第13話博物館デート
多田さんは
以前 ぼくがある女の子と
行ったことのある場所を
知っているからなのか
動物の剥製を見ることになった。
やはり 剥製の方が
ぼくより 目が輝いている。
ぼくも 死んだあと
剥製にしてもらえば
目が輝くのだろうか。
まぁ ぼくが博物館に展示されていたら
気持ち悪くて 誰も来ないだろう。
死んだあとも
他人に迷惑をかけてしまうのだろう。
生きているだけで
迷惑防止条例に
違反しているのかもしれない。
あぁ 多田さんと一緒にいるときは
基本的に
卑屈があまり出なかったのに…。
また
卑屈界のプリンスになってしまう。
まぁ 今は
アンバサダーぐらいだろう。
こんな事を思っていると
多田さんが急に
手を繋いできた。
指と指が絡まる
いわゆるカップル繋ぎだ。
ぼくは背が高いため
手も大きく 指も太い。
そのため 彼女の手を
包むようなかたちになった。
さすがに 拒否はしなかった。
ぼくは 基本的に
去る者は追わず 来る者は拒まずという
考えだ。
まぁ この考えで
ボッチになっているところとあるが
別に良い。
まぁ 本当のところは
少し 友達がほしいとは思う。
こんな事を思っていると
彼女が ぼくを引っ張った。
駅で引っ張った時くらいの
ちょうど良い強さであった。
ぼくは 体だけ先に引っ張られ
足があとから 追い付く感じになった。
多田さんは 引っ張ったあと
急に止まったため
ぼくは多田さんと
ぶつかりそうになった。
多田さんは
ぼくの腕につかまってきた。
いかにも カップルやりそうなことだ。
ぼくは 一瞬
ここまで やられると
もしかして
多田さんは
レンタル彼女なのではないかと思った。
レンタル彼女?!
ぼく 多田さんと初めて出会ったとき
レンタル彼氏始めましたという紙を
つけていたが
もしかして その時に
彼女は レンタル彼女を
やっていたのか…。
まぁ レンタル彼女なら
お金を請求されるはずだが…。
彼女は ぼくの彼女なのか
それとも レンタル彼女なのか…。
ぼくは この事が気になり
以前の辛い思い出どころではなかった。
以前に 女子に騙されたことがあるため
今度は騙されないようにしたい。
このような感情が出てきてから
彼女と手を繋いでいること
彼女がぼくの腕をつかんでいること
全てが怪しく思えてきた。
多田さんは展示物の動物を指して
色々言っている。
ぼくに対して 話しているのだが
ぼくは 色々なことを考えているため
反応ができなかった。
すると 急に 彼女が
ぼくと手を繋ぐのをやめた。
そのあと 彼女の手が
ぼくの頬の近くにきた。
ぼくは
ビンタをされるのかもしれないと思い、
目を閉じた。
すると 彼女は
手でぼくの両方の頬をつかみ
ぼくをブサイクな顔にした。
うっ…
頑張って
卑屈が出ないよう
今は 抑えた。
卑屈を出すとしたら
ぼくは もともと ブサイクだから
今ので 顔が整ったという感じだろう。
彼女はぼくの頬をつかんだまま
こう言った。
(多田)「口があるんだから
もう少し リアクションしてよ。
剥製とデートしてる
気分なんだけど。
卑っくん 頭が良いから
デート中も
色々考えているのかもしれないけど
デート中は そういうのは無しね。
もう少し
単純にリアクションしてみて!
卑っくんは 剥製を見ていて
どんなことを思う?」
(卑田)「う~ん
剥製の目は
ぼくより輝いているとか思うよ。
ぼくよりも 剥製の方が
生きているかのような
目をしているとか思う。」
(多田)「面白いこと 思っているね。
卑っくん!
私は卑っくんの彼女なんだから
そういう事でも なんでも
言っていいんだよ?」
(卑田)「ありがとね。」
ぼくは 恋人じゃなくても
とにかく
思ったことを言い合えるような
関係の人を求めていたのだろう。
まぁ 思ったこと
全て言うわけではないがね。
全て言っていたら
世の中大変なことになっている。
みんな ある程度は
言わないで我慢する。
ぼくは 我慢を
しすぎていたのかもしれない。
彼女のその言葉とあとは
色々剥製を見て
お互い感想など思ったことを
言うことができた。
次に彼女は
屋上に行きたいと言った。
ぼくは 階段で行こうと言った。
すると 多田さんは
(多田)「私 一応
女の子だから
そういう疲れるのは…」
じゃあ エレベーターにしようと
ぼくが言おうとしたとき
彼女がこう言った。
(多田)「卑っくんが
自分の意見を言うの
珍しいし
やっぱり 階段でいいよ。
でも 帰りはエレベーターで
下がるでいいよね?」
(卑田)「あ…ありがと」
ぼくは 多田さんの優しさに
最初は 疑いを持っていたが
今では
全く疑いを持たなくなった。
ぼくと 茉優実は
階段で屋上へと向かった。
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