枯れた死体が吐き出した蝶を追った僕は走馬燈を目撃し、再会を見届ける蝶と映写機の組み合わせが絶妙で、幻想的な表現に圧倒されました。ラストの、二匹の蝶が舞っているシーンは印象的でした。
幸せな刹那を夢見たいのなら、是非読んでください。いつのことだか、どこのことだか。不明なまま、幻燈が映し出されます。スクリーンの前に座った僕らは、スクロールして、映像を先に進め、あえてぼかされた言葉により喚起された想像力が、わたしたちの頭の中に想い想いの「美しい死の刹那」の上映を開始します。上映者は、蝶。わたしたちは誰もかれも、蝶に夢を見せられます。その飛翔がとても美しい、味わい深い短編です。
美しく儚い画が印象的な作品です。無数に舞う蝶たちと、それが映し出す思い出は、どちらも美しく夜空に浮かび上がっているようでした。作品のほとんどが情景描写に費やされていますが、だからこそ、ラストの語り手の言葉が、シンプルなそれであるのにとても心に残ります。蝶が描く優しい幻想が、しずかに心へ触れてくるような作品です。