第14話 夢の中で
「……ますか……………ま…………様……メ様…!」
あれ…呼ばれてる…?
「ハジメ様!」
「はいっ!」
「よかった…やっと繋がった…」
「あれ?ここはどこ?貴女はだあれ?」
なんか目の前に女の人が…浮いてる?
うわっ、俺も浮いてる!?
「ここはハジメ様の夢の中です!私は…この世界を作った存在の一端です」
「えーっと、神様?」
「のようなものですね!」
「あ、大和一といいます」
「はい、存じていますよ、ハジメ様!私の名前は特にありません。ただ【女神】と呼ばれています!」
「やっぱり神様じゃないですか」
「…人の身にしてみれば、似たようなものでしょうか?」
「名も無き女神って、なんだか凄そうですね。根源的と言うか」
「この機会に名づけてくださいませんか!?」
「え、俺がですか?」
「私だって誰かに名前で呼ばれてみたいです…」
「えーっと…すぐには思いつかないので、時間をもらえませんか?」
「はい、楽しみにしていますね!」
俺の手をとってぶんぶん握手、握手
お、おぉ…なんか食いつきがいいな
「こうして話しているのは、寝る前に神様に縋ったからでしょうか?」
「はい!神域に近い場所だったので、ハジメさんの助けを求める声が届きました!」
「それで、これからの使命とかを教えて貰えるって事でしょうか?俺はここで何をすればいいんですか?」
「それは特にありません…実は転移は、こちら側の世界で発生した事故の影響でして…」
「事故?」
「そしてその影響で、魂が傷ついてしまいました」
「えー…」
なんかやばそうな
申し訳無さそうな感じが俺の嫌な予感を煽ってるぞこれ
「痛みや疲労を感じ難いのは、危険信号を無視し始めるレベルの事態だからです。魂に引っ張られて、この半日で徐々に体が弱体化しています」
「心当たりはあります」
「精神や記憶にも何らかの影響が出ているかもしれません」
確かに、こっちに来てから何だか気分がフワフワしているというか、地に足が着いてない気がする…
「…恐いだとか、もう帰りたいとか、言わないんですか?」
「目の前に危険があればさすがに怖いですけど…特に未練は…しいていえば漫画とか…?」
「未練…記憶はどうですか?もとの世界の事は覚えていますか?」
「来る直前は襲われてて…その前は…あれ?」
こっちに来る直前は、刺されそうな場面で…
誰に?
えーっと、どっかを歩いてて…なんで?
そうだ、全力でぶん殴りたいような相手から逃げてたんだ
じゃあ、その逃げた相手から追い詰められて、刺されそうになってたのか?
ん?刺してくるような相手から歩いて逃げてた?
「本当にごめんなさい!」
「ちょ、頭を上げてください!転移しなかったら多分、刺されて死んでました!」
「事故がなければ、刺されそうになるまで追い詰められる事もなかったと思います…」
「よく覚えてないですし、事故だったんでしょ?」
「事故の影響でこちらに転移し始めて…とっさに加護をしようとしましたが、終わる前に見失ってしまったんです!」
「女神様は何も悪くないじゃないですか!助けようとしてくれたんだし!」
「魔力が感じられなかったので、どこに居るのかもわかりませんでした…」
「教会に来てラッキーだったんですね」
「本当にそうなんです…間に合って…良かった…」
「えーっと、ご心配をおかけしました」
「…色々と説明をしたりしたいのですが、よろしいでしょうか?」
今度は懇願の表情だ
嬉しそうにしたりシュンとしたり、表情がころころ変わる人…女神様だなー
でもただの人間にこれだけ親身になってくれるって、神様ってすごいんだな
「お願いします」
「まず、産まれたての赤ちゃんの魂は無垢なので世界への適応力が高く、いずれLv1になります!」
「らしいですね」
「ハジメ様の場合はそもそも魂の崩壊の危機なので、心身は魂に引っ張られてどんどん衰弱していますし、そうでなくても子供の魂ではないのでLv1になるかどうかもあやしいのです」
なんかややこしい事になってきたか?
「そこでまずは魂の崩壊を止める応急処置として、スキルを接着剤にします!」
「接着剤…」
魂と接着剤って単語が並ぶ日が来るとは
「イメージとしては、魂の割れ目にスキルを流し込むようなものです。相性のいい、よく馴染むスキルである必要があります。これらのスキルはハジメ様の魂によく馴染みますよ!それこそ混じり合って溶け込むくらいに!でもそれも満遍なく広げるので強度は低いままです」
薄めたパテとかコンクリみたいだな
いやそれじゃ固まらないか
「スキルって魂の接着剤になるんですか…」
「Lvやスキルとは魂の余剰分、成長と共に肥大化し、死後に世界に還元されるものの一つです!そもそもの性質が魂のようなものなんです!」
「じゃあそれで崩壊が止まるとして、あとは安静にしていれば?」
「いえ、あくまで応急処置です。強度も低いので、放っておくと、いつどうなるか分からないんです。なので、積極的に治していきましょう!」
「具体的には?」
「魔物を倒します!つまり他のリソースを取り込みます!」
「でも俺、経験値が入らなかったんですけど…」
コロちゃんと協力してグラスウルフを倒したし、ゴブリンに至っては単独で一匹倒したはずだ
「本来はLv1になった時点で魂がこの世界のシステムに馴染み、経験値としてリソースが移動します。そこで!スキルの出番です!」
「ここでもスキルですか」
「さっき話した、よく馴染むスキルの一つが凄いんです!経験値効率の上昇どころか相手のリソースをごっそり持っていく凄いヤツなんです!」
「チートだ…」
「ですが…できればスライムは積極的には狩らないでいただけると…」
「一応、理由をうかがっても?」
「えーっと…確かに魔物なんですが…理由は話せば長くなると言うか、下手をすればSAN値直葬と言うか…」
「おーけーなにも聞きません」
この女神様まさか邪神じゃないよな…?
「私、邪神じゃないです!ひどいです!ハジメ様の為を思って言っているのに!」
心を読まれた!?
でもそのリソースってのを取り込んでいいんですか?さっき世界に還元されるって…
「そもそもリソースは増減します。それに砂漠の砂を一掴み飲み込んだところで、世界に影響はありますか?…お腹は壊しそうですが」
なるほど…実際にやったらお腹を壊すじゃ済まなそうだけど、例えとしてはわかりました
「どうやら読めるようだな」
「ハジメ様、逆転してますよ…?」
これは失礼を
「…というところで、魔物をやっつけてそのリソースで魂の修復をしましょう!」
「そもそもさくっと魂を修復して貰うってのは…」
「ごめんなさい、ただでさえゆっくり馴染ませていかないとだめな上に、強引にスキルをある程度流し込んだらもうそれで限界なんです…」
「まあ、楽をしようとするな、と」
「それではスキルを差し上げますので、目が覚めたら確認してくださいね!」
「そうだ、テイムってスキルはありますか?」
「作れますけど、すぐには無理です。ごめんなさい…」
「いいですいいです!俺にはもうスライムのコロちゃんが居ますから!」
「可愛がってあげてくださいね!」
「もちろん!で、スキルを貰えば俺は魔物を狩れるようになるんですか?」
「よくぞ聞いてくれました!そんなハジメ様には【女神の加護】をおまけしちゃいます!」
「おお!」
「んん〜…えいっ!」
お、なんかポカポカしてきた
体も軽くなってダルさが抜け…いや、力が漲ってきた?
…今まで弱ってたんだなぁ
「いや〜私、がんばりましたよ!具体的には残った力を一気に使いすぎちゃってちょっともうこれからどうしようというレベルでてへぺろ」
「いやいやいやいや!てへぺろっておい!」
思わず女神様を相手にツッコミ入れちゃったよ!
手はすり抜けたけどな!
「さあ、お征きなさい!選ばれし者よ!」
…すり抜けた?
さっき握手したよな?
「おーい、女神様?」
「あまねく世界をその目に!
女神様の顔色が悪く…
「女神様は大丈夫なんだろうな?」
こういうノリ、お好きでしたものね?
…なんか薄くなってないか?
「過大なものは受け取れないぞ!?」
触れない…
これから心躍る大冒険です!
「聞けってば!」
…聞こえてすらいない?
あとのこ……お役…ちノート…
「ふざけるな!おい!返事しろってば!名前だってまだつけてないんだぞ!」
不吉な消え方するんじゃねえ!
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