第54話 ある種の覚悟

 蛇は倒したけど…突っ込みすぎた

 蝙蝠が鬱陶しい!

 もしももっと数が多ければ周囲の空間を埋め尽くされてた

 コロちゃんは…蜘蛛を倒しにかかってくれてる

 コロちゃんの周りの敵から先に排除しないと!


「大丈夫か!?」


 蜘蛛が近くに居ようと俺がやるしかない!


「今助けます!」


 追加で近付いてくるのは人のようだが敵でないなら無視だ構ってられるか!


「おい待て、助けは要らなそうだぞ」


 最後の蝙蝠を倒して、一つ深呼吸


「コロちゃん、ありがとね。たーんとお食べ」


 なでなで

 ぷるぷる


 えっと、さっきの人達は…


「なあアンタ、パーティが分断されたのか?」


 あ、話しかけてきた

 なんか奥から一人、こっちに来る


「えっと、こんにちは」

「あ、ああ、こんにちは」


 挨拶しただけなのに、なんで面食らったような顔してるんだろ

 大事だろ、挨拶


「なんでスライムが居るんだ」

「信じられない軽装ですね…」

「あんな強い明かりをつけたら危ないのに」


 追加で男女ひとりずつ

 他に近くに反応はないし、3人パーティか


「パーティは俺とコロちゃんの二人だけですよ。ご心配をおかけしたみたいで、すみません」

「一人と一匹…」

「よくスライムがここで生き残れるな」

「実質ソロって事かよ」


 あ、倍化解除しとこう


「Lv39だと!?」


 よかった間に合ったみたいだ

 って言うか、今のでコロちゃんのLv上がってたんだ


「またまたご冗談を」

「いやマジだ。このスライム、Lv39だ」


 ぷるぷる


 コロちゃんも頑張って強くなったんだもんねー


「よくもまあ死なせずにそこまで。新人の冒険者より強いんじゃないのかな?」

「一緒にここまで強くなってきました!コロちゃんは俺の英雄なんです!身も心も強いんです!」


 ドヤァ


「でも無理をさせたら可哀想ですよ!」


 ぷるぷる


 いや、もし本当に無理そうならちゃんとそう言ってね?


「わざわざ強い明かりで敵を呼んで、スライムを守りながら殲滅…しかもスライムが育ってるって事はスキルでパーティ組んでExpも分け与えてる。仮に護衛の訓練だとしても相当なマゾだなアンタ」


 いや俺にそんな意図はないんですが…


「それができるだけの実力はあるんだろうけど…」

「ちょっと待ってください。もしかして、口笛でわざわざゴブリンを呼んだりしてませんか?」

「あー、過去に何度か…」

「「「ゴブリンの天敵?」」」


 そんな、顔を見合わせて…


「そ、そう呼ばれた事も、あるような、ないような…」

「正真正銘の新人じゃないか!」

「お前、登録から10日かそこらだろ!?やっぱりパーティに見捨てられでもしたのか!?」

「でも自力で殲滅してましたよね…」

「ここには鍛錬の為にコロちゃんと二人で来ました。とりあえず死ぬような事はないので大丈夫ですよ!」


 なんか三人で顔を寄せあってヒソヒソ話してるぞ…


「なあ…ステータスを見せてもらっていいか?」

「本当に大丈夫なだけの強さがあれば、大人しく引き下がるから。そうでなかったら街まで送るよ」

「もし誰か恐い人に脅されてるとかなら、味方になりますから!」


 うわー

 なんか、騙すのも悪いよなこの人達

 それにちゃんと強さを見せておかないと、心配かけちゃうよな…

 でも新人が10日かそこらでここまで育つのも…


「ほ、ほら、今日集めた分の魔力結晶です。これだけ集めたくらいですから…」

「荷物持ちをやらされてたんだな…」

「魔力結晶まで持たせるくせに、危なくなったら自分達だけ逃げるなんて許せない」

「でもここまで育てたスライムすら見捨てて逃げるなんて、一体何が…」


 今度はそうきたか

 荷物持ちだとして魔力結晶すら預けたり、10日でスライムがここまで育つってのも異常事態なんだよな…


===

 コロ スライム 2 -

 パーティ:ヤマト

 状態:正常

 Lv 38 → 39 Exp 263,242 → 281,658

 HP 148/148 → 151

 MP 49/49 → 50

 SP 125/125 → 128

 ATK 144 → 147

 DEF 127 → 129

 MATK 32 → 33

 MDEF 29 → 29

 SPD 158 → 161

 STR 164 → 167

 VIT 163 → 166

 MGC 76 → 78

 AGI 182 → 185

 スキル:捕食Lv3、真似っ子Lv3、指揮、回復魔法Lv1、保護色、熱感知、氷結魔法、振動感知

===


 入り口から2回だけ集団を潰しただけなのに、このExpの増加量!

 Expが700近い蝙蝠を20匹狩るだけで約14,000だもんな

 そりゃ異常と言われる殲滅速度のExpを独り占めするとこれだけ集まるよな…

 とにかく、目の前の問題を何とかしないと!


「待ってください!お願いですから!ちょっと、心を落ち着ける時間を下さい!」

「お、おう」

「わかった」

「ま、待ちます…」


 どうするどうするどうする?

 リリアナお姉さんにはLv100前後って言われたからそれで通すか!?

 でもステータスの基本値と算出値の関係がわからないぞ!?

 いや…ある程度数字が大きくなれば、50なんて誤差なのか?

 そもそもLv100のステータスを見る機会ってのが珍しい可能性もある!

 魔法関係だけは少し誤魔化すとして…コロちゃんを参考にして、あとは鍛え方の問題だったって事で…


===

 ハジメ 人 18 リスガー

 パーティ:コロ

 状態:女神の加護(均衡)

 Lv 0 Exp 0

 HP 431/606 → 644

 MP 128/188 → 197

 SP 524/551 → 585 (15%↑ 体術Lv3)

 ATK 661 → 702 (15%↑ 体術Lv3)

 DEF 527 → 559

 MATK 148 → 154 (5%↑ 魔力強化Lv1)

 MDEF 138 → 143 (5%↑ 魔力強化Lv1)

 SPD 563 → 601 (15%↑ 体術Lv3)

 STR 664 → 708

 VIT 612 → 653

 MGC 200 → 213

 AGI 552 → 592

 スキル:体術Lv3、簒奪者Lv1、収納魔法Lv2、女神の加護Lv2、最適化、存在強化、ステータス改、基礎魔法、パーティLv3、魔力操作Lv2、魔力感知Lv2、体当たりLv2、短剣術Lv2、暗殺術Lv2、集中Lv2、剣術Lv2、棍術Lv2、弓術Lv2、遠吠えLv2、カウンターLv2、魔力強化Lv1、魔力効率化Lv1、魔力回収、魔法剣!Lv1、マジックフィルム!Lv1、ステータス抑制、PT特典、ステータスLv2、斧術Lv1、HP回復量上昇Lv2、回復魔法Lv1、保護色、熱感知、氷結魔法

===


 だめだ…

 結局は登録から10日程度の新人がコロちゃんと二人でここに居るという現実がある

 騎士団で手合わせの後に見せた時とはあまりに違いすぎる

 鍛えてから冒険者になったにしても、それなら何でわざわざゴブリンの集団と泥仕合をしたのかの説明がつかない…

 それに俺自身の事もそうだけど、この場所に何か異常な脅威がある事も心配してる

 いっそステータスごと別人のフリをする手もあるけど、正直に言って嘘を管理しきれないし、パーティは部外者には読み取れないにしても、コロちゃん自身の名前が把握されたから今後バレる可能性が排除しきれない

 コロちゃんに【ステータス改】を覚えさせられないか試しておけばよかったという後悔もあるけど、やっぱり嘘は吐くにしても小さくまとめた方がいいから、これはこれでよかったと思っておこう

 リリアナお姉さん、ヤマトとしては色々と諦めろって言ってたよな…


「あの、ステータスを見てあれこれ考えて強さを推し量るよりも、実際に見てもらった方が確実だと思うんですけどどうでしょう?」

「その軽装で本当に戦えるならいいがな」

「あれが偶然でないというなら、文句などあるはずがないよ」

「その子に無茶をさせずに対処ができるなら」

「じゃあコロちゃん、そういうわけだからフードに入って手出しせずに見守っててくれる?」


 ぷるぷる

 ぴょいん

 もそもそ


「「「かわいい…」」」


 と声が聞こえた気がした

 きっと気のせいじゃない


「かわいいでしょ?」


 三人ともびくっとして我に返ったようだ

 いかんいかん、とにかく戦うところを見せないと


「暗闇じゃ見辛いでしょうから、一つ手前まで戻りましょう」


 ここは蜘蛛が居るしな!

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