第23話 僕と学園祭③ 自分と向き合う柊介

「失礼します」

「どうした?体調でも悪いのか」


 洋子が保健室に入ると女の先生がいた。


「あの、浅倉くんいますか?同じクラスの

楠洋子です」

「クラスメイトか。だそうだがどうする浅倉」


 カーテンが開くとそこに浅倉が居た。


「大丈夫?浅倉くん」

「うん。ごめん心配かけて」

「・・・浅倉くん中学の時の事だけど」

「!?ごめんそれは」

「うん。先生から少し聞いた。全部じゃないけど

嫌な思いをしたんだよね」

「・・・あれは嫌というよりは完全に!?」

「大丈夫?」


 柊介は口に手を当てた、一度ベッドから起き

うがいをした。


「浅倉、無理に話さなくていいぞ」

「大丈夫です。せっかく心配してきてくれたん

ですから。僕も中学の時の事は決別したいですから!

話します」


 つらそうにしているが洋子に全部話した。話

終わると保健室は静寂になる。

 

「私も同じだったよ。やっぱり友達もいなくて

アニメとかゲームが好きだったからよけいに

嫌われてた。でも、今はそれでよかったって

思うよ。ここでは浅倉くんと仲良くなれたし

私は自分の趣味を否定しない」

「楠さん。そうだね。僕も好きな事を否定は

したくないな。でも、性格はすぐには変えれない

かもしれないけど頑張ってみるよ」

「うん。まぁ今の浅倉くんのままでも私は

いいと思うけどね」

「楠さん」

「よし!浅倉、教室戻るか?」

「その前に行きたい所があるんですけど」

「まぁ授業中じゃなければいいぞ」

「はい。えっと、楠さん」

「浅倉くん、・・・柊介くん、洋子でいいよ」

「えっと、じゃぁ洋子ちゃん来てくれる?」

「ええ」


 二人は保健室を出て音楽室に向かった。まだ

授業が始まる前なので誰もいない。

 柊介はピアノに向かい弾き始めた。


「やっぱりすごいね柊介くん」


 その音は学校中に響いていた。弾き終わり

二人は教室に戻った。

 二人が入ると、浅倉を見た進藤がかけよってきた。


「浅倉!大丈夫か?」

「ごめん進藤くん心配かけて」

「まったくだ。お前がいなきゃ始まらんのによ」

「ごめん。それでさ放課後少し時間くれるかな」

「お!いいぞお前から言ってくれるならよ」

「ありがとう」


 進藤以外のクラスメイトも少し浅倉を心配

している感じがしていた。それもあの話を

聞いたからなのかもしれない。

 それは浅倉に詰め寄った彼も同じだった。

 放課後、浅倉は思い切って立ち上がった。すると

先にあの男子生徒がやってきた。


「おい、悪かったな。手をだしちまってよ」

「ううん。僕もちょっと調子に乗ってた

かもしれない。こっちもごめん。それで

だけどさ」


 柊介は皆にアンケートを聞いた。それから

いつも通りに練習もした。

 翌日、柊介は昼休みにゆい達と食堂にいた。


「本当に心配したんだからね」

「ごめん朝比奈先輩。奥井先輩も」

「まぁ立ち直ってくれてよかったよ。あまり

心配はかえないでもらいたいけどな」

「はい。そうします。僕も自分を変えたいって

思ってますから」

「そうだな。今のキミならしっかりしてる

感じもあるし私は好きだぞ」

「!?わ、私も好きだよ浅倉くん」

「ありがとうございます」

「・・・・・・」


 洋子は黙っていた。二人がそういう話を

していても自分の方が距離は近いと。


 放課後、この日はバイトに向かった柊介。

 今まで以上に明るくあいさつをしたら

他のスッタフは不思議がっていた。


「あいつ機嫌がいいな」

「ああ、あんなに明るい奴だったか?」


 それを見て佐伯も柊介に何かあったのか

気になっていた。

 時間になりバイトを終え着替える柊介。事務所で

退勤をすると店長と佐伯に呼び止められた。


「浅倉くん何かいいことあった?」

「確かにそうだな。お前、今日は声が出てたぞ」

「あ、ハイ。ちょっとありまして」

「そうなんだ。でも、やっぱり明るい方が

似合ってるよ。最初に会った頃とは全然違って

見えるし」

「そうだな。まぁあのままよりはましか」

「ハイ。これからもう迷ったりしません!

もっと前向きになろうと思います」


 柊介は笑いながら言った。家に帰っても

姉と母親にも驚かれた。

 この事を咲夜にも電話で話したりして

柊介は中学の時とは違う自分になろうと

改めて決心したのだった。

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