第60話 メインディッシュの味
「コロちゃん、やっぱり奥に行くの?」
ぱたぱた
うわー完っ全にやる気だよコロちゃん…
さっき俺を気遣ってくれたのは、この布石だったのかなー
ぱたぱた
「あ、うん。好き嫌いは無いにこした事はないもんね!」
いけないいけない
思考が漏れてた
「なんかここ、今までと違ってるね」
光球の範囲を歩いてて、たまに蜘蛛が飛び出してくる
5Fは明るいうちは出てこなかったのにな…
おかげでコロちゃんはすっごいゴキゲンだけど
「コロちゃん、この先に集団が居るんだけど…」
ここ、もしかして蜘蛛しか居ないんじゃないのかな
6Fに来てから蜘蛛しか見てないぞ…
早く帰ってスキルの実験と熟練度稼ぎをしたいんだけどな…
ぱたぱた
「お、お供します…」
どうせ集団と接敵するんだ
薄暗いよりは明るい方がいいだろ
「光よ」
相変わらずの呪文詠唱はノーラへのリスペクトだ
決して気を紛らわせる意図があるとかそういうのではない
とか何とか現実逃避してる間に、団体さんとご対面〜
「で、でかい…」
ひと目見てわかる
こいつ、親蜘蛛だ
===
- マザーパラタ 0 -
状態:正常
Lv 12 Exp 2,364
HP 376/376
MP 154/154
SP 310/310
ATK 384
DEF 322
MATK 102
MDEF 90
SPD 317
STR 437
VIT 414
MGC 238
AGI 373
スキル:振動感知、捕食Lv2、指揮
===
マザーなのに0歳とはこれ如何に
やっぱりリポップするんじゃないのかー?
もしや生後一年未満で子持ちなのかー?
そしてLvはきっちり12になってるー
子蜘蛛なんて一撃でプチっといくぞこいつー
「コロちゃん!」
俺が現実逃避してる間にコロちゃんが突貫してるー!?
「コロちゃん戻って!俺が相手する!倍化しても危ない!」
ステータス的には倍化したコロちゃんといい勝負だ
ここは俺が…
食ってる…
こいつ、子蜘蛛を食って…回復してる!
だ、大丈夫だ…俺のステータスと【魔法剣!】なら一撃で…
「一旦退くよ!」
ぱたぱた
子蜘蛛が追いかけてくる!
こいつらを始末して…
「親蜘蛛速えええええええッ!?」
そうだSPDがめちゃ高いんだこいつ!
もはやここのボスか何かだろ絶対に!
見上げるような巨体がコロちゃん並のスピードで…キモイィィィィ!!!!!
足元で子蜘蛛がプチプチ弾けていくぅぅぅぅ!!!!!
「来るなぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
ヤバイキモイエグイ恐いぃぃぃぃ!
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
あ、倒した
「まだ子蜘蛛がウヨウヨ居る〜!!!!」
もともと居た取り巻きと割れた卵から蜘蛛の子が蜘蛛の子を散らすようにーーーーー!!!!!?????
終わった…
多分、子蜘蛛を60は始末したと思う
今日だけで子蜘蛛を倒した数が100を下回る可能性があるだろうか
いや、ない
「広範囲殲滅型炎系スキルを持ってなくてよかった…」
持ってたら絶対に使ってた
ここが洞窟だって事なんて考えなかったはず
それくらい、恐慌を来してたと思う
今、改めて自信を持って言える
「蜘蛛キライ」
コロちゃんは子蜘蛛を順番に食べている
食べ放題だーわーいみたいな感じか
しかも好物のみの食べ放題でメインディッシュは特大だ
焼き肉食べ放…いや、ここで連想するのは危険だ
大事な勝負時に連想したら困る
いやーあの親蜘蛛強かったなー
あのステータスは巨体から来るものなんだろうなー
巨大な虫は自重で潰れるんじゃなかったのかよー
まだかなー
コロちゃん食べ終…
「どしたの?コロちゃん」
コロちゃんが親蜘蛛の前でじっとしてる
子蜘蛛はもう食べ終わってたのか
ぷるぷる
なんだろう、ニュアンス的には『ちらっ』みたいな
「食べないの?すんごい食べ応えありそうだよ?俺はあっち向いてるから遠慮しなくていいよ」
ぷるぷる
「ん?」
コロちゃんの方をもう一度振り返ると…
ゲーしてる?
いやコロちゃんは取り込むようにして食べてるからゲーは出来ないのか!ぺっ!しなさい!
「コロちゃん!ぺっ!しなさい!ぺっ!」
ぷ、ぷるぷる
「無理に食べなくていいから!不味いなら不味いで!食べなくても気にしないから!」
ぷ、ぷるぷる
「いや、手伝ったは手伝ったけど!食べに来たんだけど!いいから!」
どよーん
あ、コロちゃんの新たなリアクションだ
「頑張って食べに来て、いざ食べたら死ぬほど不味いって、めちゃくちゃ辛いよね…」
なでなで
ぷるぷる
仕方ない
気は進まないけど、自分で解体して魔力結晶を取り出すか…
「あ、コロちゃん!また敵が近付いて来てるよ!子蜘蛛だったら口直しに食べちゃえ!もし親だったら呼ん…ぬわーっ!」
ぱたぱた
今度はコロちゃん、親蜘蛛無視で子蜘蛛を片っ端から容赦なく伸していく
いつの間にかって言うか、さっきの親蜘蛛戦でLv上がってまた少し強くなったんだな
しかもなんか、的確に敵の位置を把握してるような気がする
ゴブリンに囲まれた時も死角はないのかと疑ったけど、今回は相手の向こう側も考慮したような回避だ
擬態したり、うにょんうにょんしたりの組合せですんごい動きだ
【集中】で回避率は上がってると思うけど、ここまで効果あったかな
あ、巨大化を使って敵を圧殺し始めた
食べるのも嫌になって回避すら面倒になったのか
下手したら洞窟が崩れるかもしれないなこれ
色々と後で注意と確認し
「人が考え事してる時に来るなよもー!キモいんだよおー!」
俺のATKと相手のDEFを考えれば明らかにオーバーキルだけど仕方ない
この敵は相手の力量も見極められずに
「追加かよもー!」
暴れた
暴れまくった
これが無我の境地か
気付いたら相手は全滅していた
「意識を手放したようなもんか…」
時間的な効率で言えば最高なんだけどな
相手が蜘蛛でさえなければ…
「この明かりのせいか。明かりのせいなのか!」
でもさすがにもう、光が届く範囲に集団は居ないようだ
「こんだけ倒してて意識を手放してるって、倒せるようにはなったけど結局は苦手なままって事なのかな…」
それから約一時間、必死に回復魔法の熟練度を稼ぎながら子蜘蛛から魔力結晶を取り出し続けるコロちゃんを横目に、俺は俺で嫌々ながら親蜘蛛を解体した
デカいと魔力結晶まで辿り着くのも大変だな
特に最初の一体は魔力結晶の場所を探しながらの作業で、【マジックフィルム!】がなかったらどうなってたか
「コロちゃん、どうしたの?」
ぷ、ぷるぷる
「ああ…食傷気味なのね」
ぷるぷる
子蜘蛛は頑張って食べたけど、正直に言って親蜘蛛の衝撃が忘れられず、もう食べたくないらしい
「コロちゃん、好物を食べ過ぎて嫌いになる事だってあるらしいし、そんなに落ち込まないで」
もう帰ろう
まだ3時半にもなってないけど、今日はもういい
たまには明るいうちから風呂にでも入ろうじゃないか
なに、今日はたんまり稼いだ…はずだ
たまの贅沢くらい許されるだろう
「ノーラに許しがもらえればいいなー…」
急いで帰ったが実際、街に着いたのは5時少し前だった
やっぱ6Fからの移動時間があるから仕方ないかー
風呂はいつもの時間に入ろう…
「とまあそんなわけで、今日は短時間に物凄い結果になりました」
「強い明かりなんか使うからですよ」
なでなで
ぷるぷる
コロちゃんはリリアナお姉さんの膝の上だ
どうやらこの部屋ではパーティを組むのが当然な流れとなったらしい
まだ2回目だけど
「やっぱりそうですよねー」
「ともかく、中途半端な時間に帰ってきた理由はわかりました。それでは、戦果を見せてもらえますか?ハジメさんがダンジョンに行くのは最初は心配でしたが、ここ数日は楽しみになってきました」
一種の珍獣扱いみたいなヤツかなー
まあ心配かけてないってのはいい事だな、うん
「ゴブリンが11で2,750G、ゴブリンリーダーが2で1,700G、ココチカバットが51で43,350G、穴蔵ヤモリが16で17,600G、マリボアが18で27,900G、ディアパラタが250で300,000G、マザーパラタが3で9,900G、討伐数351で403,200Gですか。旅から帰ったら家でも買いますか?この調子で頑張れば、豪邸やいっそ爵位も買えるかもしれませんよ」
「いやー要りませんよーははは…」
「それで、売却分はどうなります?」
「これで…」
「ココチカバット、穴蔵ヤモリ、ディアパラタで合計が360,950Gですか。私の立場から言うのもあれなんですが…ハジメさん、損してるのに気付いてますか?」
「え?」
「素材を諦めて魔力結晶に絞るというのは、まだわかる話です。でも最近、討伐依頼を受けてませんよね?」
「あ」
「どうせ失敗はありえないのですから、受ければいいんですよ。常設なので事後報告はできませんよ。きちんと受けていれば第四階層以降で171,700Gの上乗せでしたし、このままだと依頼を受けずに登録が期限切れする未来が見えます」
「やっちまったー!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます