第47話 着々と

 今日もノーラの晩ご飯は美味しかった

 ダンジョンを出たらすっかり真っ暗で、慌てて教会へ帰ったらご飯を食べずに待っててくれた

 明日からはちゃんと時計を用意しよう

 手頃なのがあるといいんだけどな…


 一番風呂にどうぞって言われたけど、それはさすがに辞退した

 別にノーラの後湯を狙ってたわけじゃない

 断じて

 コロちゃんはノーラに誘われて一緒にお風呂に入ってた

 一瞬、水に溶けたりしないか心配になったけど、飲み物だって飲むしな

 ともあれ好都合だった


 念話は、どうやらPTチャットであって個別wisではないようだ

 二人の念話でぷるぷるを堪能してる様子が伝わってきたけど、コロちゃんだよね…?

 そんな邪念を鋼の精神力で振り払い、ノーラの部屋の前へ

 怪しい事が目的なわけじゃない

 決して

 取りきれずに残った血痕を手で覆い、魔力を浸透させるイメージで清浄を使ってみた

 魔法の自由度が上がってないかと試してみたけど、やってみるもんだ

 そしてこんな、教会の敷地だとかノーラの部屋の前だとか場所を考えずにかっとなって流血沙汰を起こした事は要反省だ

 ともかくこれで、あの夜を思い出す機会が減ってくれればいいんだけどな 


 俺はご飯を待たせたお詫びも兼ねて、貸切風呂を堪能した後にきっちり掃除しておいた

 やっぱり使ってすぐ掃除すると、汚れも取れやすくていい

 どれだけ使ってなかったのかわからないけど、お風呂を入れる前にノーラが掃除してくれてたのかな

 暫く使ってないような印象の汚れ方はしていなかった






「コロちゃん、戻って!戻って!」


 ぷるぷる


「コロちゃんごめんなさい〜!びっくりしてしまって〜!」


 ぷるぷる


「俺こそびっくりさせてごめんね」

「やっぱりコロちゃんはそのままが一番です〜…」


 なでなで

 ぷるぷる


 うん、ノーラの前では擬態はとりあえず封印だ


「びっくりついでと言うか…驚かないで見て欲しいんだけど」

「また何か無茶したんですか〜?」

「いや、【女神の加護】のおかげで終始余裕だったんだけど、今日の戦果がね…」


 ゴブリンの魔力結晶が30

 ゴブリンリーダーの魔力結晶が6

 ココチカバットの魔力結晶が77


 1時間に10匹で12時間狩り続けたくらいのペースか

 疲れ具合も効率もチートの面目躍如ってとこだな


「時間がわからないままこうなるまで調子に乗ってました…」

「たくさんありますね〜…」

「いやほんと、コロちゃん大活躍だったし、俺も楽させてもらったくらいで」

「コロちゃん頑張りましたね〜」


 なでなで

 ぷるぷる


 よし、怒ってない…

 これならいけるか?


「で、スキル結晶をお願いしたいんだけど…さすがに数が多すぎるよね」

「確かにMPは大丈夫でも熟練度の回復は疲れますね〜」

「せっかくお風呂に入ったんだし、これは置いておくからまた後日で」

「1セットくらいはやりますよ〜」

「じゃあ、お願いします」

「この一番多いものを7セット分にしましょうか〜」

「それなら残りの6個の奴を教会の備蓄にして、30個を二人でわけよう」

「もらいすぎですよ〜?」

「こう言っちゃなんだけど、数を揃えるのが面倒なだけで倒すのは簡単なくらいだし。あ、魔力結晶は備蓄分が別にあるから、15個分は現金の方がいいかな」

「お任せします〜」


 現金がなくなっても売らずに魔力結晶のままとっておくなんて事すらやりそうだ

 250Gが15個で…細かいのないし4,000Gでいいか


「ありがとうございます〜」

「で、俺の滞在費が…」

「まだまだ余ってますよ〜?」

「うーん…実は加護の影響で新しいスキルが手に入ってね、装備のお金が浮いてるんだ」

「装備が要らなくなるんですか〜?」

「さすがに要らなくはならないんだろうけど、壊れにくくなってるのと…今日は服が汚れてなかったでしょ?」

「そう言えばそうですね〜」

「んー、ちょっとこの裾を握ってみて」

「はい〜」

「種も仕掛けもございませーん」

「普通の服ですね〜」

「3、2、1、はい!」


 俺ニウム(笑)で服の裾を固める

 あくまで固めるだけで、鋭利さとかは備わらないように!ここ大事なポイント


「くしゃってやってみて」

「硬いです〜!」

「これを武器に集中して使うと壊れにくくなるし、薄く伸ばして体を包むと汚れくらいは防げるんだよ。だからとりあえず、装備のお金がいくらか浮くわけ」

「…順調に旅の準備が整っていきますね〜」

「…もう少し、安心できる強さを身につけて旅の道具も揃って、ミリアとの約束を果たしたらね」

「寂しくなりますね〜」

「女神様の件が解決したらこの街に戻ってくるからさ。そしたらまたご飯を食べさせてよ」

「冒険者のゲン担ぎは大事ですよ〜?」

「大丈夫!神様の加護があるから!」






 結局1セットだけスキル結晶を作ってもらったけど、まだ習得できなかった


「旅の準備か…」


 道具は異空間に入れるとしても、容積と重量の問題でいくらでもというわけにはいかない

 小さく軽くまとめて効率的に荷物を準備しないと


 着替えと衛生面は【マジックフィルム!】と【清浄】でどうにかなる

 とりあえず着ている分を含めて3セットあれば本当に充分だろう

 衣食住の衣は魔法で解決だ


 食はとりあえず、人の住んでる場所を辿って、それ以外は保存食で我慢するか

 水も【湧水】で出せるし、焚き火は【着火】があるし、極論を言えば明かりだけなら【光球】がある

 若干の調理器具があればとりあえず生きていけるな


 住は…野宿の時は本当に異空間で寝泊まりするか?

 想定外のリスクは確かにあった

 なんかステータスの上下に伴って広さが変わってる気がする

 弱体化した後は開いた時に空気が抜ける音がして、更に中の物が少し移動してた

 この先も魂の修復が進んで【存在強化】の効果が減る、もしくはなくなる事を想定すると…


「魔法だからMGC、MATKあたりかな?」

 

===

 ハジメ 人 18 リスガー

 パーティ:コロ

 状態:女神の加護(均衡)

 Lv 0 Exp 0

 HP 453/332 → 453

 MP 99/124 → 145

 SP 333/298 → 405 (15%↑ 体術Lv3)

 ATK 354 → 488 (15%↑ 体術Lv3)

 DEF 292 → 396

 MATK 102 → 117 (5%↑ 魔力強化Lv1)

 MDEF 96 → 110 (5%↑ 魔力強化Lv1)

 SPD 306 → 409 (15%↑ 体術Lv3)

 STR 335 → 482

 VIT 310 → 443

 MGC 109 → 141

 AGI 282 → 395

 スキル:体術Lv3、簒奪者Lv1、収納魔法Lv2↑、女神の加護Lv2、最適化、存在強化、ステータス改、基礎魔法、パーティLv3、魔力操作Lv2、魔力感知Lv2、体当たりLv2、短剣術Lv2、暗殺術Lv2、集中Lv2、剣術Lv2、棍術Lv2、弓術Lv2、遠吠えLv2、カウンターLv1、魔力強化Lv1、魔力効率化Lv1、魔力回収、魔法剣!Lv1、マジックフィルム!Lv1、ステータス抑制、PT特典、ステータスLv2、斧術Lv1、HP回復量上昇Lv2


 コロ スライム 2 -

 パーティ:ヤマト

 状態:正常

 Lv 32 → 34 Exp 148,526 → 180,918

 HP 137/131 → 137

 MP 45/42 → 45

 SP 115/111 → 115

 ATK 128 → 134

 DEF 112 → 117

 MATK 28 → 29

 MDEF 25 → 26

 SPD 141 → 146

 STR 146 → 152

 VIT 144 → 150

 MGC 65 → 69

 AGI 162 → 168

 スキル:捕食Lv3、真似っ子Lv3

 熟練度:回復魔法 86/250

===


 今はMGCが141で、【存在強化】の効果が半減してるという事は+50のはずだ

 91である事を想定して…

 ん?


ーーー

収納魔法

  魔力を使って異空間に干渉する

  干渉と維持に魔力を消費する

 - Lv2

  枠の容積を拡大縮小できる

  枠を増減できる

ーーー


「なんて都合の良さだ」


 これも神の思し召しってヤツか?

 こんなタイミングでこんな風にスキルの効果が拡張されるなんて


「どれどれ」


 枠を増設すると、空っぽの異空間が現れた

 一辺が1.5mくらいの立方体だ


「近い数字は…やっぱりMGCかなあ」


 これで弱体化したとしたら、一辺が90cmか

 中に入ってる時にそうなったら潰れるな…

 とりあえず、やってみるか


「おー」


 さすがにステータス依存で最大値は決まってるけど、それ以下なら自由自在だ

 それどころか容積の最大値を越えなければ変形までできる!

 なんか、ぐにょんぐにょん動かせて面白いぞ

 仕切りまで作れそうだ


「じゃあ入り口の大きさは…」


 中の容積を維持したまま入り口だけを…

 できた!

 これで隠れていつでも使えるぞ!?

 袋やポケットに手を突っ込んで、実は中は異空間で…

 なにこれ便利過ぎる!

 ここまできたら…


「動く動く!」


 入り口の位置が動かせる…

 これで移動しながらでも使えるんじゃないのか!?

 こんなの、MP消費してないのかな?


「MPが残り3じゃん…」


 消費したのが96だと…

 枠一つ増設した時に開くので50、維持に50発生するところ、魔力効率化で48×2に抑えられたのか

 危うく魔力欠乏症になるところか?

 いや、無理矢理じゃなければ、発動しないだけで済むのか…

 とりあえず仮定が正しければ、空間の変形はMPを消費しないんだな


「とにかく、MGCが足りない。圧倒的に足りない」


 これ以外に関しては、コロちゃんに常時ステータスを貸してても問題ないくらいだな

 まあ、ステータスは高くて困るものではないし、MGCを高めるのを目標にガンガン上げてくか


「MGCを上げれば最大MPは増えるけど、MPの現在値も問題だよなあ」


 収納魔法の枠を2つ維持したらそれだけで100近く維持に消費して、更に一回開いたらそれで終わりか

 あとは空間を縮めた時に維持分に消費するMPだけど、実験には時間がかかるな


「とりあえず、今は枠を一つにしておこう。維持分が勿体無いし、万一倒れたら大変だ」


 やっぱりMPが足りない

 つまりはMGCが足りない

 ダンジョンにMGCの高い敵が居ればいいんだけどな

 MGCそのものが増えるし、そいつの魔力結晶があれば、維持分はともかく消費分はどうにかなる


「て事は、今問題になってるのはMGCの低さと、ステータス全体の安全マージンの線引きをどうするか、か」


 でも、MGCを鍛えるつもりで敵を狩っていけば、自動的に他のステータスも上がってくわけだ

 明日はMGCの高い敵を探して奥へ行ってみるか


「コロちゃん、もしかしたらあと数日の狩りで、旅の準備そのものは終わるかもしれない」


 ぷるぷる


「改めて確認だけど…コロちゃんはどうする?」


 ぷるぷる


「ありがとね、コロちゃん」


 ぷるぷる


「うん。ノーラを残して行きたくない気持ちもある」


 ぷるぷる


「そっか。ミリアが入団したら、ここに帰ってくるんだよね」


 ぷるぷる


「危うく余計な事を言って余計な気を使わせるところだったよ。教会もあるのにね」

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