第11話 奥井香澄の気持ち

 朝、香澄は早くに起き、先に仕度をしてから部屋に

あるピアノを弾く。

 少しして朝食とり、時間になると家を出る。


 香澄の家から学園までは三十分程でつく。電車に

乗ってる間も香澄はイヤホンで音楽を聴く。

 学園につき教室に鞄を置いてから音楽室に

向かう。今香澄は吹奏楽の部長だ。なので誰よりも

早く来て準備をする。

 真面目な性格なので一年生に任せるとかより

自分でしてしまうタイプだ。

 だから後輩からも尊敬される。


 他の部員達も徐々に集まってくる。吹奏楽部の

部員は男女合わせて三十人程だ。

 今は夏に開かれるコンクールに向けての

練習をしている。

 香澄がピアノを担当し、曲を決める。練習が

始まると、香澄は的確な指示を出して教える。


 朝練が終わり、教室に戻る。普通に授業を

受け、休み時間はクラスメイトと談話をする。

 放課後になり部活をして、家に帰る。それが

香澄の日常だった。そう、柊介と会うまでわ。


 ある時、いつもの様に音楽室に向かうとピアノの

音が聞こえた。

 他の部員がこの時間に来ないのはわかっている

ので部員じゃない生徒が弾いていると思った。

 少しドアを開けて覗いてみるとそこには知らない

生徒がいた。しかも、こういうのもあれだが

少し容姿は悪い感じがしていた。香澄はそういうのも

はっきりするタイプだが、それ以上にピアノの

音が気になっていた。

 その時は音楽室に入らず、隣の準備室に入り

彼が出るのを待った。


 それからたまに彼を見かける様になり、彼が

一年生だとわかった。

 今まで部員の中でもうまい演奏をする人は

いたが、何かが気になる事はなかったが、その

何かを彼から感じて思い切って声をかける事にした。


 そうして色々あり、今の状況になっている。それは

少しずつ表にも現れて来て、部活の時でもピアノを

弾いていると、柊介が弾いている曲を弾いて

しまっていた。

 それに部員が気づき、つっこむ。


「部長、何弾いてるんですか?」

「!?あ、すまん。違った。やり直しすよ」

「最近ちょっとおかしいですけど、何か悩んで

るんですか?」

「いや、まぁ少しな。悪い、演奏を変わってくれ

ちょっと出てくる」


 香澄は音楽室を出た。部員達はそわそわしながら

香澄の事を話していた。

 その香澄はトイレに行き、顔を洗う。


「まずいな。こんな気持ちになるのは初めてだ!

どうにか平常心にならないとな」

 

 時間をおいて、音楽室に戻り練習を再開した。


 休み時間、柊介に会いに教室に行く、この日は

ゆいは来てなく、二人だけで居られた。

 昼休みも柊介と食堂で食べ、それから音楽室に

行き、柊介の演奏を聴く。その時、香澄は少し

大胆になり、柊介に密着する感じで手を握る。


「こうした方が良く聞こえるんじゃないか」

「そ、そうだね」


 柊介は明らかに背中に香澄の胸を感じて

動揺している。香澄はそれをわかって

やっているので、柊介の反応を見るのが

少し楽しかった。

 放課後も、柊介を部活に呼び、演奏をさせ

部員達と距離を縮めさせ、ここに来やすいように

させていた。

 そのかいもあり、柊介は少しずつ人前でも

演奏できるようになっていた。

 その姿勢に香澄はますます気にいり

柊介を男の子として意識していく。


 家でも柊介の事を考え、いつもは短いお風呂の

時間も柊介の事を考えていると、長くなって

しまっていた。

 少しのぼせた感じで部屋に戻り、ベッドに

横たわる。


「これは確定だな。初めてだな。こんな気持ちは!

でも、私で大丈夫だろうか。ゆい達もあいつを

狙っている。私が勝てるのは、胸ぐらいか?」


 香澄は自分の胸を触った。柊介の事を思うと

手が止まらなくなっていた。

 その時に下から親の声が聞こえ、手を止めた。

 

 リビングに行き、食事をとって部屋に戻る。


「もう寝るか。また変な気持ちになりそうだ」


 真面目な性格なので香澄はエッチな事はまだ

少ししか知識はなかった。

 でも、柊介といる事でそういうことをゆい

達からも聞かされる事になっていく。


 これが今の香澄の気持ちだった。

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