第4話⑤

「なるほど。それで懸賞金だしてまで情報を探していたのか。」

ここは綿貫邸の応接室。すなわち、綿貫金剛の実家だ。

貧乏人の豊水にはブラジル並みに遠い場所だ。それは友人の少女も同様で静保は興味に目を輝かせ落ち着きがなかった。一方恋は成金じみた豪華さには一切目をくれず、落ち着き払っていた。

「話をまとめると、こうなるわね。まず……」

ある夜、一瞬空を青色に戻すほどの光の柱が発生。光の落ちた場所と思われる、火事が起きた廃倉庫で恋はスライムに襲われる。その時黒い欠片を入手し、熱を発する剣を発見。

恋と金剛が結託し、情報収集を開始する。

情報を聞きつけた貧乏人の豊水が運転手を消化するスライムと遭遇。スライムは逃げ、豊水が情報を金剛に提供した。

ただし、当然豊水は魔王化現象とついでに車に跳ねられたことは隠している。コレについては関わらせるのは危険だと直感していた。

「これで出来ることは話しましたわね。金属も……人間も、いとも簡単に溶かして食う怪物。」

金剛はため息をついた。

「最初はたんなる興味本位でしたけど、こうなると遊んでいられないですわね。内から死人がでた以上警察への連絡も必要ね。彼の遺族にも、いずれ真実を伝えなくちゃなりませんわ。」

「そうだな。といっても即座にお役所サンが動くとは思わないからな……やはりスライムを捕獲なりなんなりするべきだろうな。……ところで。」

豊水は恋に声をかけた。

「その黒い欠片というのを、見せてもらえないだろうか?」

魔王エピキュアの目は薄緑に輝いた。恋はこの男にあのスライムと同様の何かを感じ取った。

「いいわ。これよ。」

「どうも。どれどれ……!」


疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑

「お前が僕以外の魔王か。殺しに来たのか。」疑疑疑疑疑

「そうだぜ。お前も聴いたんだろう? 魔王は殺し合うことで力を奪い合うって。」

疑疑疑疑疑疑「ワニの中に入った!?」疑疑疑疑疑

「これが私の能力よ! いわばこのワニは戦車! この中にいる限り私に触れることもできないぜ!」疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑

疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑

疑疑疑疑疑疑「よぉし、王手だぜ。なにか言い残すことは?」

「……。魔王になって、楽で幸せに生きられると思ったけど、そんなことなかった。結局、壁があるんだな。ダメな奴は何やってもダメか。」疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑

疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑

疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑

これで終わったと思うなよ。僕の魔王の力を。せいぜい仮初めの勝利を疑わずに喜んでいろ。鰐女。疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑

疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑

疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑疑ハッ!」

「どうかしました?ぼうっとして。」

恋は豊水に言った。

「いや……。君は、これを持っても、何も?」

豊水は頭を手で抑えた。

「はい。変な感じだとは想いましたが。」

「ねぇねぇ何の話?どんな話?その黒いのがスライムとかに関係があったり? おーしーえーてー」

静保が食いついた!

「いや、なんでもないんだ。」

「だそうよ。そしてわたしもなんでもないわ。これはただの石よ。ブラックオニキスかなんかよ。」

「私なんかハブられてない? 寂しい……。」

「へこまないの。この後私達でスライム探しに行きましょう。そして死ぬ時は一緒に死にましょう。」

「急に重いよ!」

少女の会話を傍目に、豊水は黒い欠片に触れた際のフラッシュバックを考えた。

あれは魔王の記憶だ。おそらく豊水の魔王魂が反応し効果を発揮したのだろう。

この黒い欠片の発生源の少年は既に死んだようだが、何か策を講じているらしい。

そして大鰐を召喚する魔王。まだこの街の何処かに潜んでいるはずだ。倒さなければ。

「悪いんだが、この欠片……。」

「貸すわ。」

恋は謎めいた直感でこの男の特異性を感じ取っていた。無力な自分より核心に迫ることが出来るのはこの男のはずだ。

「感謝する。」

一方豊水もこの連城恋という少女に異常性を感じていた。彼女は魔王ではない。しかし魔王に関わる何かがある。単にスライムと接触したことだけが原因なのか?

「その代わり。なにかわかったことが少しでもあれば教えて下さいね。」

「ああ、わかった。約束する。」

「それでは、この辺で今日はお開きにいたしましょうか。」

金剛が締めくくった。

「警察への連絡などはワタクシの家のほうからさせて頂きますわ。お互い気をつけて行きましょう。必要ならいつでもワタクシの護衛をつかせますわ。」

「ありがとう、金剛さん。任せたわね。」

こうして一同は綿貫邸を後にした。


「……ふぅ。」

恋達が帰った後、金剛は自室に行きドアを開けた。

「やっほー。初めまして!」

「なっ!? 誰ですの!?」

金剛の自室のベッドに小さな小学生くらいの少女が腰掛けていた。

「私? 私は魔王スターチャイルドですっ☆

「まおう? 何を言って……」

混同は困惑する。この少女から発せられる恐ろしい気配に全身の細胞が危険信号を発するのがわかった。

「さっきも魔王の男に会ってたよ? ま、あれは随分無害なもんだけどね。普通はいきなり人知を超えた力を手に入れたら暴れるでしょ?欲望のままに奪って壊すでしょ?私だったらそうするねっ。」

金剛は動けない。

「きっとどこかのアホの魔王はこういう所を狙うだろうからね。予め巣を張っておこうと思ったのよね。」

魔王スターチャイルドはゆっくりと金剛に近づき、彼女を見上げ、両手を上げて、その顔を掴んだ。

「だっ誰か……たすけ」

「はい洗脳~っ☆」

スターチャイルドの手が光り、金剛は痙攣し倒れた。

「後はこのお姉さんをアンテナに洗脳をしておくかなぁ。一人ひとりするほどでも無いしね。」

魔王スターチャイルドは悠々と豪邸から去っていった。

「さぁ。次は魔王の仲間を増やそうかなっ。魔王ロンジェビティ、マレヴォレント、エピキュア……あと二人いると思うけど……とりあえず御しやすそうなおばあちゃんから狙っていこうかなー。」

邪悪なる少女は街の闇に消えていく……。

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