第31話 お使いクエスト達成
手土産を忘れていた事を思い出し、ゴブリン6、グラスウルフ7、つまり道中に倒して回収した分の魔力結晶2,250G分を苦し紛れに渡してきた
帰りにまたわんころに襲われたけど、吹っ切れたのか何なのか、今回もさくっと倒せた
そして村長さんからの手紙を預かってギルドへ戻った
お昼を食べてから戻ってきたので半端な時間、ギルドはけっこう空いていた
「ヤマトさん、依頼達成です。カードをどうぞ」
「え?」
言われるままにカードを出すと、返ってくる時になんか小銀貨3枚出てきた
「アバッシ村のザール村長からの指名依頼で、手紙の配達でした。手紙の他に依頼と報酬が入ってましたよ。これで胸を張ってランク2を名乗れますね」
「普通にお使い頼まれただけだったのに…」
お土産を忘れて魔力結晶を置いてきたのに、むしろ俺がもらっちゃってるじゃないか
「なかなかないですよ、こういうの」
「やっぱりそうですか」
「きっとお小遣いですね。手数料も入っていたのできちんと冒険者としての実績にもなりますよ。そしてギルド宛に、ヤマトをよろしくと書かれていました」
「今度行く時は、お土産を忘れないようにしないとな…」
ぷるぷる
やっぱ呆れるよね、コロちゃん…
お土産、大事
「盗賊団の件で行ってきたんですね」
「え、ええ、まあ」
「それで、手土産も持たずに飛び出したと」
「お恥ずかしい…」
「きっと、元気な顔を見せてあげるだけで喜んでくれるタイプですよ」
「でもさすがにそれだけじゃだめですよね。せめて立派になったところを見せないと」
「手土産も忘れずに、ですね」
「と、ところで!コイツを見てください!どう思います?」
リリアナお姉さんにだけ見える角度で、こっそりステータスを出す
「これは…ほぼ5割増しですね。登録から四日目、しかもこの周辺の魔物しか倒してないはずなのに。加護ってすごいんですね」
「なんかもう、ズルいって感じですけど、そこはおいといて。オススメの討伐とかって、ありません?」
「ランク2ですと…近場のダンジョンの1Fなどはどうでしょう?ランク2の皆さんはそこに…」
「ダンジョンあるんですか!?」
ノートと言い掲示板と言い、大事な情報を見落としがちだな俺
仮に素材は持ち帰りに無理があったとしても、魔力結晶なら買い取ってくれるはず!
「え、ええ。昇格試験にも使っ…あ」
「昇格試験」
「あの…やめてくださいね?」
「ほら、将来の目標って事で。あと、下見的な感じで」
「1Fはまだしも、深い階層に行くと敵も強くなりますし、そうでなくても群れてくる場合も…」
「なるほどなるほど。試験は深く潜る必要があると。で、詳しい内容は?」
「…ランク3は指定の敵を3匹ほど。カードの討伐記録で確認します。パーティ前提でですよ?」
「あ、クエストを受けないとだめなのか…」
「いえ、カードに記録自体はされます。確認済みの魔物であれば、記録の読み出し時に名前も出ます。討伐依頼のカウントは依頼の前後で比較して確認しますので」
これは成長するチャンス?
「ヤマトさん、試験内容の説明を求められたので職務として教えないわけにはいきませんでしたが、無茶はしないでくださいね?お願いしますよ?」
「大丈夫です!俺、臆病なんで!」
「どの口が言うんですか…」
ほんと、臆病だよ?痛いの嫌いだし
「ダンジョンって、得物の取り合いとか心配だな。狩り尽くしちゃうとかないですか?」
「結論から言うと、無理ですね」
「殲滅はできないと?」
「過去に何度も大規模な討伐隊を編成して魔物を狩ってきましたが、その後にまた増えてるんです。これはダンジョンの内外を問いません」
「生き残りから増えたとかは?」
「繁殖にしては増えるペースが異常なんです。ある程度まで増えたら、そこからはなかなか増えないみたいですけど。それでも少ないに越したことはないですし、上限はあるかどうかも実際のところわかりません」
「ほうほう」
「なので間引く必要もあって、冒険者の収入源やギルドの存続理由のひとつになってますね」
「なるほどなるほど」
「ハ…ヤマトさん。狩り尽くす勢いで戦うつもりですか?」
「いえ、単にどんな感じなのかなーって気になっただけで…」
横殴りとかで喧嘩になっても嫌だし
「口笛を吹いてゴブリンの集団に挑み、登録から二日間で30匹を超える数を狩るようなランク1の新人に、信用があると思いますか?まあ今はランク2ですけど」
あ、そう聞くとなんとなくチートキャラっぽいな
「えーっと…ほら、盗賊団に備えて鍛えないと…」
「その事ですが、あまりに警告を無視するようなら外しますので。集団行動中に無茶をして周りを巻き込むような恐れのある人は信用できませんからね」
「はい…」
あれ?俺、盗賊団の対応を希望してたっけ?
まあでも、信用を無くすのは良くないな、うん
「とりあえず、ダンジョンもいい経験になると思いますし、晩ご飯までに帰るつもりなので深入りはしません。なので場所を教えてください!」
「冒険者たるもの、そういった不安になるような発言は控えてください。ゲン担ぎも馬鹿にできませんよ」
フラグという概念、ここにあり
素直に回避しておくか
「わかりました。今日は行きません。また後日教えてください」
「落ち着いて、勢いで飛び込まないようなら教えてあげます」
「代わりに今日は、ちゃんと依頼をやる事にします」
「それならちょうどいいです。こちらでの処理が終わったようなので、村長さんの手紙を騎士団に届けてください」
「了解です!」
「届けたらこちらの書類に署名を貰って戻ってきてくださいね」
そんなわけで、フラグを華麗に回避した俺は、騎士団の所に向かったのであった
「小さい。広い」
冒険者ギルドは砦みたいだったけど、こっちは実務的だな
建物が比較的小さくて、裏に練兵所がある
統率された動きでキビキビ訓練してる
あっちは、逮捕術か?
ギルドで衛兵に捕まるとかなんとか言われたから、軍隊と警察を足して割っ…ちゃだめだろ
「お兄さんお兄さん、何か用?それとも迷い込んだとか?」
「あ、こんにちは。えーっと、冒険者ギルド経由で、アバッシ村の村長さんの手紙を持ってきました」
「あ、お疲れ様です!誰宛になってるか分かるの?」
なんかフランクな子が現れたぞ
あっちの訓練の恐そうな印象からすると、だいぶ距離感が近…ほう、猫耳か
「えー、個人じゃなくて…騎士団宛って事になってるな」
「んー、ならボクが預かっても大丈夫かな。受け取るね」
「お願い。あ、これにサインも」
「ほいほいーっと」
ん?
フェミリア?
…ボクっ娘…だと!?
「どうしたのさ?署名と人の顔を見比べて。…どうせお兄さんもまた女らしくないとか言うんでしょ」
「いい!」
「は?」
「素晴らしい!」
「おーい?」
「まさかこんな恐そうなところでボクっ娘に出会えるとは!」
「もしもーし?」
「厳つく汗臭い男ばかりに見えるこの場所と一見その将来に不安を覚えさせる境遇と思いきや実は猫耳の女の子というキャラのギャップが彼女の魅力を引き立てている!つまり不安は拭いきれずに染まってしまうという未来の可能性が一服の清涼剤を」
「…キミ、大丈夫?」
ああ、大丈夫大丈夫。ついつい熱いパトスが迸ってしまっただけだから。言語中枢が崩壊して一貫性のある言葉を吐いていないというのは自分でも理解してるから
「一度、語尾にニャって付けて喋って…いやそれだと属性過多でむしろ白ける可能性がでもものは試しで一回くらいは…」
「人の話を聞かないって、よく言われない?」
「どうした?不審者か?取り押さえるか?」
「あ、団長。なんかボクの顔と名前で悶えてるみたい」
「…同士よ」
でっかい熊男と無言で見つめ合い、頷き合い、握手、そして熱い抱擁を交わす
「…なにこれ」
「フェミリアちゃん、君はそのままでいいんだ。いや!そのままで居てくれ!」
「わかってくれるか同士よ!まったく周りのわからず屋どもと来たら…」
「はいはーいそこまでー」
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