第18話 聖職者
教会に帰ると礼拝者が居た
邪魔しちゃ悪いので、部屋でコロちゃんと戯れてよう
「ハジメさん居ますか〜?」
「うん、ただいま〜」
「おかえりなさい〜」
ただいま
おかえり
心が温まるな〜
ニヤニヤしながらドアを開ける
「ギルドはどうでしたか〜?」
「現状の説明はしたけど、まだ冒険者登録はしてないんだ」
「何かあったんですか〜?」
「先に所属地を登録しておきたいんだよ」
「あ〜すっかり忘れてましたね〜」
「夜も朝もドタバタしてたからね」
「でも出来るんでしょうか〜?」
「とりあえず試せるかな?」
「それでは教会の方へ〜」
しまった、ノーラには二度手間だったな
もう少し思慮深く動けるようにならないと
「所属地をリスガーにしてもいいかな?」
「大歓迎です〜!」
「良かった!これで大手を振って歩ける!」
「必要になる場面はそうそうないですけどね〜」
「そうなんだ」
「何かあった時に、どこに連絡すればいいかに使われてます〜」
「緊急連絡先みたいなもんか」
「そうですね〜」
「俺に何かあったら、この街に連絡が入るんだ」
「ハジメさんの場合は、最終的にはわたしですね〜そうならないようにしてくださいね〜」
「充分に気をつけるよ」
出身地は産まれた時から表示されているらしい
別の場所に登録し直す時、登録先が既に所属地になっている人と一緒に、近くの教会で登録する、と
所属地=出身地で一生が終わる人も居るんだろうな
…なんかこれだと、年齢=童貞みたいな感じだな
あ…いやいや俺は転生じゃなくて、転移だ転移!
「それではこの魔石に触れてください〜」
「これでいいかな」
「暫くそのままで〜」
ぞくっとした感覚がある
ステータスを覗かれるのと似た感じだな
「終わりました〜」
「ステータスオープン」
「成功です〜!これで名実共にこの街の住人ですね〜!」
「改めて、よろしくね」
「こちらこそです〜!」
これで堂々と、俺の居場所はこの街だと言えるんだな…
あ、確認するの忘れてた!
「それで、旅に出るまでの間、もう暫く厄介になっていいかな?」
「もともとその予定でしたし〜旅に出てからでも、いつでも帰ってきてください〜」
「ほんとありがとね」
昨日は流れで泊めてくれたけど、それだってステータスの事情があったからだ
元気になった今もここに寝泊まりするつもりで勝手にいたけど、助かった
「お昼はどうしますか〜?」
「うん、お願い」
「今日はちゃんとしたものを出しますから〜」
「楽しみにしてる」
「お部屋に持っていきますね〜」
「せっかくだし一緒に食べようよ」
「じ、実は先に食べちゃいまして〜」
「ちょっと待って」
「なんですか〜?」
「本当に食べてる?」
どうも怪しい
他の場面ではそう感じないのに、一緒の食事だけは避けられてるんじゃないか?
「食べてますよ〜」
「嘘じゃない?」
どうか、思い過ごしであってくれ
「お、お腹も鳴ってないでしょ〜?」
「じゃあ何を食べたの?」
「ハジメさんと同じですよ〜」
「台所どこ?」
「めっ!ですよ〜!」
「何が?」
「台所は聖域なのです〜」
「俺もたまには料理したくなるかも」
「ではその時だけ特別に〜」
嫌な予感がする
とんでもない失敗をしてしまったような
「お金、渡したよね」
「預かりました〜」
「滞在費と修理代って言ったっけ」
「早く稼がないと修理代が目減りしちゃいますよ〜?」
そんな風に笑わないでくれ
ああもう自分が恥ずかしい
「それ、なし」
「お返しします〜?」
「1/3ずつ、俺の滞在費、修理代の積立、残りは寄付だ」
「なるほど〜」
「修理代と普通の寄付は別扱いなんだよね?俺がハッキリと修理代って言葉を使っちゃったから…」
「なんでわかっちゃったんですか〜?」
「ギルドでの会話と、食事についての会話の違和感でわかった」
「もう〜どんなお話してたんですか〜」
「言質をとったり、伝え方だったり、信用って難しいんだな〜って」
「なんとなく、わかります〜」
「教会そのものへの寄付ではないから、自分に使うわけにはいかなかった。泥棒になるから。で、合ってる?」
「それならわかります〜」
俺の馬鹿、ほんっと馬鹿!
この考えなしのろくでなし!
もっと言動に気をつけろ!
「滞在費を受け取っても、それを全部俺に使おうとしたんだよね?」
「ここは宿ではないですから〜」
「俺の落ち度なのに、ごめん!今も責めるような問い質し方してごめん!ほんとごめん!」
「こちらこそ気を使わせてごめんなさい〜」
「それで…教会のお金の事って聞いても大丈夫かな?無理にとは言わないから」
「神様に恥じるような事はしてないですよ〜」
別にそこは疑ってないんだけどな…
ストレートに返さないって事はまだ何かあるな
「なら聞かせてくれる?こっちの事は常識も含めて知らない事ばかりなんだ」
「うちはみなさんの信仰と寄付で成り立っています〜」
「そこは何となくわかる」
「お金のない誰かが病気になったりで、困っていたらそこから渡すんです〜」
「お金を?」
「ですよ〜」
一種の保険みたいなものか
「それって、教会でお金を増やしたりしないの?」
「基本的に商売は〜」
「…そうか」
「わたしは聖職者なので〜」
「わたしは?教会の一般的な話じゃなくて?」
「同じ事をしている所もあるんじゃないでしょうか〜?」
「それで今まで、それに備えて切り詰めてたの?」
「そういう事ですね〜」
「でも、ご飯はちゃんと食べなきゃだめだよ」
「わかっては居るんですが〜」
「だーめ。少なくとも俺が寄付する間、同じものを食べようよ」
「でも〜」
「じゃあこうしよう。せめて俺が居る間は俺の滞在費で三人分作って。結局は安く上がるでしょ?まあ稼いで来ないと話にならないんだけど」
「…もうこうなったら、期待して待ちます〜」
にこにこ、パタパタ
これはいいプレッシャーだな
ぷるぷる
「ギルドで登録が終わったら、ちゃんと稼いでくるから」
「わたしに連絡が来るような事はしないでくださいね〜?」
「大丈夫、無理はしない。ここに帰ってくる時は、ちゃんとこの口でただいまって言う。だから、あったかいご飯を作って待っててくれる?時間が合う時は、ちゃんと一緒に食べようよ」
「わ、わたしは聖職者です〜!」
前からでもわかるくらい、尻尾がパタパタしてる
赤くなった頬を両手で押さえてうっとりと…
やっぱりおいしいご飯は、誰だって嬉しいよな
「食堂に用意してきます〜!」
パタパタ
張り切ってるな〜!
その後、食事を二人で分けた
おいしかった
切り詰めてこれなら、普通の予算で本気ならどうなるんだろう
楽しみだ
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