第28話 奥井香澄のやる気① デートに誘う

 朝、部屋に音楽が流れる。クラシックでタイマーをつけていた

ので目覚まし変わりだ。

 しっかりした性格の香澄はこうして朝を迎える。

 朝のシャワーをしてからピアノがある部屋に向かう。

 

 香澄の家は音楽一家で、それなりに両親が有名なので

家も金持ちだ。

 だからピアノも大きいのがあるが、今は朝なので

静かに弾く。


 一時間程弾いてから部屋に戻る。いつもはそこから

勉強をするが、今は柊介の事が優先になっている。


「さて、どうするかな。もう他の奴も誘ってる

だろうし。いっそ強引に、いや、それじゃダメだ

あいつは押しに弱いだろうが、傷つきやすい。それに

やっぱりちゃんと結ばれたい」

 

 香澄は自分の胸を触る。エッチな事を覚えてから

柊介を思ってはこっそりしている。でも今は

さすがに朝なので止めた。

 リビングに行って両親と朝食を食べるが

少し落ち着かない雰囲気を出してしまっているので

両親にも聞かれるが、香澄は適当にごまかした。

 

 学校に向かう香澄。ついてからは教室に鞄を

おいて音楽室に向かう。

 音楽室は二つあり、一つは準備室にもなっている。


 そこに向かおうとすると音が聞こえて来た。


「お!彼が来てるな」


 香澄はすぐにそれが柊介の演奏だとわかった。その

音がする部屋に入ると柊介が演奏をしている。

 静かにその演奏を聞く。それからいつもの様に?

後ろから柊介を抱きしめる。


「おはよう浅倉くん」

「!?先輩、お、おはようございます」

「どうしたそんなに慌てて」

「い、嫌、その」

「ほら、手が止まってるぞ」


 香澄は後ろから柊介の手を握り、鍵盤に乗せる。その

香澄の温かい手が柊介を興奮させる。


「先輩」

「気にするな。今は二人きりなんだからな」

「そうですけど、さすがに」

「キミはもう少し気を強くした方がいいかな!

そうすればもっと男らしくなれるのにな」

「ご、ごめんなさい。でも」

「わかってる。キミは優しいからな。そのままでも

大丈夫だよ。年上の私からみたらな」

「そ、そうですか」

「ああ。だから、私がリードしてあげよう」

「先輩!!」


 香澄は柊介をまたがり座る。強く抱きしめ

腰も揺らす。


「何か当たってるぞ浅倉くん」

「ごめんなさい」

「大丈夫だ。その方が私もうれしい。前も言ったが

私ならいつでも受け入れるからな。なら今から

でもしてみるか?」

「そ、それは」


 と、チャイムが鳴る。香澄はそこで動きを

止めた。柊介にはまたがったままだが。


「やはり私ではダメか」

「そ、そうじゃないです。先輩の言うように僕は

気が弱いですから。強引になんてできないですし」

「わかってる。無理にそうする必要はないさ。でも

自分が変わりたいと思うならそれぐらいの事は

しないと変われないぞ。今、浅倉くんは自分を

変えようとしてるだろ」

「わ、わかりますか?」

「ああ。二つだけだが年上だからな。それに

自分の思い人の事ならなおさらだ」

「・・・」

「まぁそれはそれとして、浅倉くん。もう誰かから

クリスマスの誘いは入ってるか?」

「え?えっと」

「誘われてるか。おそらく朝比奈あたりかな」

「はい。誘われてます」

「そうか。じゃぁ私も誘うとしよう」

「え?誘うんですか?」

「ああ。まだ返事はしてないだろうからな。だから

私も誘おう。クリスマス、一緒にデートをしてほしい」

「先輩」

「わかってる。私は受験生だ。でも、初めてのこの

恋をすぐには終わらせたくはない。だから、キミとは

卒業しても付き合いをしたい。友達としてもだ」

「あの、本当にうれしいです。こんな僕にそんな事を

言ってくれるなんて。だけど」

「ああ。時間はまだある。キミはゆっくり考えても

いい。たとえ選ばれなかったとしても誰も文句は

言わないよ。キミの性格はわかってるからね」

「すいません」

「じゃぁ返事はいつでもいいからな。あ、そうだ」

「!?先輩!」

「じゃぁ向こうの音楽室に行くな」


 香澄は柊介の頬、いや、耳を少し口にふくんで

舐めた。

 部活に入ってからも、柊介の感触を思い出し

ながら練習をする。


 放課後の部活の時にはいつもの香澄に戻り

普通に部活を終えた。

 家に帰り、お風呂の湯でゆっくりする。


「今日も彼に触れたな。でも、さすがに強引

すぎたか。これ以上は嫌われない様に

しないとな」


 柊介の性格から、強引すぎるのはよくないのは

わかっていた。でも、初めての恋の欲望は

大人っぽい香澄でも止めるのは難しかった。

 

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