第20話 魔法ギルド
「今日はこれからどうするんです?」
「どんな依頼があるのか見てみようかと。一番初心者向きのヤツでも探してみます」
「でしたら、魔法ギルドで適性検査を受けてみるのもいいかも知れません」
「魔法ギルド?」
そういえば、ギルマスが冒険者ギルド以外にもギルドがあるみたいな言い回しをしてたな
「魔法を学んでいる人達がメインですが、魔法適性に興味がある冒険者も行ったりしますよ」
「今は手持ちが…」
「ギルマスの名前を使ってください」
「わかりました。あと魔法適性ってなんですか?」
「そこはやっぱり、本職に話を聞くのが一番ですよ」
そりゃそうだ
というわけで、教えてもらった通りに歩くこと暫し…
黒っ!何この建物!魔法ってより黒魔術じゃんか!
見た目もなんかサーカステントみたいだし!
ヤギの頭とか飾ってあっても逆に驚かない!
いやそれを含めて驚くけど!
俺はここに用があるわけじゃないですよー
たまたま近くを通りがかってるだけなんです、はい
だめだだめだ!
せっかくリリアナお姉さんに教えてもらったんだ!
覚悟を決めて…形からして入り口はここだよな…
幕を開いて、そーっと覗いてみよう、そーっと…
扉じゃん
閉まってるじゃん
「何をしているんだい?」
ビクッとしたのは仕方ない
俺は何も悪くない
実際、何も悪い事はしてない、絶対
急に扉が開いて急に話しかけられたら、何の後ろ暗いところもない善良な一般市民だって
「まあとにかく、入ってきたらどうかな?」
…目が合った
「お邪魔します」
真っ暗だ
怖っ!
「試しに照らしてみてよ。魔法で」
え、何?
さっそく検査なの?
えーと確か、ノーラが使ってたな…
基礎魔法の、光球かな?
「光よ」
闇を切り裂き光が辺りを照らしだす!
なんてね
「ふむ。なるほど」
うわー、これだけで何かわかっちゃったのか
魔法ギルドすごい
「あ、あの?」
「それが君の光球の呪文なんだね」
「え?」
「君の魔法の師匠は聖職者か何かかい?」
「い、いえ、師事した事はありません」
まあノーラが師匠なら悪い気はしないけど
「ではその呪文を誰に教わったんだい?」
「教会のシスターが使っているところを間近で見てました」
「…これは興味本位で訊くんだが、君は聖職者たる教会のシスターと光球が必要になるような状況下で間近に居るような関係なのかい?」
ちょっ!お兄さん!
言い方!言い方!
「いやいやいやただあそこに身を寄せていまして…」
「孤児…というには大きいと思うんだけどね」
見た目は大人!頭脳は子供!
…ってそれ、だめな奴だろ俺!
「ちょっと事情がありまして、行き倒れ寸前だった所をシスターの厚意で」
「まあいいか。その様子では魔法の基本も知らなそうだね。基礎魔法を扱えるのにこれは不思議な事だ」
「ま、まあ使う機会も今までなかったので…」
なんだなんだ!
何なんだこの人!?
いきなり質問攻めで果てにはわけのわからないような事を言い出す始末だ
…これはギルドで言われた、『お人好しじゃ務まらない』という状態だな
ここからは俺が主導権を
「何かを決意した上で質問がありそうな顔だけど、答えられる事なら何でも答えるよ」
「…ここ、魔法ギルドであってますか?」
俺のヘタレ!
「ああそうだよ。ちなみにこっちは裏口だ」
「え…」
「表は反対側だよ。気付かなかったのかい?」
「な、なんか独特な建物だったので…」
「ああ、うちのギルマスの趣味だよ。僕にはよくわからないがね」
「あははは…」
魔法ギルドじゃなくて黒魔術ギルドにしたかったんじゃないですかねー
「ところで、うちに何の用だい?魔力感知のスキルでね、裏口に回り込んでコソコソしている人を察知したんだ。そんなのを見つけてしまったら、誰だって気になると思わないかい?事と次第によっては僕が相手をするのも吝かではない」
ぞくっ
ステータスを覗かれてる!?完全に不審者扱いだこれー!
リリアナさんのアドバイスがあってよかった!
「怪しい者ではないです!ギルドで適性検査を受けてみたらどうだと言われて!あとマドロイさんの名前で!」
「冗談だよ。彼の名前での紹介とは珍しいね。結論から言うと、君に適性はないよ」
「…そうなんですか」
これはさすがにショックだ
俺に魔法は向いてないのか
「綺麗な丸い魔力をしているね。凹凸のない完全な球体に近いイメージだ。むしろ本当にそうなんじゃないかとすら思える」
「へ?」
「だからどんな魔法に適性があるとかそういった事は無いようだ。向き不向きは何もない」
「なるほど!じゃあ魔力の大きさとか、そういうのは…」
「君は自分のステータスを見た事がないのかい?MGCというのがあるだろう」
「そ、そうだった」
「面白そうだから君にこれをあげるよ。ものにしてごらん」
「何ですかこれ?」
「【魔力操作】と【魔力感知】のスキル結晶だよ。魔力操作は基礎魔法の前段階をスキル化するまで繰り返したものだ。普通はそうなる前に基礎魔法を覚えてしまうがね。君が使いこなした時にどこまでのものになるのか非常に興味があるんだ。成長した暁には是非見せて欲しい」
こ、これがスキル結晶…
「いいんですか?こういうのって高いんじゃ?」
「言っただろう?君はこれを手に入れる。僕は成長した君を見る。誰も損をしない相互利益関係だと思うよ」
「あ、ありがとうございます」
「さっそく覚えさせてあげよう。スキル結晶を握り込むんだ」
ちょっ!俺にスキル結晶を握らせてそれを両手で包み込んで目を閉じて…って男にこんな事
じゃなくて俺の魂の限界が!…あれ、大丈夫だった?
何とか耐え切ってくれたのか…?
ああそうか、魂の割れ目に流し込んだわけじゃないのか
そんな芸当が出来るのは神様くらいだよな、うん
「ふぅ。これで覚えたはずだけどどうかな?」
「お、覚えました」
「最後にもうひとつ。魔法に呪文は要らない」
「え?でもさっき使う時に」
「呪文はイメージを具体化する助けにはなるが、それが足枷にもなるんだ。イメージが固まればそこで成長が止まってしまう」
「そうなんですか…」
「これは僕の研究テーマでね。必要なのは体系化された呪文や現象ではなく魔力量と指向性。もっと言えば根源へと至る意志だ。スキルはほんの切っ掛けに過ぎない」
「な、なるほど?」
「君は僕の研究にとってこの上ない協力者となり得る。是非ともその無垢なままの君で成長して欲しい」
「は、はあ」
「スキルという枠組みから解き放たれた本当の魔法というものをいつか見てみたいものだ」
「あの、魔石に呪文が要らないのは違う話なんですか?」
「あれは陣を刻み込んで効果を発揮しているんだ。うちとは違う分野の研究なんだよ」
「別物だったのか…」
「さ、次からは堂々と表から入ってくるといい」
退出を促されてしまった
機嫌でも損ねたか?
…ギルドに戻るか
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