第41話 ダンジョンへ

「コロちゃん、そろそろダンジョン行こっか」


 ぷるぷる


 買い食いしながら自分用のMPポーションとコロちゃんに干し肉を買い、一旦戻るのも面倒なので街の外へ出てから異空間へと放り込む

 これくらいはステータスなんてものがある異世界では軽いもんだし、多少の負荷をかけて体を鍛えられる

 どうせダンジョンも辛くならない程度の場所までしか行かないつもりだし、そこまで負担にはならないだろう


 問題は、異空間の整理だ

 1立方メートルくらいあるから物はそれなりに入るとは言え、雑然と物を入れておくのは良くない

 このゴチャゴチャした状態を整理するには、棚でも作るか?

 何か軽くて丈夫な棚が作れればいいんだけど


「お、行きがけの駄賃だ」


 グラスウルフが2匹現れてサクッと倒す

 人を斬った時と感触はそう変わらないはずなのに、魔物なら問題ない

 なんでこんな風に平気で居られるんだろう?

 これは異世界補正ってヤツ?

 そんなのあるの?

 こんな事を考えながらもギュルンギュルンしたり魔法の練習ができるのも、異世界補正?


 ぷるぷる

 ぺっぺっ


「お、コロちゃんありがと。干し肉と魔物の肉、どっちが好みなの?」


 ぷるぷる


 そりゃ新鮮なお肉の方がいいかー


「これがダンジョンか…コロちゃん、入るよ」


 ぷるぷる


 中は発光する不思議な岩肌が点在してる

 少なくともこの辺は明かりの確保は問題ないな

 閉鎖空間で松明を使うような状況にならなくて良かった

 まあその場合、光球って手段もあるんだけど


「コロちゃん、魔力感知にいくつか引っかかってる。人じゃなかったら魔物だから、気を付けて進もう」


 ぷるぷる


 魔力結晶がある=魔力がある

 つまり、人でなければ動物じゃなくて魔物だ

 そして俺の前後で感知に引っかかってる反応が、俺を含めて何となく一列になってる

 これでもし壁の向こうに反応があったら、簡易的なマッピングに使える事が確定する


「そろそろ第一村人が…居た!」


===

- ココチカバット 0 -

 Lv 8 Exp 692

 HP 151/151

 MP 27/27

 SP 125/125

 ATK 161

 DEF 130

 MATK 18

 MDEF 16

 SPD 132

 STR 184

 VIT 167

 MGC 43

 AGI 156

 スキル:

===


 洞窟の名前が付いてる…ここの固有種か?

 サイズはコロちゃんより少し小さいくらいか

 ステータスがいきなり外より格段に強くなってる

 やっぱりダンジョンはパーティ前提なのかな


「コロちゃん、あいつはゴブリンなんかより強い。暫くは参戦しないで、フードの中から様子見しててね」


 ぷるぷる


 さてどうするか

 一旦岩陰に隠れて考える


 ここは洞窟だし前後を挟まれるだけでも逃げ場はないけど、幸いにも近くの相手は単体だ

 一方的に気付いているというアドバンテージはあるけど、高いところに居て攻撃が届かない

 …釣るか?


 敵のスキルを見ると何もない

 遠距離攻撃がないなら、身を晒して接近戦に持ち込めるな

 そこから先は、基本的にはいつも通りだ

 違うのは、こちらが攻撃をかわした後に飛ばれたら攻撃できないところだ

 つまり、確実にカウンターを当てなければいけない


 大丈夫だ

 相手は魔物

 ミリアのようにステータス差を埋めてくるわけではない

 集中だ、集中…


 足元の石を拾う

 HPも1でも削れてくれればラッキーだ…なっと!


「来た!」


 今、必殺の…カウンターアタック!


「入った!」


 綺麗に入ったぞ、おい…

 とりあえずコロちゃんにお願いしておくかな


「狩った!じゃあコロちゃんどうぞ」


 ぴょいん


 やっぱりステータス差をきちんと発揮できれば、こうして狩れるんだな

 少なくとも相手がフェイントをかけてこなければ、このやり方で大丈夫だ

 少し慎重になりすぎたかもしれないが、怪我をしたり死ぬよりはこっちの方がいい


 あ、誰か入口側からこっちに近付いて来る

 人かな?


「こんちは」

「こんにちは」

「あれ、なんでこんなとこにスライムが?」

「俺の仲間です」

「あ、もしかして、ゴブリンの捕食者?」

「えーっと、天敵と言われた事はありますけど…」

「ああ、捕食者じゃなくて天敵か」

「自称した事はないんですけどね…」

「もうダンジョンにデビューしてたのか」

「今日が初めてです」

「そかそか、中の魔物は外よりは強いから、気を付けてね」

「あ、どうも」


 俺、変な風に知れ渡ってる…?


 今の人はソロだったな

 どこまで潜るのか知らないけど、少なくともソロで入れる人も居るわけだ

 よーし、俺も頑張ろう


 とりあえず今日は、1Fの出入り口付近でチマチマ頑張るか

 戦法としては暴れ兎みたいにカウンターでいいわけだ

 そして、この中は魔力感知で暴れ兎なんかより蝙蝠を見つけやすい

 となると…


「コロちゃん、作戦名はガンガンやろうぜに変更だ!コロちゃんにはいつも通りお肉を提供するから、魔力結晶よろしくね!」


 ぷるぷる


 その後も何度か人とすれ違い、中には「通りやすくなっていいや、頑張ってくれ」なんて応援なのか何なのかわからない言葉をかけてくる人も居た

 ふっふっふ…

 みんなとは成長の仕組みが違うからな!

 ここで乱獲するだけでも俺のステータスはガンガン伸びるんだよ!


 いやー、楽だなここ

 敵は見つけやすいし、カウンターが綺麗に入れば一撃で沈む

 そして一匹倒すごとに少しだけど強くなり、少しだけ倒しやすくなるという好循環

 危なくなればいつでもダンジョンの外の広い空間に逃げられる位置取り


 ここ、穴場だろ

 相性が良すぎる

 調子に乗って100匹くらい狩りたい

 時間的には無理なんだけど


 でもさすがに途中からペースが落ちた

 体感的には見つける間隔が倍に伸びた

 どうもリポップしているようだが、それだって限界があるようだ

 外より遭遇する頻度が高いとは言え、1Fに人が少ないのはこの影響だろうか

 まあその分、魔法の練習時間が確保できるんだけど

 これは帰ったら、残りの時間は体術に集中できそうだ

 いい汗かいて風呂…は、注文したのが今日か

 よし

 作ったばかりだけど、風呂に入れるようになったら一日のメニューを組み直そう

 何事も臨機応変だ


 そう、状況は常に変わる


 最後に少し奥の一匹を倒してから帰路につこうと思ったら、こっちに背中を向けているのは人だった

 何かの予感を感じて、近すぎない距離を保ったまま話しかける


「あのー、どこかで会いませんでしたっけー?」

「あん?」


 相手が振り返り、視線がぶつかり合う


「「…っ!」」


 互いが互いを認識した瞬間、相手は奥へと走りだした


 慌てて追いかけるも、追いつく前に角の向こうへ走り込まれる


 見失った場所に立つが相手の姿は視界に映らない


「また逃げるのか?お前が見捨てたアイツは死刑確定だってさ」


 騒がしかったせいで襲ってきた蝙蝠を始末しながら呼びかける


「来いよロゴジン!どうした、恐いのか!?」


 後ろからの一撃をかわして距離を取る


「ちっ!」

「別に姿が見えなくても、お前がどこに居るのかわかるんだよ。昨日の夜にお前らを見つけたのも同じだ」


===

ロゴジン 蜥蜴人 29 追放

 状態:正常

 Lv 42 Exp 388,617

 HP 230/230

 MP 27/37

 SP 209/213

 ATK 195

 DEF 230

 MATK 13

 MDEF 16

 SPD 263

 STR 220

 VIT 251

 MGC 61

 AGI 277

 スキル:ステータスLv4、ステータス閲覧Lv3、短剣術Lv2、パーティLv2、バックスタブLv2、暗殺術Lv3、隠密Lv1

===

ーーー

ステータス

  自分のステータスを表示したり隠したりする

 - Lv4

  【ステータス閲覧】Lv2のスキルに抵抗できる


ステータス閲覧

  Lv1以上の他人のステータスを開示する

 - Lv3

  【ステータス】のスキルLvが4までの相手のステータスを開示できる


バックスタブ

  背後からの一撃のクリティカル率に補正

   増加率(スキルLv×5)%


暗殺術

  暗殺する技術

 - Lv3

  スキル【隠密】


隠密

  相手に見つかりにくくする技術

 - Lv1

  気配を殺して対象から見つかりにくくなる

ーーー


「お前のスキル構成、どんだけ臆病なんだよ…」


 【暗殺術】を覚えている俺も他人の事は言えないが、それは置いといて

 【隠密】で近づいて【バックスタブ】とか、完全に殺る気マンマンじゃないか


 【ステータス】やら【ステータス閲覧】やらのスキルLvの高さもそうだが、先に覚えている【短剣術】が後から覚えた【暗殺術】に追い抜かれているのが実に個性的だ

 【ステータス改】のせいで俺の強さがわからないのに、ヤケになってバックスタブを仕掛けて来なければまだ良かったのにな


「見えてんのかよクソがっ!」

「逃がすかよ小物が!」

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