妹はいつも俺に罵倒を投げる

とけい

出会い

俺、桜岡 海叶には妹が一人いる。

妹は、成績優秀・才色兼備である。

だからといって、俺は妹と話したいとは思わない。

なぜなら、彼女(桜岡 くるみ)は本当の妹ではないからだ。

彼女、本名 峯内 くるみは俺の親父の再婚相手の娘だ。

初めてみた彼女に、俺は魅了されてしまった。

きっと、このことならうまくやっていけると俺は、思っていた。

あんな、出会いをするまでは─


親父が、再婚をすると俺に告げた時は1発親父を殴ろうとも思った。

母さんが亡くなってからまだ、1年しかたっていなかった。

だから俺は、親父はもう母さんを好きじゃないんだ。っと思った。

「親父は、もう母さんのこと好きじゃないのかよ?」

親父は、俺の目をみてはっきりと言った。

「好きだし、この先も母さんのことは嫌いにならない」

親父の表情は、いつにもまして真剣だった。

「じゃあ…なんで─」

親父は、ゆっくりと応えた。

「お前には、まだ母さんという存在が必要だからだよ」

それからは、沈黙で終わった。


その次の日に親父の再婚相手とその娘とで食事をすることになった。

タクシーで、予約しているレストランに向かった。

「はじめまして。あなたが…海叶君?」

その、声は母さんに似ていた。

けれど、その声の主は親父の再婚相手だった。

俺は、一目その人を見た瞬間になぜ、親父が再婚しようと思ったのかがなんとなく分かった。

「…はじめまして」

少し泣きそうになりながらその人をみた。

「立ち話もなんですから、入りましょう」

そして、銀のフォークやナイフがいくつも並んだ席に着いた。

「まずは、自己紹介から入りましょ。私の名前は峯内 百香。36歳で趣味は……何かあるかしら?ふふっ、ごめんなさいねぇ、こんなおばさんの自己紹介なんてつまらないわよね」

「そんなことないですよ!」

俺は、反射的に言葉が出てしまった。

百香さんは、微笑みながらありがとうと返してくれた。

そして、親父と百香さんが少し席をはなした。

その間、俺はとても気まずかった。

目の前にいる義理になる妹がいたからだ。

めちゃくちゃ気まずい…

なんか話したほうがいいのか?

よし、じゃあ─

「あの、何か趣味とかある?」

これは、話が盛り上がるはず。

「ない」即答だった。

────。会話終了。って、なんだよ!

普通『ピアノを少々』とか『バレーです。って、踊る方のですよ!』みたいに話が盛り上がるんじゃ──。

いやいや、さっきの質問が悪かったのかもしれない。

趣味がない人だっているしな。

よしっ!じゃあ───

「好き食べ物は?」

「ない」

「好きなスポーツは?」

「運動嫌い」

「んっ……じゃあ好きな歌手は?」

「……西野○ナ」

あっ、だめだ…俺はあんま歌聞かないんだった。

「へー。西野○ナ…好きなんだ!俺も、西野○ナ好きだよ!」

「ふぅーん。別にどうでもいい」

どうでもいい…

そうだよな…俺が、どの歌手が好きだろうとどうでもいいよな…

俺が、落ち込んでいる間にその日はあっという間に終わってしまった。

帰り際に彼女にメールアドレスを聞こうとしたら…

「あの、さすがにウザイんですけど。人の迷惑考えてください。言っときますけど、あなたのことこれから兄だなんて思いません。赤の他人として接しますから。では、さようなら」っという罵倒を浴びせられた。

がくりと肩の力が抜けてしまった。


そして、家族となった今でも妹とはあまり話していない。

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妹はいつも俺に罵倒を投げる とけい @aikachapy0821

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