第32話 新人冒険者 vs 騎士団見習い

「なに?もしかして団長みたいなのがまた増えちゃったの?」

「どうなんですか団長さん」

「それについては…ミリア、今度の休みは帰るのか?」

「うん」

「団長のカルーノだ。君の名は?」

「ヤマトです。冒険者やってます。こっちはコロちゃんです。よろしくおねがいします」

「ああよろしく。ヤマト、また後日連絡を入れるからその時に話そう」

「あ、はい」


 なんか騎士団の団長様から呼び出し受ける事態になったぞ…


「よく分かんないけど…それより団長、手紙だよ。ヤマトが届けてくれたんだ」

「そうか。二人ともありがとう。どれどれ…」

「お兄さん、ヤマトって珍しい名前だね」

「うん、よく言われる。よろしくねフェミリア」

「ミリアでいいよ!よろしくねー」


  ぴょいん


「おっとと、コロちゃんもよろしくねー」


  なでなで

  ぷるぷる


  うん、ミリアとは仲良くなれそうだ


「ヤマト、本題の他に、もしこの場にヤマトが居たら気にかけてやってくれと書かれている。君は村長の身内なのか?」


 ここでもか

 多分、俺自身に対する厚意と加護持ちの人間に対する気遣いの両方なんだろうな

 ありがたやーとか言ってたし


「一方的にお世話になっていると言うか…村でテオドールさんって人と村長さんの二人に助けてもらいました」

「なんだ、テオも知っているのか。稽古でもつけてもらえたか?」

「最短最速って教えを受けました。お知り合いなんですか?」

「昔、一緒に仕事をした事があるな」

「騎士団と冒険者って組む事があるんですね」

「別に全面対立してるわけでもないし、べったりでもない。それなりに持ちつ持たれつだぞ。得意分野の相互補完だな。冒険者でなくとも知っていておかしくないんだが、新人か?」

「登録から…今日で4日目、だったかな…?」

「ほう、テオの薫陶を受けた、期待の新人か」

「いや俺、そこまでの者では…」

「ミリア」

「なにー?」


 ずっとなでなでつんつんぷるぷるしてる…


「ヤマトと手合わせしてみないか?」

「いいの!?」

「いきなり!?」

「頼めないか?ミリアは見習いとして三年目、次の誕生日で成人して正式に入団する事になっている。お互い、ちょうどいいんじゃないかと思うんだが」

「やろうよお兄さん!」

「ぶ、武器を持って人とやり合うのは、ちょっと…」

「えーいいじゃんやろうよー」

「二人ともそう泣きそうな顔をするな。ヤマト、何も殺し合うわけじゃない。なんなら木剣じゃなくて、入門者用の武器でもいい」

「何ですかそれ?」

「要するに塗料を塗った、柔らかい棒だよ。洗えば落ちるんだけど、なかなか取れないから好きじゃないんだよねー」

「それなら、まあ…」

「あ、互いのステータスは試合前は秘密ね!手の内がわかったら面白くないから!」

「うん、わかった」






 おい、団長とミリアが何か始めるぞ

 誰だよあの男…まさか団長、やらせる気か?

 あいつめ、ミリアに何かあったらただじゃおかないぞ

 ミリア負けるなー!やっちまえー!


「えーっと、大人気だね…」

「あはは、ごめんね、やりにくいよね?」

「正直ね…」

「でもボクは本気だから。油断してたらビックリするよ?」

「わかった」

「では両者、構え!」


 ミリアが身を低くし、練習用の短剣を構える

 目が爛々として尻尾がピンと立っている

 完全にやる気が漲ってるな


「始め!」


 速い!

 所詮は見習いと思っていたが、想像よりは随分と速い

 しかし実際の速さだけが問題じゃない


「くっ!」

「ほらほら!」


 一撃目は距離をとって余裕でかわしたが、そこからの追撃が絶え間ない

 あっという間に反転し、距離を詰め、息も詰まるほどの連撃を繰り出してくる

 魔物とはまた違うプレッシャーに、気迫で押される

 様子見をせずに初手から戦うんだった!


「まだまだ!」


 時に手足からの打撃を繰り出し、訓練された動きで翻弄してくる

 技で返そうにも、まず態勢が崩されっぱなしで文字通り手も足も出ない

 これが見習いとは言え、プロの技術との対人戦か!


「攻撃してこないの!?」


 こうなったら仕方ない

 大人気ないが、無手を解禁してステータスで捻じ伏せる!


「ぐぅっ!」


 短剣だけは避け、打撃の上から体当たり!


「お返しだ!」


 こちらの態勢を整えるため、押し込んで突き放すような蹴りで距離を取る


「速っ!?」


 今度はこちらから駆け寄り、打撃と見せかけて…


「うわっ!」


 迎撃を弾き、入身投げ!


「うぅ…」


 残身の代わりに、得物を首元で寸止めする


「そこまで!」

「はあ、はあ、大丈夫?」


 相手のDEFもわからないし、加減が難しかった

 こっそりステータスを見ても良かったかもしれないな…


「うん、背中から落としてくれたから…」


 外野がなんかわーわー言ってるが、目をつけられてないよな俺?


「いい内容だった」

「団長、負けちゃったよ」

「正直、危なかったよ。思わず大人気ないことしちゃった。ごめんね」

「ううん、勝負だもん」


 ミリアに手を伸ばし、起こしてやる

 背中についたゴミをはたいてやると、どれだけ華奢なのかよくわかった


「ヤマトは、自分で課題を見つけたか?」

「はい。何よりまず、完全に気圧されてました。これは勝負以前の問題ですね」

「最初は最短最速を実践できていなかったし、後半は殆どステータス頼りだな。ミリアはどうだ?」


 ステータスの話題きたー!

 さらっと周りのステータスを確認…しておきたいけど、勝手にやったら人としてダメだよなぁ


「正直、反撃されてからはどうしていいか、わからなかったかな…」

「まあ経験とステータスだな。どちらもこれから成長できる」

「ステータスは俺より低そうだけど、同等だったら負けてたな」

「お兄さんも、そこらの新人よりステータス高いんじゃないの?攻撃に入ったら豹変してたし、変なの」


 今の自分のステータスってどのくらいのLvだ


「ボクもLvの割にはステータス高いと思うんだけどなー」

「そうなんだ?」

「自然に上がるLvが伸びきる前に訓練して、ステータスそのものと成長率を上げるのが見習いの一番の目的だ。もちろん技術的な訓練もするが、やる気がある奴の成長期を放っておくのは勿体無いからな」

「末恐ろしい…」

「ミリアはまだ見習いでも騎士団の期待の星だ。将来有望だぞ」

「いやー照れるなーもー」

「はっはっは、これからもビシバシ鍛えてやるからな!」

「ボク頑張るよ!」


 なんだ、もっと恐いとこだと思ってたけど、いいとこじゃないか騎士団って


「ねーねーお兄さん、ボクのステータス見せるからさ、お兄さんのも見せてよ」


 きちゃったよ、これ

 Lv35で見せて良いか不安になってきた

 女神の加護は…見せる相手は増やさない方がいいよな


「ふっふっふ。見せる前に、Lvの予想を聞いておこうじゃないか」

「んー、新人って言ってたし、25くらい?」

「いや、手加減してあれなら45くらいあるんじゃないか?」

「うそ!そんなに!?って言うか手加減されてたの!?」


 そうか、Lv45か

 技術がなくて、ステータスで捻じ伏せて、手加減までバレてて…

 団長の言葉を信じてみるか


「じゃあボクは!?ボクのLvも予想してみてよ!」


 成長しきる前…だいたいLv16で止まるらしいから15くらいか?


「うーん、15くらい…かな?」

「ぶぅ。じゃあいくよ…せーのっ!」

「「ステータスオープン」」


===

 ヤマト[ハジメ] 人 18 リスガー

 パーティ:コロ

 状態:正常[女神の加護(保護)]

 Lv 45[0] Exp 515,129[0]

 HP 236/244 → 248

 MP 73/73[119/173]

 SP 172/222 → 225 (10%↑ 体術Lv2)

 ATK 246 → 250 (10%↑ 体術Lv2)

 DEF 224 → 226

 MATK 48[148 → 149]

 MDEF 43[143]

 SPD 231 → 234 (10%↑ 体術Lv2)

 STR 266[162 → 166]

 VIT 262[159 → 162]

 MGC 61[110 → 111]

 AGI 249[148 → 153]

 スキル:ステータスLv1、体術Lv2、[簒奪者Lv1、収納魔法Lv1、女神の加護Lv1、]基礎魔法、パーティLv1、魔力感知Lv2、体当たりLv2、短剣術Lv2、暗殺術Lv1、集中Lv1、剣術Lv1、棍術Lv2、弓術Lv1

===


===

 フェミリア 猫人 15 リスガー

 状態:正常

 Lv 15 Exp 75

 HP 23/78

 MP 19/19

 SP 31/66 (5%↑ 体術Lv1)

 ATK 75 (5%↑ 体術Lv1)

 DEF 67

 MATK 12

 MDEF 11

 SPD 72 (5%↑ 体術Lv1)

 STR 85

 VIT 85

 MGC 30

 AGI 82

 スキル:夜目Lv1、集中Lv1、体術Lv1、SP回復量上昇Lv1、短剣術Lv1、パーティLv1

===

ーーー

夜目

  暗い場所での視覚を強化する

 - Lv1

   暗い場所での視力を補う


SP回復量上昇

  あらゆる手段のSP回復量に補正

   増加率(スキルLv×10)%

ーーー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る