第35話 ひゃっはー

 一日のメニューを決めた

 朝食前は型稽古

 朝食後はミリアを想定した稽古とパルクール

 昼食後に討伐

 夕食後から寝るまでは魔法の練習


「朝は失敗したな…」


 朝ご飯の後にいきなり創作ニンジャは辛いので、対ミリア戦のトレーニングをした

 しようとした

 ある程度消化されるまでは魔法の練習に変更だ


 訂正


 朝食前は型稽古

 朝食後は暫く魔法の練習をして、ミリアを想定した稽古とニンジャごっこ

 昼食後に討伐

 夕食後から寝るまでは魔法の練習


 切換が大事だ

 肉体的なトレーニングをしている時には魔法的な事が頭をよぎったし

 魔法的なトレーニングをしている時には肉体的な事が気になるんだろう


「本当に毎日全部できるのか?俺…」


 ともあれ、とりあえずはこの通りに過ごすつもりで居よう

 キモは討伐だ

 一日二回ではなく、昼食後に一回

 そこでスキル結晶用の魔力結晶、魔法の練習用のMPポーションと生活費、寄付分を稼ぐ

 時間が短くなった分、効率を上げないと


「ほとぼりが冷めるまで、ダンジョンに行くって言わない方がいいんだろうな」


 そうなると、必然的に口笛の出番だ

 受付のお兄さんには、さすがゴブリンの天敵ですね、と笑われた

 …なんだそれ?






「懲りないな、俺も」


 着替えを買って入れておいて正解だった

 マントは外で使う分は暫く使い回しだな

 …コロちゃんが嫌がらないうちは


「なんと!ゴブリン12匹分の汚れが、着替えと清浄の魔法で驚くほどに真っ白に!」


 この姿で帰れば、何も問題はないだろう

 きっとリリアナお姉さんも納得の、余裕さの演出だ


 結晶で3,000G

 ナマクラ武器で720G

 討伐報酬で1,800G

 合計5,520G


「魔力結晶は全部ノーラに納めなきゃな」


 それで2,520Gの現金収入

 MPポーションが8本分か

 贅沢に使うというには足りないし、さすがに全部をMPポーションにはできない


「となると、もう一周かな?…また着替えるの?この汚れた服に?」


 時間もまだまだあるし、やるしかないか






 コツを掴んできた

 口笛は運も絡むけど、単純に長過ぎず短過ぎずで一回吹けば、一度にそこまで集まらない

 グラスウルフも余裕があれば、一匹残して無限増殖を狙う

 一度吹いて5分ほど待つ間はつんつんぷにぷにしながら魔力をギュルンギュルンして、現れなければ移動しながらギュルンギュルンして、別の場所で口笛を吹く


「もう一周」


 コロちゃんもステータス的には既にこの二種類とタメを張れるし、基本的にはフードの中に居てもらって、要所要所で飛び出してもらうだけだ

 熟練度のためにも、【集中】は切らさないようにして…


「もう一周」


 気を抜かなければ、何とかなる

 いい循環が生まれてきた

 ステータスが少しずつ伸びて、討伐にかかる時間が短くなり、結果として余裕も増える


「もう一周」


 ステータスもだいぶ伸びた

 ミリアとの経験も活きている

 あの強烈な記憶からすると、俺自身の技術がそうそう向上していなくても目が慣れていると言うか

 ミリアとの手合わせは力まず、手じゃなくて余計な力を抜いて効率的に体を動かすのを意識するようにしよう

 今のステータスなら観察する余裕もあるかもしれない

 技術を盗めるだけ盗んでやる


「ヒャッハーし過ぎたか。さすがに疲れたし、少し暗くなってきたな…コロちゃん、お疲れ様」


 なでなで

 ぷるぷる


「次からはグラスウルフの討伐も受けるか?でもわんころは自分で呼び出せないからな…」


 遠吠えを試す気にはならないし


「あ、しまった…明日また筋肉痛になったらどうしよう…」


 ぷるぷる


「まあやっちゃたものは仕方ないし、なるようになれ、だよね」


 なでなで

 ぷるぷる


「さて、ゴブリンの魔力結晶が35個、グラスウルフのが11個か」


 結晶は持ち帰るとして

 ゴブリンのナマクラ装備が2,100G

 ゴブリンの討伐報酬が5,250G

 合計で7,350Gになった


 グラスウルフは結晶だけだから収入0換算だな

 これはまあいいか


「3セットと1セットか。果たして何セットで覚えられるのか」


 なでなで

 ぷるぷる


「とりあえず、MPポーションは5本に抑えておこうかな」


 魔力操作が上手くなれば練習中の浪費も減る

 俺が上手くなればいいだけだ


「じゃ、ステータス見てみるかー」


===

 ハジメ 人 18 リスガー

 パーティ:コロ

 状態:女神の加護(保護)

 Lv 0 Exp 0

 HP 243/248 → 289

 MP 23/173 → 180

 SP 102/225 → 260 (10%↑ 体術Lv2)

 ATK 250 → 296 (10%↑ 体術Lv2)

 DEF 226 → 262

 MATK 148 → 154

 MDEF 143 → 148

 SPD 234 → 267 (10%↑ 体術Lv2)

 STR 166 → 217

 VIT 162 → 208

 MGC 111 → 120

 AGI 153 → 190

 スキル:体術Lv2、簒奪者Lv1、収納魔法Lv1、女神の加護Lv1、パーティLv1、魔力感知Lv2、体当たりLv2、短剣術Lv2、暗殺術Lv2↑、集中Lv1、剣術Lv2↑、棍術Lv2、弓術Lv2↑


 コロ スライム 2 -

 パーティ:ヤマト

 状態:正常

 Lv 17 → 19 Exp 11,195 → 19,845

 HP 93/87 → 93

 MP 27/25 → 27

 SP 79/74 → 79

 ATK 87 → 93

 DEF 75 → 80

 MATK 16 → 18

 MDEF 14 → 16

 SPD 98 → 103

 STR 99 → 105

 VIT 96 → 102

 MGC 38 → 42

 AGI 112 → 119

 スキル:捕食Lv2、真似っ子Lv2

===

ーーー

暗殺術

  暗殺する技術

 - Lv2

  クリティカル率に補正

   増加率(スキルLv×10)%


剣術

  剣を扱う技術

 - Lv2


弓術

  弓矢を扱う技術

 - Lv2

  精密射撃 MP10

   命中率に補正

    増加率(スキルLv×5)%

ーーー


「おー、育ってる育ってる」


 コロちゃんのステータスも、ゴブリンのATK以外に対してはもう追いついてるじゃないか


「強くなったね〜コロちゃん!」


 なでなで

 ぷるぷる


「MP消費の計算が合わない…のは、係数とやらが成長したのか」


 昨日のギュルンギュルンのおかげかな?

 やっぱりただこねくり回すよりも、何かをやろうとしている方が成長するんだ


「剣術Lv2は何もないんだな…」


 それに引き換え、暗殺術と弓術の優秀さよ

 弓矢はあまり食指が動かないけど…

 そして軒並みLv3の壁は高いみたいだな

 パーティが育たないのは、戦闘回数や時間経過じゃ熟練度が増えないのかな?

 寝る前にコロちゃんに頼んで使いまくってみるか


「ゴクッと一本飲んで、着替えて帰って報告しますかね」


 ぷるぷる


 …35匹分は持ちにくいな






「素材の買取をお願いします〜」

「では裏へどうぞ〜」

「ハ…ヤマトさんの対応、代わりますね」

「了解です」

「ではヤマトさん、裏へどうぞ」


 あれ?

 なんか目を付けられた…?


「こちらへ」

「は、はい」


 なんだ、買取所の端っこに誘導されてるぞ…


「今日、目撃証言がありました」

「盗賊団ですか!?」

「いえ、ヤマトさんのです」

「…へ?」

「わざわざ口笛を吹いて、ゴブリンの集団と連戦したそうですね」

「えーっと…」

「素材とカードを出してください」

「はい…」

「…35と11ですか」

「いやほら、俺の格好を見てください!どこも汚れてないでしょ?それにほら、特に怪我もしてないし、問題ないです。無茶なんてしてないですよ!?」

「まだ何も言ってませんよ?」

「いやー、ははは…」

「一度帰らずに直接報告しに来ましたか?」

「そうですけど…?」

「外で着替えましたね。昼間と服が違っています。あと、基礎魔法の清浄ですか。とにかく全体に綺麗過ぎます」

「はい…」


 昼間、見られてたのか…

 もはや監視と言っても過言ではないのではなかろうか

 次回からは報告は翌日にして、ギルドへ寄るのは一日一回にし


「ステータスを見せてもらえますか?」

「どうぞ閲覧してく」


 ぞくっ


 この感覚、覗かれてるのとは別に、リリアナお姉さんのこの視線の分も含まれてるんじゃないだろうか…


「基本値が昨日で初日の5割増し、今日に至っては初日のほぼ2倍ですか」

「いやー女神様の加護って凄い!」

「はぁ…。明日、ダンジョンの場所を教えてあげます」

「いいんですか!?」


 話しながらもテキパキと仕事をこなす、デキるお姉さん、素敵です


「これだけ成長速度が上がっているという事は、安全マージンをきちんと確保して効率的に討伐していると判断できます。他の討伐記録もありませんし。この異常なペースで狩り続けられる事、成長率が鈍化しないどころか上がっているのは、ずるいの一言ですが」


 そうか!

 カードを体から離せば内緒で狩りができるんだ!


「ほんとにもう女神様には感謝ですよ」

「その代わり、本当に無茶はしないでくださいね。深入りし過ぎず、手に負えないと思ったらすぐに引き返す事。たまに深い階層から出てくる魔物も居るので気を付ける事。約束してくださいね」

「もちろんです!」

「カードもしっかり持つように」

「はい…」


 バレてら


「ところで魔力結晶は売らないんですか?」

「ちょっと使い道ができまして」


 回復魔法を覚えるとか言ったら、また無茶すると思われるんだろうな…


「今度は一体何」

「ノーラと晩ご飯が待ってるので!今日も一日お疲れ様でした〜」

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