第21話 僕と学園祭① あのライブをもう一度。でも・・・
ファミレスガトレスは朝から深夜までやっている
レストランで、その時間によって様々なお客が
やってくる。
柊介が働くのは夕方から夜の初め頃までで
主にその時間は学生が多く、人が入る時間でも
ある。なので柊介は佐伯の付き添いみたいな感じで
教わり、食器の片づけなどがメインでやらされていた。
それで、緊張もあり、失敗だらけだったが
とりあえず時間まで柊介はやり遂げた。
「やっぱりだめだな。家でもやってないのに」
休憩室で少し落ち込んでいると佐伯が
やってきた。
「初めては皆こんなもんだよ。あとはそこで
自分がどうすればいいかを考えれるかだね」
「どうすればいいか、わかってるつもりでも
体がついていかない。ゲームと一緒で経験を
つんでいかないといけないのかな」
「そうね。経験はつまないと意味がないからね!
浅倉くんはこれからよ」
「ありがとうございます」
柊介はとりあえず帰宅した。それから柊介は
家でも泉の手伝いをしたり、して少しずつ
勉強をしていった。
そうしてバイトを始めてから一週間が
経った頃、学校では学園祭の事で盛り上がっていた。
前回のオリエンテーションでは一年だけだったが
今回のは学校全体でのお祭りなので生徒達は
一番気合が入るイベントだ。
放課後、柊介のクラスも何をするかを話し合っていた。
今回も進藤が進行を進める。そしてやはり
柊介に話を振る。
「やっぱ今回もお前に頼もう。なぁ浅倉」
「・・・・・・いやだ」
「はっきり言ったな。前回みたいに盛り上がり
たいんだ。何かないか?」
「だったら、前回と一緒でライブでいいんじゃない?」
「それもいいけどな。他のクラスでもやろうと
してるところはあるらしいしな」
「別にかぶっててもいいんでしょ?」
「確かにな。よし、それならこの学校での音楽は
うちのクラスの専売特許ってことを見せつけようか」
「それもいいんじゃない」
「ああ。他にできない事やるよりはいいだろう」
「皆もいいみたいだな。じゃぁそれを率先する
リーダーを」
「僕はやらないよ」
「またはっきりと。でも、この中で一番うまいのは
浅倉なんだけどな」
「進藤くんもできるでしょ?それに、僕今バイト
してるし」
「浅倉がバイト?」
「初めて知った」
柊介はクラスには話していなかった。当然、楠
以外では話せる人はいないからだ。
「でも、できるなら助けてほしい。このクラスでは
今回だけしかできないんだ。来年も一緒なら
いいが、この学校は毎年クラスが変わるからな」
「だから進藤くんが」
「頼む浅倉」
「・・・・・・浅倉くん、私も手伝うから一緒にやろ」
「楠さんまで・・・・・・わかったよ。でも、いつもは
無理だよ。僕ができる時でなら手伝うよ」
「ありがとな浅倉。よし、じゃぁそうと決まったら
皆、今日から練習するぞ。他のクラスに負けないようにな」
「おお!」
こうしてまた柊介のクラスはライブをする事になった。
でも、柊介は迷っていた。バイトをしている事も
あったが、それ以上にこれは将来にも関わってくる
事にも関係していたからだ。
翌日のバイト先、柊介は休憩室で、店長と
佐伯に学校の事を話した。
「学園祭か。もうそんな時期か」
「なつかしいですね。高校なら一番楽しいイベント
ですからね」
「そうだな。それにしてもお前が演奏をできる
なんてな」
「本当でね。私も浅倉くんは不器用かなって
思っちゃいましたよ」
「すいません。確かに不器用ですよ。好きな事
以外は。でも、今の仕事も好きになれるように
勉強はしてます。だから余計に学園祭の方が」
「邪魔になってると。まぁそれだけうちに
前のめりになってくれてるのはうれしい事だが
学校の方も大事にしろよ。卒業したら一生戻らない
時間だからな」
「一生戻らない時間」
「そうですね。バイトや仕事は何度もやれますけど
学生の時はその時しかできないですからね」
「そうですね。でも、ここのシフトは」
「それは気にするな。元々お前はまだ戦力には
なってないしな。今まで通りやるさ」
「そ、そうですか」
店長ははっきりと言う性格だった。だから
美人だが性格がきついと男性従業員達は
言っていた。
それでも、学校を優先していいと言われたので
柊介はクラスの練習につきあっていた。
「浅倉、これ難しくないか?」
「うん。難易度はあげてる。前よりすごいものって
進藤くんが言ってたから」
「そうだけど、上げすぎだろ」
「うん。普通に難しい」
今回も一緒に組む進藤と楠は浅倉からもらった
曲に苦戦していた。それもそうだ、浅倉はデジタルで
普通に演奏するのは難しいレベルのを作って
いたからだ。
そんな中でやはりというべきか、それは
起こってしまった。
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