外伝第24話 魔王討伐




 デッカイドーに凶報と吉報が飛び交った。


 まずは凶報。


 デッカイドー全土にて突如として発生した"急死事件"。

 各地にて突如として死亡する者が現れた。

 目撃者によると、普段通りに生活をしていたのにも関わらず、突然倒れてその場で死亡したという。

 街中を歩いていたら突然倒れるもの、食事中に机に倒れ伏すもの等々、状況に共通項は見当たらず、更には年齢・性別・生活区域・地位等もバラバラでまるで共通項も原因も分からない。


 そんな中で更に不気味な事実が発覚する。


 死亡した者の多くは、家族や集団の中で普通に生活をしていたのだが、一部身元不明の死体が見つかった。

 誰も知らない、誰も心当たりがない、住居やどこで働いているのか、どこで生きてきたのか、全く素性が分からない人間が散見されたのである。


 感染症、何かしらの外部からの攻撃、様々な憶測が飛び交い、人々の間で不安が流れる中で犠牲者の死体の調査の結果、恐るべき事実が発覚した。


 犠牲者の全ては共通して、実際に倒れた時間帯よりも遙か前から死亡していたのだ。

 つまり、彼らは"死んでいたにもかかわらず、普通に生活をしていた"のである。

 歩く死体……それらと暮らしていた、更に見知らぬ歩く死体が紛れ込んでいたという事実に人々は恐怖した。 


 更に、一般には伏せられていたが、国の中枢に位置する権力者の中にさえも、歩く死体は紛れ込んでいた。

 密かに国を支配しようとする目論見なのか?

 様々な憶測や不安があちこちでわき上がった。

 



 そして、吉報。

 それも、凶報を掻き消してしまうような特大の吉報。

 ……正確には、その凶報の不安そのものを取り除くような話。




 勇者達が、遂に魔王を討伐した。



 

 勇者達は死闘の末に魔王を討伐した。

 死体を操る"死の王"であり、無数のアンデッドを従えていた強大な魔物。

 その"死の王"の弱点を見つけ出し、ついには討ち滅ぼすに至ったのだ。


 魔王ハイベルンは密かに人間社会を乗っ取ろうとしていた。

 凶報、謎の歩く死体、それこそがハイベルンの世界征服の布石だったのである。

 つまり、歩く死体が突如として倒れたのは、ハイベルンが討伐された事を意味していたのである。


 勇者達は戦利品としてハイベルンの髑髏どくろの仮面と、魔王に仕えた"魔道化"テラの仮面を持ち帰り、魔王の危機が去ったことを英雄王に報告した。


 英雄王は国民達に大々的に宣言した。


 魔王は討ち滅ぼされた。世界から危機は去ったのだ。


 国民は大いに湧き、勇者達を祝福する。

 勇者達の祝勝会が盛大に開かれて、王都は連日お祭り騒ぎとなった。

 

 


 しかし、あくまでアンデッドを率いた魔王が倒れたに過ぎない。

 未だに世界には魔物が現れ、世界に完全な平和が訪れた訳ではない。


 世界を危機から救った勇者達は、これからも人々の平穏の為に、世界の守護者として戦い続ける。





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