第4話 第五種接近遭遇

 グルルルルゥ…


「…コロちゃん、お友達?」


 腕の中のコロちゃんがぷるぷる震える

 どうも違うっぽいなー


 なんか、涎を垂らした野犬?狼?みたいなのが、こっちを睨んで唸ってる

 これは友好的な感じがしない

 が、この天才テイマーにかかれば!


「ほーらほらほら、君もお友達になるかーい?」


 怖くないよー

 おいでおいでー


「お手はまだ怖…早いから、伏せ!」


 グルルルルゥ…ガウッ!


「うわ!」


 ぴょいん!びたーん!

 キャインッ!


 あああ、わんころが襲いかかってきたところにコロちゃんが!

 コロちゃんが居なかったら、冗談抜きに危なかった!


 そしてなんか両者睨み合って、お互いの隙を伺ってるような気がする

 基本的に人間は動物に勝てると思わない方がいいらしいけど、これは放っておいたらまずいことになるんじゃないか?


 一合、二合、互いの攻撃が交差する…ってコロちゃんTUEEE!

 でも押されてないか!?さすがにスライムは弱いってのがお約束だし!?

 どうする、割って入れるレベルの攻防じゃないぞこれ!

 あ、コロちゃんが相手の頭にまとわりついた!

 今だ!

 悪く思うなよわんころ!


「ふんっ!」


 思いっきり腹を蹴り上げる!


「いってぇー!」


 なんだこの硬さ!

 どんな筋肉してんだよ!鱗レベルの硬さの毛並みかもしれないけど!

 なんかもう全ッ然効いてない!


 何ここ魔界か何か!?

 一見穏やかに見えて、モンスターのLvがえらいことになってるのか!?


 でもとにかく、わんころが弱ってきてる!

 いいぞコロちゃん、そのままやっつけろ!

 と思ったら頭を振り回して地面にビタンビタン、捨て身の攻撃でコロちゃんをひっぺがした!

 ああ!コロちゃん!

 わんころめ、許さない!

 眼球ってのは共通の弱点だ…ここなら効くはず!

 フラフラしてる今のうちに!蹴る!恐いけど蹴る!


 キャインッ!


 そして怯んだ隙に距離をとる!

 入れ替わるようにしてコロちゃんが体当たり!

 吹っ飛んだわんころは埋まってた岩に頭でもぶつけたのか、鈍い音がする


 どうやらわんころは満身創痍、もう動く気力もなさそうだ

 じっと睨み合う俺達とわんころ…


 アォーーーーンッ!


 最期に一鳴きして、わんころは息絶えた


 悪いなわんころ、俺のテイム熟練度が低かったばかりに…

 お前の最期、立派だったよ

 相手を讃えてから事切れるなんて、誇り高い戦士だったんだな


「コロちゃん、無事か?助かったよ、ほんとにありがとうな」


 抱き上げると、腕の中で弱々しくぷるぷる怯えてる

 そうだよな、あれだけの死闘を繰り広げたんだもんな

 今はゆっくり休んでくれ


 アォーーーーンッ!


 あれ、さっきので倒れたんじゃ…?

 いや、そこに倒れてるし…


 遠吠えで仲間を呼んだのか!

 ヤバイ、まだだいぶ距離はあるけど、これから増えるんじゃないか?

 これダメなヤツだ!


 三十六計逃げるに如かず

 道場で教わった最強の護身術は、まず敵対しないこと!

 それがダメなら、逃げること!

 現代社会で正当防衛なんてまず成立しないから、戦うのは最後の手段!

 最後のはここじゃ関係ないだろうけど、どちらにしろ今の俺じゃ魔界の魔物には敵わない!


「逃げるよコロちゃん!しっかりつかまって!」


 とにかくあそこに逃げこもう!

 きっと魔王城手前の前線基地とかだ、絶対に助けてくれる!

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