな自衛団の若モンが肩を抱いてきたので肘鉄食らわせて倒しといた。
少し手加減……って無理か、ナルさん〜何やってんだ〜とディー厶兄ちゃんがテレビを見て頭を抱えた。
別にナルフサがどんな女の子をエスコートしてても気にしないもん。
若長さんは彼氏とか彼女とかいるの〜と自衛団のおっさんがニヤニヤ聞いた。
彼氏も彼女もおらんわ〜と焼鳥を一気食いして串を飛ばした。
狙いたがわずおっさんのカツラをつらぬいてその星特有の土壁に突き刺さった。
ああ~俺の高級人造毛頭フサフサ君が~とおっさんがツルツルピカピカな頭を手で隠そうとした。
全然、全く隠せてないから。
ちなみになんかの護衛あとのお礼? で花街星とか連れて行かれたときに何故か男女取り混ぜてとりつかれた。
たしかに中性的な容貌してるけどさ、目はブラウンだし、黒に近い茶色のストレートの髪は顎のラインで切りそろえてるし、少し伸ばして髪型工夫しよかな?
花街星につれていかれたときは、最高格の遊男に誘われたけど……酒飲めればよかったんでそっちはおっちゃんとか若いもんにまかせて早々に宿に戻った。
うん、お父さんと同じで好きな人以外とそういう行為できない人間らしいです、つまり彼氏ナシ歴、年齢な私はまっさらさ、どうせ。
「……触らぬ若長にたたりなしって言っときゃよかったな」
ナルさん、不用意に配信に出ないでほしいとディー厶兄ちゃんは壁にしっかり刺さった串とカツラを抜いておっさんに渡した。
慌てておっさんはカツラをかぶった。
だいたい、ランに彼氏はともかく彼女ってなんだよと傭兵のハゼンのおっちゃんが自衛団のおっさんに片眉を上げてウオッカをあおった。
ひぃーと叫んでおっさんは若モンの後ろに隠れた。
うん、確かに同性が好きな人がいてもおかしくないけど、私は一応異性が好きなんだ……ん? なんでナルフサが……
さっき配信見たからだよねと思いながらソルティードックを飲んだ。
配信は帝都の星キョホホトーラの美味しいもの特集になったけどなんかモヤモヤしてた。
ソラヒコ皇太子殿下の側室様がご懐妊した時にシルサム星の大統領から贈られた、珍しい虹色の花の話が配信されたときに届いた
ありがとう〜と返したら仕事頑張れと返って来て嬉しかったよ。
うっとりと傭兵団の本拠地の休憩室で見てたら、夫婦で活動してた傭兵のヤスマのおっちゃんがナル坊〜アピールポイントがちがーうと叫んだ。
あんたの気が利かない贈りモンより良いじゃないの〜綺麗だねぇと傭兵のヒヨリ姐さんもうっとりと映像を見てた、待て、俺だってお前に贈り物くらいやれるぞ〜と騒いだ。
ヤスマのおっちゃんが結局贈ったのは高級ホテルでディナーとかで、魂胆ミエミエじゃないさとおめかししたヒヨリの姐さんは幸せそうに笑ってヤスマのおっちゃんに肩を抱かれて出ていったのをうらやましいと二人の息子のヒロム君と見送った、約一年後、ヒロム君に妹が出来た。
イーリス近衛武官、美しい令嬢と交際? の映像の載った配信にモヤモヤして、手当り次第狩りの仕事を請け負って、若長〜ついていけません〜と騒ぐリンダちゃんを砂漠に置き去りにしかけた。
うん、なんかごめん、リンダちゃん。
ディー厶兄ちゃんがいなかったら干からびてたかも……
その日の夜にあれは事実無根だ〜と言うメールを何故かナルフサから受け取ったけどさ……べつに関係ないもん。
そしてナルフサに実際には会えず何年もたっちゃったんだよね。
その間、ケルファーゼ傭兵団も団員の入れ替わりが多少あったり小競り合いに駆り出されたり、護衛したり色々とあった。
そんなある朝、自宅の自動調理機から食事を出して席についた。
ちなみに傭兵団の本拠地に大昔の移住宇宙船が残っててそれを改造拡張していったのがケルファーゼ傭兵団の基地なんだけど、その居住部分にじいちゃんと一緒に暮らしてる。
内装は最近のものだけど改装してない部分とか行くと古代のロマンを感じて……だから私、遺跡とか古代とか歴史とか好きなのかな?
話をもどして正しい? 蒼い星風の食事だしごはんだよねと思いながら箸を手に持ったところでじいちゃんが突然話しかけた。
「ラン、お前、この先どうするんだ? 」
「ん? どうするってどういうこと? 」
ミソスープを飲みながらじいちゃんを見ると意外と真剣な顔をしてた。
「俺は、もうすぐ引退する」
「……えーと、そうなんだ」
突然の引退宣言に動揺した。
私は両親がいない、同じ依頼の戦闘で宇宙船ごと散ったからだ。
ケルファーゼ傭兵団の
叔父さんとその奥さんの叔母さんは傭兵じゃなくて事務とか営業とか担当だし、
「ランもいい歳だ、そろそろ伴侶を決めて、俺が安心してやめられるように頑張ってくれ」
「……う、うん頑張るよ」
ひ孫を楽しみにしてるぞというじいちゃんのいい笑顔にプレッシャーを感じて朝御飯の卵納豆にむせたよ。
その前でどんぶり飯に卵納豆かけてかっこむ老人がどこにいるんだよー。
まだまだ現役行けるんじゃないのー。
いつか来る道でも、団長も伴侶探しも自信ない〜。
団員のおっちゃんたちは面白がるだけだろうし、若いもんには弱みは見せられないし……ディー厶兄ちゃんには甘えてばかりいられないし……ナルフサ……うんナルフサに相談しよう。
その日に速攻にナルフサにメールをだした。
私もソロソロいい歳になったし、傭兵団も継がないとだし、伴侶を探そうかなぁ……(汗)とかだしちゃったよ。
いつが暇だ、キョホホトーラに来れるか? 会おう。
光の速さ(光で送ってるんだけどさ)で返信が返ってきた。
なんか、忙しいナルフサが心配してくれるのが嬉しくなって仕事があんまり忙しくない時期だったから調整して憧れの帝都にのこのこ行っちゃったよ。
うん、何故か仕事がいつもわんさか入ってるのにほとんど入ってなかったんだよね。
じいちゃんもおっちゃんたちも快く出してくれたしさ。
キョホホトーラ行きの宇宙船のチケットもとれたし……
リンダちゃんは若長〜いいなぁ、私も行きたーいと言ってディー厶兄ちゃんに今回は邪魔するな、いつか連れていってやるからと言われてた。
あの二人仲がいいなぁと思ってたら付き合いはじめたらしい。
本当にディー厶兄ちゃんって面倒見いいよね。
とにかくキョホホトーラ行きの定期な宇宙船に乗った。
一応辺境星でも直行船は出てるんだ。
闇に浮かぶ故郷の星を見ながら思ったのはもうすぐナルフサの生身に会えるなぁってことだった。
ま、まあ、キョホホトーラなんて中等学校の修学旅行以来だよ。
ナルフサといっぱい話してくるぞー。
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