第55話 先輩に相談だ
「もし見える範囲に蛇が居たら最優先で対処するので。俺としても注意はしますが、そちらに他の敵が流れないとも限らないので、油断しないように普段通り警戒をお願いします」
まるで魔物討伐ツアーのガイドでもしてる気分だ
相手の方がExpでない方の経験値は高いのに
あ、俺にExpが入るとしても相手の方が高いか
俺が高いのはステータスだけだ
「自分の身は自分で守るさ」
「お手並み拝見といこうじゃねえの」
「大丈夫なんでしょうけど、割って入れるようにはしておきましょう」
で、さっそく蝙蝠をカウンターで仕留める
「一撃か」
他の二人も頷いてる
ソロで入っている以上、この辺は当然なんだろう
なにせ1Fから出現する敵なんだから
「問題は穴蔵ヤモリとマリボアですね」
「マリボアは危険性を理解してるようだが、遠くに居たら気付かない可能性がある。穴蔵ヤモリも気付いた時には頭上から急襲されてるぞ」
「でもほら、そこの天井にヤモリが居るでしょ?」
「は?わかるのか?」
「目視ではなかなかわからないはずだけど」
「ここからは見えませんね」
「まあ見ててください。声掛けは要らないですから」
気付かないフリをして、ヤモリの下を通り過ぎ…
落ちてくるタイミングにカウンターを合わせるだけの作業
回避行動のとれない空中で迎撃するのは、こっちのステータスの高さと、襲われるタイミングや態勢さえわかっていれば簡単だ
「ほらね?」
「なんで…」
「今度は…!」
迫り来る2匹の蝙蝠、その片方ををすれ違いざまに屠り、そのまま奥の蛇に肉薄
蛇を倒して、返す刀で追い付いてきた蝙蝠を始末する
やっぱり高AGI&高ATKでの短剣二刀流はロマンがあるよなあ
体現すると脳汁が出るね
いい出汁、出てますよー
「さ、コロちゃん召し上がれ」
ぴょいん
「魔力感知っていう、魔力の位置と大きさがわかるスキルがあるんですよ。なかなか区別までは付かないんですけど、空中や天井なんかに反応があれば、まず人じゃないですよね」
「さっきは何か悩んでたようなのに、急に吹っ切れたようにイキイキとし始めたな」
「魔力感知…」
「なんでさっきは苦戦してたの?」
「やー、蜘蛛が苦手で…克服しようと思ってたんですが、なかなか。コロちゃんが蜘蛛を担当してくれてて、その守りを最優先にして自分を後回しにしてたんです」
「魔力感知は、どうすれば覚えられますか?」
「なんか魔法ギルドでスキル結晶をくれました」
「難易度はどうですか?スキル結晶はいくつでした?」
「俺の時は一個でしたね」
「よほど相性が良かったか、高級な魔力結晶を使ったのか」
「あるいは両方かもしれませんね」
「スキル結晶が凄かったんじゃないかと」
向き不向きは無いって言われたんだから、相性は特に良いわけでもないだろうな
実際、回復魔法を覚えるのに多少は苦労した
それに対して魔力感知は一発で覚えたんだもんな
スキル結晶が凄かった可能性は充分にある
「でもなんでそんなもん…くれたって、タダでくれたのか?」
「将来的に研究の協力者になるみたいなのを期待されてて、強制って感じじゃなかったんですけど、それと引き換えにですね。こんなのもらっちゃったら、いつかお礼はしなきゃですけど」
「悪い人に騙されそうですね」
なんでこう、俺の評価はどこでも同じなんだ
「俺はそういう運は良いので、悪人とはわかりやすく敵対するみたいです」
「そもそも運が良ければ悪人とは関わらないだろうに」
「…それはそれです!成長の糧になりましたし!」
「まあともかく、実力はわかった。要らない心配をしたみたいだな」
「いやそんな。先輩として頼もしいですよ」
「それで、短期間でどうやってそこまで強くなったのかな」
来たよー来た来た
答えはもうこれしかない
「戦ってたら強くなりました!」
ぞくぞくぞくっ
あ、ステータス…を覗かれてるのとは違うな
これ純粋に視線によるものだ
「…師匠は居るのか?」
「アバッシ村のテオドールさんって人に、最短最速で刺せ、もしくは斬れって教わりました」
「どんな修行をしたんですか?」
「言葉をできるだけ忠実に守って最短最速で急所らしき場所を攻撃してたら、【暗殺術】なんてスキルを覚えたりとか…他にも【体術】とか【集中】とか【カウンター】とかが役に立ってますね」
「言葉って、戦いを指導してもらったとか見せてもらったとかじゃなく、言葉だけ?」
「すぐ近くで戦ってた事はあるんですけど、自分の事で手一杯の間に終わってました」
「だめだ、全く参考にならん」
「真似するのは無理かな」
「きっと天才肌なんですよ」
いえ、ただのチート持ちです
「あのテオドールの弟子って事で納得するしかないか」
やっぱ有名なのかテオさん
「あの!ところで、生理的に苦手な見た目とかの敵に対処するには、どうするのがいいんでしょうか?ステータス的には問題ないという前提で」
「関わらない」
「仲間に任せるかな」
「近付きたくないという程度なら遠くからですね」
やっぱそうなるかー
「なんとか克服するとかじゃないんですね」
「できるならそうすればいいだけだよ」
「でも生理的に無理なんですよね?」
「そいつの居ない場所に移るのもありだぞ」
「実はコロちゃんが、蜘蛛の味を気に入ったみたいで」
「頑張れ」
「頑張るしか」
「頑張ってください」
お、おぅ…
味方が増えたよ、やったねコロちゃん!
ぷるぷる
「なんとか距離を保って石でも投げてチクチクやるしかないかなー」
「そもそも得物には向き不向きがあるってわかってるよな?」
「適した武器に持ち替えるか、適切に対処できる仲間に任せるのが妥当だよ」
「使えるならいっそ魔法もありですけどね」
やっぱり武器を伸ばして戦うのはありなんだろうな
「何かこう、必要な時に長さが変わる都合の良い武器ってないですかね?」
「槍なんかは熟練者になると似たような事ができるらしいが、結局は閉所だと取り回しの問題がな」
「魔物相手を前提にすると、可動部のある武器は向いてないかな」
「それこそ魔法のかかった武器などであれば都合はいいんでしょうが、そうそう見かけないですよ。本当の駆け出しなら攻撃魔法を覚えるのもありですけど、既に前衛型として活動してるみたいですしね」
延長できるようになったとしても、理由がなければ敢えて見せる必要はないって感じかな
逆に言えば、見せても大丈夫になってからなら、見られてもいいのか
「魔法を戦闘に使う場合の継戦能力の維持の要は何でしょう?」
「休めるなら休んで自然回復、戦闘中の補給は予め用意したMPポーションか魔力結晶、何らかの特殊な装備品で消費を抑えたり効率を上げるのもいいですよ」
「それを遣り繰りするパーティの財布も大事だね。もちろん、使う魔法を選んだりタイミングや回数を考えるのは最終的に魔法担当の大事な仕事だけどね」
「魔力結晶を売る事を考えなければ、発動時間やMP効率次第では魔法だけで永遠に無傷で狩っていられますよ。さすがに疲れますしお金を考えると現実的ではないですが」
「魔法を一発撃ち込んでもらってから突っ込むと、ほんと楽だぞ」
「やっぱり基本に忠実に動くのが一番確実ですよね…」
内容自体は俺でも考えつくものと同じか
単純に考えたら、魔力結晶をケチらない、できるだけ魔法は一発に留める辺りが落とし所かなー
でも魔力結晶をケチって魔力を回収する戦い方をしてれば収入は増えるんだよなー
荷物を減らしながらMP効率やらを考えると、魔法は回復だけ、回復は魔法だけが理想なんだよな
旅の最中を想定したらやっぱり光源になる道具…先の事はわからないし出たとこ勝負か?
でも今のうちに基本パターンを構築しておくのもありだよな?
「結局、仲間は大事だぜ。良かったらウチに来いよ。歓迎するぜ。なあ?」
「正直、ウチには勿体無い人材だけどね」
「これからもコロちゃんを撫でさせてください」
なでなで
ぷるぷる
い、いつの間に…
「コロちゃんってこんなに人に懐いちゃって可愛いいですねー」
なでなで
ぷるぷる
「お誘いは正直に言ってありがたいんですが、これから旅に出る準備をしてるんです。大前提としてコロちゃんと二人でやっていくので、できるだけ他の仲間に頼らない戦い方とかを崩したくないんですよ。だから、ごめんなさい」
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