第24話 俺の日常はこれからだ

 つんつん


 あ、知らない天井…じゃないな別に


 ぺちぺち


「おはようコロちゃん」


 ぷるぷる


「起こしてくれてありがとね」


 ぷるぷる


 この世界に来て、三日目の朝か


 体中が痛い


「コロちゃん」


 ぷるぷる


 …動けない


「ごめんね」


 ぷるぷる


「なでなでつんつんぷにぷにしてあげたいけど、体が動かないんだ」


 がーんっ!


 あ、コロちゃんが新しいリアクションに目覚めた


 …これ筋肉痛だ

 ステータスの状態のとこに『女神の加護(保護)、猛筋肉痛』って書いてあるし間違いない

 ってかそんなの出るんだな

 状態異常か

 状態異常なのか

 あと何だ【猛筋肉痛】って

 毒に対する猛毒みたいなあれか

 それってもはや肉離れとちゃうんか

 猛筋肉痛には女神様のご加護も通用しないのか


 昨日は頑張ったからな

 今思うと、よくあんなこと考えて実行できたな

 準備運動もしてなかったな

 暴れ兎がそれにあたるのかな

 フッ、準備運動にはちょうどいい

 みたいなセリフを言える存在になったのか


 せっかくなんだからステータス高めだろうし、カンフー映画ばりのアクションとかできないかな

 三角飛びとか

 壁蹴りを連発して登ってくとか


「痛い」


 ついつい体が動いた


 まあ上への移動とか実際、魔法の出番なんだろうな

 風かな

 重力かな

 念力的な何かって可能性もあるか

 ああ、『実際』とか付けちゃうあたり早くもファンタジー思考に染まってるんだろうか


「コロちゃん」


 ぷるぷる


「暇だね」


 ぷるぷる


 コンコン


「おはようございます〜朝ご飯ですよ〜」

「ノーラ〜」

「はい〜」

「動けない」


 ガチャバタン


「え〜!?びょ、病気ですか〜!?」

「筋肉痛みたい」

「どこか痛いところや苦しいところは〜!?」

「全身」

「ぜ、全身ですか〜!?」

「全身筋肉痛で苦しいし動きたくない」

「…へ?」

「全身筋肉痛で苦しいし動きたくない」

「癒やしを〜」


 癒やされた


「ありがとうノーラ!痛みがあっという間になくなったよ!」

「治りませんよ〜?」

「え?…ったたた!治ったと思ったのに!」

「気の持ちようという事です〜」

「そんな馬鹿な!」

「生きるという事は〜痛みと共にあるという事でもあるのです〜」


 この子ったら祈りのポーズまでとっちゃって


「いやいやそうじゃないでしょ!?それ違う話だよね!?」

「聖職者のお説教を疑うんですか〜?」

「だからそうじゃなくて!そういう聖職者とかの出番じゃないよね筋肉痛って!」

「誰しもが〜」

「待って待って!もう充分だから!充分にイジられたから!朝ご飯食べよう!」

「昨夜と言い今朝と言い〜ひとを心配させすぎですよ〜」

「それはごめん、ほんとに悪かった。次からはもう少し考えて行動するからどうか許して」

「今日はちゃんと〜お仕事用の服を買ってくださいね〜」

「あ、昨日のお金まだ渡してなかった」

「まだ預かった分がありますよ〜?」

「ほら、お風呂の修理代の積立もあるし。それからこっちは寄付です!」


 滞在費の分はまだまだあるからと受け取ってくれなかった

 それに、これから私物を買う事もあるでしょ〜?だって


 朝ご飯おいしかった






 腹ごなしを兼ねて、型の練習をする


「地味なんだよなーほんと」


 体捌きとか、基本動作の型はまだいい

 武道の動きって感じがする

 技の型になると、知らない人が見れば変な踊りを踊っているように見えるだろう

 ああ、ミットを蹴りたい

 でも、無いものは無い

 せめて練習できる部分はキッチリやっておくかー


「この辺でいいか」


 ぴょいん


 乱れた息を整えていると、コロちゃんがタオルを乗っけてやってきた

 器用だなほんと


「コロちゃんありがと〜暫くは抱っこだね〜」


 ぷるぷる


 体を動かして筋肉痛もだいぶ紛れたし、そろそろ買い物に出てみるか






 魔力操作の練習をしながら街を歩く


「極めろみたいな事を言われたけど、これ何の役に立つんだろう?そもそもスキルLvが1で最高って…」


 昨夜は本当に操作出来てるのか疑ったけど、魔力感知のおかげで魔力を操作する感覚に確信が持てた

 最初はむずむずするだけだったのが、少しだけ動かす量と範囲を操れるようになった

 そして動かした魔力は、回収?された

 動かす量に応じてMPが減るけど、それを体内で止めたら回復する。身体からはみ出た分は霧散する

 どうも魔力を操作をするだけでは消費まではしないようだ






 ファンタジー世界の朝は早い

 食料品店は当然の事として、道具や装備を扱っている店もいくらか開いている

 旅人が居るからかね


「すいませーん」

「はいはい、いらっしゃい」

「フードの付いた上着を探してるんですけど、どんなのがありますか?」

「マントかローブだね。これなんかどうだい?なんか流行ってるみたいだよ」

「あ、できるだけ軽くて丈夫で、汚れの目立たないものがいいんですが」

「旅支度かい?それならこれなんか定番だよ」

「じゃあそれと、あと、全身の着替えも含めてそれぞれ何着か」


 店の人と相談しながら服や装備、道具を色々買い込んだ

 一から揃えたおかげで、お金も今朝渡した分の残りがほぼ全部なくなってしまった

 全部を新品で買ってたらどうなってた事か


 しかしこれ、けっこうな荷物になるな

 旅に出るとしたら厳選しても大変だぞ

 着替えに食料、テントは諦めるとしても寝袋?あるのか?やっぱマント?

 それに簡単な調理器具と、桶にロープとか…

 基本は街を辿って、非常食だけ持ち歩いて…?

 ファンタジーの旅って現実とどう違うんだ


 それより今だ

 いっそこの街に居る間だけでも、毎日使い捨てるか?

 いやそれはさすがに勿体無いしお金が貯まらなくなる

 一日の終わりに清浄の魔法で体を綺麗にして、仕事用の服はギリギリまで使いまわして

 着替えは収納魔法に突っ込んで…魔法…

 魔法ってスキル扱いだよな?


「熟練度を上げればいいんだ!」


 ここはファンタジー世界なんだ

 収納魔法を使いまくろう!

 きっと使い勝手がよくなるに違いない!


 ・服を入れる袋を普段着用、仕事着用で買う

 ・収納魔法に突っ込んで、街の外で隠れて着替える

 ・着替える時に清浄の魔法を使う

 ・寝る前の魔法の訓練には当面、収納魔法だけにMPを使いまくる


 でもこれ、どんだけ時間かかるんだろう

 魔法の訓練は使いまくればいいだけなのか?

 そもそも熟練度って見られたっけ…

 ステータスを確認しても熟練度の表示はない

 意外なところで不親切だ

 お役立ちノートに何かヒントはないか見てみよう


 …ほんとに助けは要らないのかな

 方法も場所もわからないし、余計な事しようとしてないかな

 でもとりあえずの目標だ


 また脱線した

 とにかく読もう


ーーー

簒奪者

  世界へと還るはずの魂を奪う

  取得経験値が相手自身の持つ経験値の値となる

 - Lv1

  倒した敵のステータスと熟練度を取り込む

   取得率1/100

ーーー


 これは敵のスキルを覚えた原因だな

 ってか1/100ってちゃんと書いてあるじゃん!

 ちゃんと読めよ俺!

 他も順番にちゃんと読んでいこう…


ーーー

収納魔法

  魔力を使って異空間に干渉する

  干渉と維持に魔力を消費する

 - Lv1

  開く MP50

  維持 MP50

ーーー


 こいつの消費MPが問題なんだ


ーーー

女神の加護

  過保護なまでの女神の愛情

  肉体と本来の魂の間に介在する

 - Lv1

  スキル【最適化】

  スキル【存在強化】

  スキル【ステータス改】

ーーー


 これのお陰で魔物と戦えるだけの力がある

 でも女神様は…いや、次だ


ーーー

最適化

  女神ちゃん(仮)特製保護スキル

 - Lv1(MAX)

  リソースで魂の修復をする際に馴染む程度に取り込む

  余剰分は熟練度にまわされる

ーーー


 …ん?

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