第23話 俺、汚い?

「そらっ!」


 まず一匹、近付いて来た奴の顔面に石を投げつける

 よし当たった!


「前にお前らと戦った時、テオさんに教わったんだ!」


 両手で顔を押さえてるところを、最短最速で…刺す!


 ステータスの差なのか、簡単にナイフが刺さる

 すぐに抜くと、続いて首から血が吹き出る

 もう満足に動けないだろうし放っておいても死ぬだろう

 首を押さえて悶え苦しんでるが、トドメを刺してやる余裕はない!


「っと!」


 その間に追いついてきた別の2匹が斬りかかってきた!

 時間をかけると囲まれる!

 やってみるか…

 2匹が並んで斬りかかってくるところを…バックステップ!


「光よ!」


 目の前に突然現れた光球に、二匹とも目をやられる

 その隙に、首筋を斬りつける!


「っぶね!」


 順番に斬りつけたところに敵の攻撃がやってくる

 ちょっとナイフ二刀流がしたくなるな…


 今度は三匹か

 残りの二匹もすぐに追いついてきそうだ


 だが暴れ兎の後だからか、遅く見える

 落ち着いて、誘導するんだ


「ほらほらこっちだ!」


 右手に得物を持っている事を確認して

 もう一度、木立に向かって走る

 だが今度は通り抜けるわけじゃない


 この辺に…あった!低い大木だ!

 いったん立ち止まり、コロちゃんにお願いする


「コロちゃん、合図したら木の上から顔に貼り付いて!」


 ぴょいん!


 追いついてくるのを確認しつつ、木に沿って時計回りに走る

 ゴブリンどもは必死に追いつこうとして内周側、木の傍に近づいてる

 一周回るところで


「コロちゃん!」


 ぴょいん!


 先頭の顔にコロちゃんが貼り付く!

 上手いこと転び、二番目の奴が巻き込まれて倒れ込む

 その隙に助走をつけて、つんのめった三番目の首筋をすれ違いざまに切り裂く!


「コロちゃんおいで!」


 ぴょいん!


 あと四匹!


 そろそろ相手のSPが尽きる頃だが、こちらはまだ100近く残っている

 二匹はまだ木の根元、他の二匹は…その近くで膝に手をついてるな

 

 ここはお約束の投石!

 弾かれた

 さすがにもう警戒してるよな…それなら砂だ!

 …届かないじゃん!


 どうする?

 相手は疲れてるけど、集団で固まって、しかも距離を詰めて来ない


「コロちゃん、もう放っとく?」


 ぷるぷる


 お気に召さないようだ

 ノロノロとゴブリンどもが近づいてくる


「やるしかないか…」

 

 ぴょいん!


「コロちゃん!?」


 コロちゃんが集団の中に飛び込む

 ステータスを確認すると、ゴブリンどものSPは枯渇寸前だ

 四対一とは言え、同等の素早さに、疲れの差

 無慈悲なステータスの結果、コロちゃんは無傷で撹乱し続ける


「…コロちゃんに死角はないのか?」


 いやいや、呆けてる場合じゃない

 コロちゃんのSPだって減ってきてるんだ!

 まずは動ける数を減らさないと!


 もう一度助走をつけて、今度は飛び蹴りを放つ

 後ろからド突かれたゴブリンが、前の一匹を巻き込んで倒れる

 すぐさま斬りかかってくるうちの片方に、コロちゃんの顔面貼り付き!

 残った一匹を捌いて、捌いて、ここだ!

 入り身の要領で、逆手に持ったナイフを喉に突き立てる!

 俺は格闘戦の方が経験が多いんだよ!


「コロちゃんおいで!」


 ぴょいん!


 戻ってきたコロちゃんのステータスを確認すると、ほとんどSPしか減っていない


「もう無茶しないでね」


 ぷるぷる


 全然無茶じゃない、そんな雰囲気だ

 そもそも俺の解釈、合ってるのかな?


「残り三匹だ。確実に仕留めよう」


 ぷるぷる


 まとめて無力化…

 今なら比較的安全に試せるな


 表面の砂を集めて

 両掌に砂を乗せて

 送風の魔法を…

 飛んだ!


 これは帰ったら、魔法の練習もした方がいいな

 基礎魔法と、せっかくだから魔力操作もするか

 あ、テオさんに言われてた体術の訓練もしなきゃ

 やることいっぱいだな


 砂が、疲れきったゴブリンどもの目や鼻、口に入り、藻掻き苦しんでいる


 念には念を

 飛び蹴りで一匹ずつ蹴り倒して

 そして順番にトドメを刺していく


 …終わった

 8匹全部倒した


「ふぅ。コロちゃん、お疲れ様」


 なでなで

 ぷるぷる


「大活躍だったね!」


 つんつん

 ぷるぷる


 終わった途端、今更の恐さで震えが来た

 今日、生まれて初めて自分の意志で、戦いの場にやって来たんだ


 何気に、奇策ばかりだったように思う

 もうちょっとくらいスマートに戦えないかな


「コロちゃん、あいつら食べる?」


 ぷるぷる


「…じゃあ、集めようか」






 完全に暗くなっちゃったなー

 疲れたー

 早く換金して、家に帰って、ご飯食べて…

 あ、晩ごはんは何だろうな


「ハ…ヤマトさん!?ご無事ですか!?」

「え?」


 わーいリリアナお姉さんだー

 とか思ってたら何か心配されてる?

 こんなの注目集めるよなー

 案の定、周りの視線が冷た…あれ?


 俺、ドン引きされてる?


「ええまぁ。登録初日からいきなり街の外はマズかったですかね…?」

「け、怪我は!?痛い所はないですか!?」

「特に怪我はしてませんし痛いところは…強いて言えば、心地良い達成感と疲労感ですかね。あと、若干の興奮の残り香みたいな?明日は筋肉痛になりそうです」

「おい兄ちゃん、いったいどんな戦い方したらそうなるんだ?」

「ここに来るまでによく衛兵に捕まらなかったなお前」


 名も知らぬ先輩冒険者達がやんややんや


「えーっと、暴れ兎6匹と戦った後にゴブリン8匹に襲われて、俺なりに考えて安全に戦ってましたけど」


 とりあえず、どんな戦い方をしたのか訊かれるままに答えた

 と言うか、結局は全部説明してしまった

 早く帰りたいなー


「何だよそれ!?無傷で勝とうとしたらそんな事になるのかよ!」

「これからは回復魔法にちゃんと感謝してよね!」

「えげつない戦い方するのな」

「だって俺、痛いの嫌ですもん」

「そりゃ首ばっか狙ってたらそうなるよな」

「ロマンはありますよね」

「でもスマートなのか泥臭いのか、判断に困りますね」

「まあでもほら、俺もコロちゃんもこうして無事ですし」

「スライム恐いスライム恐いスライム恐い」


 とその時、無言だったリリアナお姉さんがこれまた無言で鏡を差し出してきた


「な、なんじゃこりゃー!?」


 あちこちが変な色に染まって…いやこれ、返り血だ!汚え!そして今更気付いたがめっちゃ臭え!


 その後、驚かせてしまったリリアナさんに謝り、お小言を頂戴し、周りに絡まれ、ノーラが待ってるからと言ってなんとか解放して貰った

 教会に帰ったら帰ったでノーラが卒倒しかけ、涙目で怒られ、洗濯するだけ無駄だと言われつつ体を拭くお湯をくれ、明日は仕事用の服を買う事を約束させられた

 清浄の魔法はMPが尽きるまで使っても自分の体にしか効かなかった

 あ、晩ご飯おいしかったです


 結局、ゴブリンの魔力結晶はひとつ250Gで売れた

 そして8匹分の武器は、ナマクラだったけど合計500Gにオマケしてもらった

 つまり、今日の収入は3,400Gだ!

 チート持ちとは言え、異世界二日目、冒険者登録当日にこれは上々な結果だろう


===

 ハジメ 人 18 リスガー

 パーティ:コロ

 状態:女神の加護(保護)

 Lv 0 Exp 0

 HP 206/198 → 206

 MP 3/165 → 166

 SP 196/181 → 187 (5%↑ 体術Lv1)

 ATK 193 → 201 (5%↑ 体術Lv1)

 DEF 184 → 190

 MATK 143 → 144

 MDEF 138

 SPD 192 → 197 (5%↑ 体術Lv1)

 STR 105 → 115

 VIT 108 → 116

 MGC 100 → 102

 AGI 108 → 114

 スキル:体術Lv1、簒奪者Lv1、収納魔法Lv1、女神の加護Lv1、最適化、存在強化、ステータス改、基礎魔法、パーティLv1、魔力操作、魔力感知Lv1、体当たりLv1、短剣術Lv1↑、暗殺術Lv1↑

===

ーーー

短剣術

  短剣を扱う技術

 - Lv1

  短剣によるダメージと命中率に補正

   増加率(スキルLv×5)%


暗殺術

  暗殺する技術

 - Lv1

  クリティカルのダメージに補正

   増加率(スキルLv×10)%

ーーー


===

 コロ スライム 2 -

 パーティ:ヤマト

 状態:正常

 Lv 10 → 13 Exp 1,645 → 3,245

 HP 75/67 → 75

 MP 20/17 → 20

 SP 64/56 → 64

 ATK 68 → 76

 DEF 57 → 65

 MATK 11 → 13

 MDEF 9 → 12

 SPD 78 → 86

 STR 77 → 87

 VIT 73 → 83

 MGC 26 → 31

 AGI 89 → 99

 スキル:捕食Lv1、真似っ子Lv2

===

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