第16話 僕の夏休み③ 僕達と最大規模のアニソンライブ

 八月の半ば、いよいよコミカルフェスが始まる

週になってきた。

 柊介はその間、外に出る機会が多くなり、どうにか

一人でも色んな店に行けたりした。それも、あのファミレス

での店員との出会いもあったからだ。あれから

柊介は一度会いに行っていて、彼女が佐伯(さえき)めぐみ

さんとわかり、大人の女性だった。

 

 そんな感じで過ごしていて、コミカルフェスまで

あと六日後になった時、咲夜からの誘いがあった。


「アニソンライブ!?」

「そう、今度それに私が出るの事になったの。それで

皆を招待しようと思ってね」

「す、すごいですね。あれってすごい大きな会場で

ライブをするんですよね」

「そうよ。お客の数は二万。私もまだしたことない

ぐらいの大規模なライブよ」

「そ、それを見に行けるんですか?」

「ええ。もう、普通のチケットは完売してるけど

関係者席とかでなら見れるからさ。よかったどう」

「でも、ただ知り合いだからってだけで大丈夫なの?」

「大丈夫。他の出演者も家族とか友達を呼んだり

してるから」

「そ、それならお言葉に甘えようかな」

「ええ。是非来てね。ライブは三日後だから

他の子達にも伝えといてね」

「わかった。ありがとう咲夜さん」

「どういたしまして。それじゃお休み」

「はい。おやすみなさい」


 柊介はすぐにゆい達に連絡した。それから三日後

会場がある駅に皆集合した。


「すごい人だね」

「まだ、朝なのにこの多さだからな」

「ライブは夕方なのにね」


 ゆい、香澄、洋子の三人と柊介の四人は駅前で

その人の多さに驚いていた。

 

「でも、これからどうする?まだだいぶ時間は

あるわよ」

「そうだな。どこかで遊ぶか」

「あ、それならちょっとよる所があるんだけど」


 柊介に言われ、三人はついて行った。柊介が

向かったのは、ライブ会場だった。

 さすがにここにはまだお客は多くないが、それでも

人はおり、ゆい達は目立っていた。そこにいる

柊介も逆の意味で見られていた。

 柊介は会場の裏に行き、誰かと連絡を取る。


 少しするとそこにやってきたのが咲夜だった。


「よくきたね皆」

「咲夜さん。ありがとう」

「いえいえ。ゆいちゃん達も来てくれてありがとう」

「ええ。でも、まさか今一番規模の大きいアニソン系の

ライブを見れるなんて」

「本当ね。普通私、チケット買えなかったし」

「本当にすごいライブみたいだな」

「ああ、奥井先輩は知らないですよね」

「うん。だから話を聞いて調べたんだが、本当に

これに咲夜さんが出るのか?」

「ええ。出るわよ。だからここにいるんだし!」

「そうだな。それで、これからどうするんだ?」

「そうね。特別にあなた達にステージを見せて

あげる。これは関係者じゃなきゃできない事よ」

「大丈夫なのか?学生私達がそんなところに入って」

「ええ。このライブの発案者の人が良い性格でね

身内でも友達でも連れてきていいみたい。だから

大丈夫よ」

「それはすごいな」

「じゃ、じゃぁもしかしてその発案者の

高山雅美(たかやままさみ)さんにあえたり?」

「できるわよ。じゃぁ行きましょうか」


 咲夜は柊介達を連れて中に入った。そこはやはり

アリーナ会場で、中は広く、呆然と歩く柊介達。

 咲夜が部屋のドアを開ける。そこは控室の様で

やはり広い。すると、そこに誰かが居た。


「高山さん!お疲れ様です」

「お疲れ咲夜ちゃん。おや、その人達は?」

「ええ、私の知り合いです。皆、このライブを

見たことがなかったみたいなので誘いました」

「そうなんだ。初めまして声優の高山雅美よ」

「し、知ってます。ファンです」

「ありがとう。本当にファンみたいね。緊張してる

のがすごいわかるわよ」

「す、すいません」

「あの、私もファンです」

「私も」

「それはうれしいわね。やっぱり皆アニメやゲームが

好きなのかな」

「ハイ。好きです」

「そうか。そういう人とつながりができるのも

声優をやっててよかったと思えるよ。な、咲夜ちゃん」

「え、ええ。そうですね」

「それで、これからどうするの?まだ時間はあるわよ」

「それなんですけど、ステージに連れてって

いいですか?」

「いいわよ。一応準備中だから隅の方でしか

みれないけど」

「それでいいです。じゃぁ皆行こうか」 


 高山と別れ、柊介達はステージの方に向かった。そこには

映像でしか見る事のできなかったステージが広がっていた。

 スタッフが準備をしている。音楽も流れていて

マイクの音声も飛び交う。そこに咲夜が入って行った。


「皆さん今日はお願いします」

「よろしく」


 あいさつをし、咲夜も準備をする。


「じゃぁちょっとリハしてくるから見ててね」

「うん」


 柊介達は言われた通り隅の方で見ていた。咲夜は

まだ私服だが、マイクを取り、歌い出す。


「さすがだな」

「ええ。こればかりはすごいわね」

「本当」


 ゆい達は柊介を争うライバルだが、咲夜の歌には

素直に称賛をした。

 そんな感じでリハを見てると咲夜が柊介の

所にやってきた。


「ねぇ、よかったら演奏してみる?」

「え!?で、でも邪魔に」

「大丈夫。リハはうまくいってるから。ほら行こう」

「さ、咲夜さん」


 昨夜は柊介の手をつかみステージに連れて行った。


「やられた」

「ええ。ちょっとほめたらこれですよ」

「ずるいですね」


 三人はそこから動こうとはしなかった。柊介は

キーボードがある所に立った。


「ほら、弾いてみて」

「でも、音出していいの?」

「いいのいいの。私も聞きたいし」

「わ、わかった。じゃぁやってみるね」


 そういって柊介は演奏した。そこに高山もやってきて

ゆい達に話しかける。


「あれは?」

「あ、高山さん!すいません。咲夜さんが浅倉くんを

連れて行って」

「それはいいが、彼、うまいじゃないか」

「ええ。浅倉くん、楽器できるんです。この前も

学校で演奏しましたから」

「そうなのか。まぁ表情は硬いが、演奏はいいな」


 柊介の演奏に準備していたスタッフも耳を

かたむけていた。

 そんな感じで時間が経ち、ついにアニソン系で

最大規模のライブが開催される。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る