第15話 女神の置土産

「ハジメさん〜!ハジメさん〜!」

「ーーーっ!はぁっ、はぁっ」


 月明かりの中、ノーラが俺の顔を覗き込んで必死に叫んでいた

 起こしたくても下手に揺らせないと、呼びかけるしかなかったのだろう

 体を起こすのを手伝って、背中をさすってくれている


「具合が悪いのですか〜!?大丈夫ですか〜!?」

「…ノート」

「ノート、ですか〜?」

「ノートが!」


 ベッドから慌てて飛び降りる

 小さな本棚を覗き込むも、そこには何もない


「頼む、ノートを探してくれ!この部屋のどこかにあるはずなんだ!」

「つ、机とクローゼットくらいしか他に物を仕舞えるところはないですよ〜!」

「クローゼットを頼む!俺は机を!」

「は、はい〜!」


 ノーラに頼んでクローゼットの中を探してもらう

 俺は本命の机の上と引き出しを月明かりの中、必死に探す


「机には何もない…くそっ!」

「クローゼットもハジメさんの服しかないです〜あ、洗っておきますね〜だから今夜はもう」

「どこだ、どこにある…夢の前後で違う事は………」


 考えろ考えろ考えろ!

 さすがにノーヒントじゃないはずだ!


 『それではスキルを差し上げますので、目が覚めたら確認してくださいね!』


「っ!ステータスオープン!!!」


===

 ハジメ 人 18 -

 状態:女神の加護(保護)

 Lv 0 Exp 0

 HP 194/194

 MP 115/165

 SP 186/178 (5%↑ 体術Lv1)

 ATK 189 (5%↑ 体術Lv1)

 DEF 181

 MATK 143

 MDEF 138

 SPD 187 (5%↑ 体術Lv1)

 STR 102

 VIT 104

 MGC 100

 AGI 103

 スキル:体術Lv1、簒奪者Lv1、収納魔法Lv1、女神の加護Lv1、最適化、存在強化、ステータス改、基礎魔法、パーティLv1

===


「ス、ステータスが…って、女神様のご加護です〜〜〜!?」

「…収納魔法か!」


 使いたいと意識した瞬間、穴が開き始める

 余計な手間が省けて都合が良い!


「えぇ〜!?」

「何か入ってる…」

「ノート…です〜?」

「明かりをつけてくれ!」

「は、はい〜!光よ〜!」


 ノーラが慌てて光の球を作り、部屋が明るくなる


「開くぞ…」


**********


ハジメ様へ


 これを読んでいるという事は、スキルの受け渡しが上手くいっているという事だと思います!

 まず、お渡ししたスキルは確認してもらえましたか?

 なーんて、使えているからこそ、これが読めているんですよね!

 なくなったり盗られたりしないように、安全な場所に入れておきました!えっへん!


 それでは本題です。

 このノートは、女神ちゃん(仮)特製の【お役立ちノート】です!わ〜ぱちぱち〜

 何かを知りたくなった時、このノートを開くとなんとそこには解説が!

 …とはいかないんです。ごめんなさい。


 でも習得したスキルのスキルLvに応じてだったり、女神ちゃん(仮)特製スキル「ステータス改」で調べたものは解説が載ります!

 すごい!高性能!女神ちゃん(仮)がんばった!

 本当は「ステータス改」に効果を統合したかったんですけど、そこは力が及びませんでした!たはー

 でもでも!目の前に現物がなくても過去に調べた解説は残りますから!これでいつでも復習できますから!

 きっと役立ててくださいね!

 …役に、立つと思いますよ?



 多分、ハジメ様にスキルと加護をお渡ししたあたりで、私の力はガクンと減っていると思います。

 もしかしたら変な消え方をしてしまったかもしれませんが、安心してください。

 女神ちゃん(仮)は永遠にハジメ様の心の中で生き続け…わ〜!ノートを破り捨てないでください〜!

 えー、おほん。

 死んだり、消滅したわけではないので、心配しないでください!

 力を蓄える間、ちょーっと眠りに就いてるだけなのです!


 ハジメ様はなーんにも心配しないで、世界を思いっきり楽しんでください!

 友達をいーっぱい作って、旅をして、疲れたら休んで、また大冒険です!

 この世界でもそれができます!世界ってそういう風にできているんです!

 漕ぎ出せー!逆風や荒波なんかに負けるなー!えい、えい、おー!

 あ、基礎魔法とパーティLv1のスキルはおまけですー!



 最後に。

 馴れ馴れしい態度で不快にさせていたらごめんなさい。

 ハジメ様は私のことを分からなかったかと思いますが、私はずっとハジメ様のことを見ていました!

 ストーカーじゃないですよ!?四六時中ではないですし、プライバシーは尊重していました!

 いつの日かお会いして、色々とお話ししたいなーって思っていました。

 転移なんて事態になって、心配すると同時に少しだけ…ほんの少しだけ、やっと会える!って思いました。

 嘘ですごめんなさい、本当はすっごく楽しみになりました。

 だから…またいつか、お話できる日が来ることを祈っています。


                                貴方の女神ちゃん(仮)より


 追伸

 そうそう、これを作るのに時間をかけたりしていませんから!

 加護をお渡しする時、残った力で一緒に作ったんです!

 この程度の芸当、女神ちゃん(仮)にかかれば一瞬でポンッ!なのです!

 ハジメ様を探すのは本当に全力だったので、怒らないでくださいね?


**********






 気が付いたらベッドに座って放心していた


 ぷるぷる


 いつの間にかコロちゃんが膝の上に乗っていた


 なでなで

 ぷるぷる


「大丈夫ですか〜?」


 混乱しているだろうに、ノーラが俺を気遣ってくれる


「体の問題はとりあえず解決したみたいだ。暫くすれば気持ちも落ち着くと思う」

「それで〜…あの〜…」

「何から聞きたい?」

「女神様は〜…」

「読んだんだろ?」

「はい〜…」

「探し出す。そんでもって一発ブン殴る」

「えぇ〜!?」


 こんな、人間ひとりを助ける為に…


「ま、まずはお話からですよ〜」

「聖職者の前で言うことじゃなかったな」

「あはは〜」

「まだ聞きたいこと、あるんだろ?」

「…お知り合い、だったんですか〜?」

「正直、わからない。記憶喪失が本当になったみたいだ」

「本当になった、ですか~?」

「多分、最初は記憶があったんだ」


 何かから逃げていたらしいこと

 気付いたら転移していたこと

 コロちゃんとの出会い

 アバッシ村

 ギルド

 夢

 全部話した


「本当は知っていたのかどうかも、今はわからない。本当に、ここまでしてもらえる関係だったのか」

「それで、うなされていたんですね〜…」

「疑わないのか?」

「ステータスと、何よりあの取り乱し方を見てますから〜」

「あー、夜中に騒いで悪かったよ」

「大丈夫ですよ〜それに仕方ないと思います〜」

「ありがとな」


 ああ、頭を下げてばかりだ

 俺の頭くらいいくらでも下げるが、下げる必要がある事態はいただけない


 でも、だいぶ落ち着いてきたな


「もういいですよ〜今夜は休んでください〜」

「いいの?」

「急ぎのお話はあとひとつだけ〜」

「なに?」

「お役立ちノートですけど〜」

「うん」

「それは外には出さないでください〜」

「まずいかな?」

「女神様の性格が〜…」

「ノーラと仲良くなれそうだね」

「畏れ多いです〜!」

「気さくでいい人…女神様なんだけどな」

「それが〜、教義や教典で伝えられるものと違うんです〜」

「なるほど」

「それに〜調べられたら〜アーティファクトだってバレちゃいます〜」

「物盗りに注意ってとこか」

「女神様のご加護もそうですけど〜ノートが教会の目に留まってもややこしいです〜」

「おい聖職者」

「あはは〜それではおやすみなさい〜」

「おやすみ」


 まだ俺も聞きたい事があったし、彼女に訊かれなかった事もあるだろう

 あとで、時間を作ってゆっくり話そう


 貰ったスキルを確認すると、おまけ以外は多分、ぶっ壊れスキルだ

 お役立ちノートは現状、ステータス改とほぼ同じ内容だったが、これから充実していくんだろう

 まるでコンプ要素の図鑑だな

 違うところは、この世界の平均的な一般人のLvとステータスが書かれていたところだ

 きっと必要になると思ったから記しておいてくれたんだろう

 これを参考に、ステータスの見た目を書き換えて普通の人のふりをしておこう


 最後に、ノートと財布とスマホを異空間に放り込んだ


 今夜はもうコロちゃんと寝床に入るか


ーーー

体術

  体を効率よく扱う技術

  SP、ATK、SPD、回避率に補正

   増加率(スキルLv×5)%


簒奪者

  世界へと還るはずの魂を奪う

  取得経験値が相手自身の持つ経験値の値となる

 - Lv1

  倒した敵のステータスと熟練度を取り込む

   取得率1/100


収納魔法

  魔力を使って異空間に干渉する

  干渉と維持に魔力を消費する

 - Lv1

  開く MP50

  維持 MP50


女神の加護

  過保護なまでの女神の愛情

  肉体と本来の魂の間に介在する

 - Lv1

  スキル【最適化】

  スキル【存在強化】

  スキル【ステータス改】


最適化

  女神ちゃん(仮)特製保護スキル

 - Lv1(MAX)

  リソースで魂の修復をする際に馴染む程度に取り込む

  余剰分は熟練度にまわされる


存在強化

  女神ちゃん(仮)特製ドーピングスキル

 - Lv1(MAX)

  各ステータスに+100


ステータス改

  女神ちゃん(仮)特製ステータススキル

 - Lv1(MAX)

  ステータス、ステータスオープンのスキルと同じことができる

  外部からの魔力干渉に、Lv1以上の魂であるかのように振る舞う

  ステータスの見た目だけは自由に書き換えられる

  ステータス閲覧のスキルに完全に抵抗できる

  敵や他人のステータス、スキルの鑑定をこっそり実行できる


基礎魔法

  一般に生活魔法と呼ばれる基礎的な魔法

 - Lv1(MAX)

  着火 MP10

   火を着ける

  湧水 MP10

   水を出す

  送風 MP10

   風を送る

  光球 MP10

   明かりをつける

  清浄 MP10

   自分の体を綺麗にする


パーティ

  取得経験値を仲間と分配できる

  ステータスのスキルで当事者だけがメンバーを確認できる

  勧誘と維持に人数×1のMP消費

  パーティの最大人数はスキルLv+1

 - Lv1

  有効距離100m

ーーー

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