第81話 恋する預言者
預言者。
デッカイドーにて、天の神の声を聞くことのできる唯一の人間。
その歴史は古く、長く国の方針決定に大きな影響をもたらしてきた。
一世代に一人しか存在せず、力は親から子へと継承されていく。
当代の預言者、シズ。
長く伸ばした純白の髪の華奢な少女。
シズは城内に設けられた私室の窓から、物憂げに外の景色を眺めた。
「はぁ……。」
シズは深い溜め息をつく。
かつては自由の効かない預言者という地位に憂いていたのだが今は違う。
預言者を抱える預言者一族の長老達は、長くその影響力の大きさを利用し私腹を肥やしてきた。預言者の預言を管理し、都合良く伝える事でデッカイドーの情勢にも大きな影響を与えて、それと同時に預言者を都合の良い人形として扱う為に様々な縛りや教育を施してきた。
そんな悪習は、とある事件から見直され、当代預言者シズの立ち位置は大きく変わった。
預言者を管理する長老達は、数々の悪行の証拠をあげられその立場を追われ、管理体制は大きく見直された。
シズも以前のような締め付けは無くなり、ある程度の自由は認められるようになった。
未だ国に大きな影響を及ぼし、かつての長老達のように悪用されかねない身の上の為、完全に自由とは行かないが、たとえば手続きを踏めば護衛付きでの外出なども認められるようになったのである。
城内も護衛の目の届く範囲内ではあるが自由に歩けるようになり、前は限られた時間しか見られなかった図書室の本も自由に読めるようになった。
以前と比べれば遙かに自由な現状にシズは満足している。
溜め息の理由は今の境遇からくるものではない。
(トウジさん……。)
かつてシズを連れ出して、自由を求める為に声を出す事きっかけをくれた人。
そして、監禁され泣いていた彼女を助け出してくれた人。
今得られた自由も、彼と仲間達の力によるところが大きい。
シズは彼の事を考えていた。
神からの預言で、彼含む三人の新たな勇者が任命された。
今までは預言者一族の長老達によって管理されていた預言は王の耳に直接伝わり、新たな勇者の任命も行われる事になった。
しかし、それらの手続きが終わるまでは、シズは彼らに会うこともできない。
神からの預言ではなく、シズ個人による忖度だと思われない為の措置だという。
彼に会いたい。
……という理由で溜め息をついた訳ではなかった。
(この気持ちはなんなんだろう?)
シズはトウジに対して好意を抱いている。
感謝の気持ち、というには足りないくらいの大きな好意である。
(これは恋……)
それははたして恋愛感情なのか?
(……なのかなぁ?)
シズは頭に?を浮かべた。
トウジに好意を抱いてはいる。
感謝の気持ちが、というには足りないくらいの大きな好意である。
しかし、恋愛感情かと言われると、シズは「うーん」と唸り声をあげる。
シズは監禁に近い自由のない生活を送る中で、恋愛小説などの乙女チックな読み物にハマっていた。物語に出てくるような恋愛に対して憧れを抱いて、時にはちょっと自分を当てはめて妄想してみたりもして、結構な没入感で読み込んでいた。
トウジの事は好きである。しかし、恋愛小説を読んでいた時のようなトキメキかというとちょっと違う。
シズの好みは線の細い中性的なイケメンである。
非常に失礼だと思いつつ、シズはトウジは全然そういうタイプじゃないなと思っていた。
スキンヘッド、ごつごつとした顔、モリモリの筋肉、如何にも
そういうのもアリかと思ったが、実際に自分が恋愛をするとしたら今ひとつイメージが付いてこない。
なので、これは恋愛感情ではないのではないか、とシズは考える。
しかし、とても大きな好意は抱いている。この感情の正体は何だろうか?
シズの部屋の扉がノックされた。
「シズ様。お出かけの準備が整いました。」
今日、シズは外出の手続きをしていた。
特に目的のない散歩がしたいという理由だったのだが、それだけでも手続きと護衛が必要になる。以前よりは遙かに自由とはいえ、大変なことには変わらない。
既に外出の為の身支度は終えていた。シズはそのまま「はーい」と返事をして、部屋の扉へと向かう。
そして、扉を開いたシズの目の前に現れたのは……。
「あっ……。」
理想のイケメンであった。
後ろで髪を結んだ、中性的な端整な顔立ちの青年。
シックで大人びた雰囲気の服装は紳士の休日を思わせる。
スタイル抜群で線が細く、背も高い。優しげながら力強い印象も与える独特な空気感を放つ。
夢でも見ているのであろうか。
一瞬呆けたシズは少し遅れて重要な事に気付く。
目の前の青年―――よくよく見ると女性である。
男性もののような服装ではあるが、身体のラインは女性のもの。
男装の麗人とでも言うのだろうか。
突如として現れた謎の人物を前にして、シズはぐるぐると目を回した。
シズの世話係のメイドが、男装の麗人に手を向けて説明する。
「本日、城の者を護衛に付ける事ができず……急遽、ご都合のついた勇者様に護衛を担当頂ける事になりました。勇者"
「ゆ、ゆゆゆゆゆ勇者さまっ……!?」
"
シズも城内で噂には聞いていた。
女性ながら城の兵士達ですら歯が立たない程の剣技を持ち、付いた異名が
城内のメイド達がキャーキャー言っていたのをシズも聞いた事がある。
とにかく強く優しく朗らかな、絵に描いた様な勇者であるという事だった。
女性勇者なのにどうしてメイド達がキャーキャー言っていたのか?
シズの長年の疑問に答えが出た。
(これはキャーキャーしますよ……。)
シズがあわあわしながら勇者ハルを見上げれば、勇者ハルは優しく微笑みお辞儀した。
「ハルです。今日は宜しくお願いします。」
「こ、ここここちらこそ、宜しくお願い致しましゅっ!」
噛み噛みで緊張しながらシズはバッと頭を下げた。
その様子を見て、ハルがくすりと笑みを零す。
恥ずかしいところを見せてしまい、笑われてしまったと思い、シズの顔はたちまち赤くなった。
「行きましょうか。」
「ひゃ、ひゃいっ!」
こうして、預言者シズの外出が始まった。
預言者一族の送り込んだ世話係と違い、今のお付きのメイドはシズにあれこれと世話を焼く。外出希望もシズが遠慮しようとも、グイグイと勧めてくる。今まで自由のきかない環境で縛り付けられていた為に遠慮がちになっているのではないか、という気遣いからかなり気を回してくれている……のだが。
(外部の方を巻き込んでしまうのはちょっとなぁ……。)
基本城内の兵士等が護衛に回されるのだが、今日は勇者に護衛の仕事が回された。
城の人とはある程度親しくなってきたので、護衛に付いて貰う事に対する申し訳なさも薄れてきていたのだが、外部の人はまた別である。
勇者の手間を取らせてしまった事に申し訳なさを感じつつ、シズは街中を歩いていた。
今日は目的もない散歩である。特に重要でもない事に付き合わせている事の罪悪感はより強い。
そんなシズに、ハルの声が掛かる。
「預言者様。」
「ひゃ、ひゃいっ!」
ビクッと肩を弾ませハルの顔を見上げれば、ハルはふふと笑った。
「どうしました? 元気がないみたいですが。」
「あっ、えっと、その……。」
「大丈夫です。落ち着いて。ゆっくりでいいので。」
緊張のあまり口が回らないシズを落ち着かせるように、優しい声でハルが言う。
シズもその優しい声で少し落ち着いて、息を整えてから話し始める。
「あの……私の外出にお付き合いさせてしまい申し訳ないなと思って……。」
「そんな事気にしてたんですか。別に良いんですよ。」
ハルはハハハとおかしそうに笑った。
「私も預言者様には会いたかったので。」
「えっ。」
ドキリとシズの心臓が跳ねた。
"会いたかった"。
思わぬ言葉であった。
(い、いや、私が預言者だからだよね……。)
シズはあははと笑って勘違いしかけた自分を諫める。
しかし、それはそれとして、優しい言葉は嬉しいと思った。
ハルの言葉は自信に満ち溢れているのか、嘘やお世辞を感じさせない。
別にいい、という言葉を驚く程すんなりとシズは受け入れられた。
「それと、実は今日のお散歩の経費は英雄王が出してくれるらしいです。」
「え?」
ハルはにっと笑って身を屈め、シズの耳元で囁いた。
「せっかくなので美味しいもの食べちゃいましょう。」
耳元で囁かれてまたドキリとする。
屈んだ姿勢から戻って、シズを見下ろしてハルはにっと無邪気な笑顔を見せた。
シズは頬が熱くなるのを感じていた。
「という事で、私としてもこの護衛任務は嬉しい事なので。気にせず行きましょう。どこか行きたいところとかありますか?」
立ち止まってぽかんとハルの顔を見上げていたシズは、そこでハッとして我に返った。未だに心臓はどきどきと高鳴っている。
「え、えっと、えっと……じ、実は全然何も考えて無くて……。」
「分かりました。じゃあ、適当に歩きましょう。」
「ご、ごめんなさい。」
「いえいえ。ただ街を見て歩くのも楽しいですよ。」
すっと手を差し伸べてくるハル。
シズは反射的に差し伸べられた手に、手を乗せてしまった。
手を触ってしまって良かったのか、と遅れて心配すると、そのままハルは優しく手を握り返してきた。
「さ、行きましょう。」
「ひゃ、ひゃい……。」
ハルに軽く手を引かれ、シズは歩き出す。
リードはしてくれるものの、決して強くは引かず、歩幅も背の低いシズのものに合わせて歩く。
「預言者様、私どこか変じゃないですか?」
「え? へ、変?」
「実は今日初めて着る服でして。似合ってないかちょっぴり心配だったんです。」
「へ、変なんて事ないでしゅ、です! とっても素敵です!」
「あはは。良かった。」
ハルは照れ臭そうに笑う。
「最近私服にも気を遣うようになりまして。スカートとかひらひらしたのよりは恥ずかしくないんですけど、やっぱり慣れない格好は少し照れますね。」
スカートとかひらひらしたのも着るのか、とシズは頭の中で着飾るハルを想像する。今の服がぴったりとハマっているものの、確かに何を着ても似合いそうにも見える。
「預言者様の服も素敵ですよ。良く似合ってます。」
「ぴぇっ!?」
まさか褒められるとは思っていなかったシズを不意討ちで褒めてくるハル。
思わず変な声が出てしまう。
「わ、わたわたわたしはそのその……!」
「あはは。」
慌てふためくシズを見て、ハルは笑う。
恥ずかしいところを見せてしまったと、更にどんどん赤くなるシズ。
その顔を見て、ハルは申し訳なさそうに苦笑した。
「すみません。笑ってしまって。思っていたよりも預言者様が、何か
「へ?」
「もっと、神様みたいな高いところにいるような人なのかなって思ってたので。預言者様も緊張したり取り乱したりするんだなって。」
「あうぅ……ごめんなさい。」
「いえ。悪いと言ってるんじゃなくて。親しみやすくていいなと思っただけです。」
シズの胸がまたまたドキンと大きく脈打つ。
シズの目の前がぐるぐると回り、更に顔が真っ赤になってふらふらしてきた。
「あれ? 預言者様? 大丈夫ですか?」
「ひゃい……。」
「具合が悪いならどこかで休みます?」
「だ、だいじょうぶれふ……。」
ハルの優しい一言一言を浴びるためにどんどんハルの事を好きになっていってしまう。
いちいちドキドキしてしまい、熱っぽくなってしまう。
フラフラしながらシズが大丈夫というと、ハルはパッと手を離してしゃがみ込んで背中を向けた。
「おんぶしましょう。どこか落ち着けるところで休みましょう。」
「しょ、しょんな……だ、だいじょぶ」
「あんまり出歩かないから疲れちゃいましたよね。ほら。」
ハルは少し強引にシズに背中を寄せてひょいと小さな身体を掬い上げた。
細身の女性なのに力強く、しかし無理矢理ではなく包み込む様にひょいとシズを持ち上げておぶる。
身体が接すると更にドキドキは加速する。ほんのりと温かい体温が伝わり、柔らかい身体と優しい匂いがシズを包み込む。それでいて、力強く受け止める背中は不思議なくらいの安心感を与えてくる。
「じゃ、行きましょう。」
「ぴ……。」
ハルはすっと歩き出す。
おぶさっているシズがまるで振動を感じない歩き方。きっとおぶさったシズに負担を掛けないように気を遣って足を運んでいるのだろう。
「は、ハルしゃま……ご、ごめんなしゃい……。」
「"様"なんて付けなくていいですよ。謝らなくても大丈夫。もっと気楽にして下さい。」
どこまでも緊張を和らげようとしてくれる。
思い返せば、先程までも積極的に話し掛けてくれていた。
そういう気遣いのできる人なのだと分かると、シズの胸は余計に高鳴る。
(なんて素敵な人……。まるで、"黄金郷物語"のプリム王子みたい……。いや、ハル様は女性なんだけど……。)
"黄金郷物語"というのは最近シズが読んでハマっている長編恋愛小説である。
プリム王子というのはその中に出てくるヒーローの一人である。
容姿も力も心配りも、まるで小説に出てくるような王子のようで、シズの胸はときめき続けている。
やがて、しばらく歩いて一軒の料理店に辿り着く。
一番最初に見つけた店という事で何気なく入った店で、ハルとシズは腰を落ち着けた。
取り急ぎ、ハルは水を頼んでシズに差し出す。
シズは差し出された水をぐっぐと飲み干して、ようやく一息ついた。
「ふぅ……。」
「落ち着きましたか?」
「は、はい。ありがとうございま……しゅ。」
火照った身体に水を流し込み、ようやく落ち着いたシズだったが、店には行ってハルと対面して改めて顔を直視する。
凜々しい顔が真正面から此方を見ている。それだけで再びぼっと顔が熱くなり、舌が回らなくなった。
もう一杯水を貰って、再びぐっと飲み干す。そこでようやく落ち着いて、シズは息を整える事ができた。
「ご、ごめんなさい……ひ、人見知りで緊張してしまって。」
「あはは。そうだろうなとは思いましたけど。」
「う、うまく喋れなくてごめんなさい。」
「大丈夫大丈夫。もっと口下手なの知り合いにいるので。ナツって言うんですけど。」
「ナ、ナツ様?」
「知ってますよね? 前に護衛任務付いたと聞いてたので。」
シズも知っている名前が出た。
かつてシズの護衛に付いてくれた事のある勇者の一人。
無口な彼の事を思いだして、シズはぷっと僅かに笑ってしまった。
「ようやく笑ってくれた。」
「へ?」
「ずっと緊張してたから。もっと気を抜いてくれていいんですよ。気晴らしのお散歩なんだから。」
ハルはそう言って優しく微笑む。
一度小さく笑うと、ほんの少しだけ肩の力が抜けてきた。
「何か頼みましょう。英雄王のお金なんで高いものでもいいですよ。」
「い、いや、それはちょっと……。」
「あの人適当だから大丈夫。」
シズは僅かながら顔合わせした時の事を思い返す。
確かに適当な人だったなぁ、と失礼な事を考えつつ、きさくにメニューを捲るハルの手元を見た。
適当に二人でメニューを選び、注文をする。
先に運ばれてきたジュースを口にして、改めてほっと息を吐いた。
「預言者様はこういうお店普段は来るんですか?」
「え、えっと……あんまり来ないです。」
「私と一緒だ。私も普段はお金がなくて……。」
「ハ、ハル様ほどの勇者でも……?」
意外そうにシズが聞けば、ハルは苦笑いした。
「家が貧乏でして。私も世間知らずでお金を中々稼げなかったんです。タダ同然で勇者の仕事をしてたら、同じ勇者のアキから最近『勇者の地位を安売りするな』とこっぴどく叱られてしまって。」
「そ、そうなんですね。」
ハルはそんな話をした後に、改めて先程言った事を言い直す。
「"様"っていうのやめましょう。私なんて大したものじゃないので。多分、そうやって持ち上げてるから緊張するんだと思います。歳も近んだし、もっと気楽にハルって呼んでくれていいですよ。」
勇者という事、まだ出会って間もない事からシズは様付けでハルを呼んでいた。
しかし、ハルはそんなもの要らないという。
「そ、そういうの慣れてなくて……。」
「じゃあ私で慣らしていきましょう。」
腰が引けるとすぐに引っ張ってくれる。
グイグイとくるので、次第にシズもそうせざるを得なくなってくる。
どうしても弱腰になってしまうシズにとって、その強引にも思えるリードは少し有り難かった。
「ハ、ハル……。」
「はい。」
ハルは返事をしてニッと笑った。
その笑顔を見てやっぱりどきりとする。
ハルは歳が近いという。そして、呼び捨てをするよう促して距離を縮めてくれている。
そんな彼女の優しさに触れて、シズはちょっぴり欲が出た。
「あ、あの……。」
「なんです?」
「ハ、ハルも……わ、私の事、『預言者様』、じゃなくて、『シズ』って、よ、呼んで……くれますか?」
「ああ。じゃあ、シズって呼びます。」
出過ぎた真似をしたかと思ったシズだったが、ハルはあっさりと呼んでくれた。
「あ、あのっ! それとっ! け、敬語もやめてくれますか……?」
「いいのか? いいなら助かる。私も敬語に中々慣れてなくて。ヘタクソじゃなかったかな?」
「ぜ、全然そんな事……。」
ハルはお願いすればあっさりと聞いてくれる。
「改めて宜しく、シズ。」
「は、はい。宜しく、ハル。」
改めて、シズとハルは挨拶を交わした。
「ところで、さっきシズに会いたかったって言ったの覚えてるか?」
「え? は、はい。」
突然先程の言葉を振り返るハル。
きっと預言者に会いたかったのだろうと流したのだが、改めて言い直されるとシズはドキリとする。
どうしてまた言い直したのか、シズがどきどきしながら身構えると、ハルが言葉を続ける。
「実は、これ最近私も知ったんだが、なんか私"巫女"とかいうのの末裔だとかで。預言者とは何か関わりがあるのかなぁと思ってたんだ。」
「へぇ、巫女の…………巫女?」
「ああ。女神様、えっと、知り合いの女神様がいるんだけど、その女神様からそうだと聞かされたんだ。」
預言者シズも"巫女"という存在は知っている。
天の神の声を受け取る預言者と並び、大地の神々と会話をする力を持つ存在だと言い伝えには残っている。遙か昔に断絶したと言われる巫女一族。その名が出てきてシズは呆然とした。
「ほ、本当ですか?」
「実感は湧かないんだけどな。ただ、預言者と似たようなものだと聞いたから、今の預言者と会ってみたいなと思ったんだ。色々と話が聞けたらなと。」
預言者と会いたかったのだろう、というシズの予想は当たっていた。
しかし、似たような立場にあるから、というのは予想もしていなかった。
この世界に一人ずつしかいない預言者と巫女。たった二人だけの関係。
(なんて……なんてロマンチック……!)
シズの心が踊り回った。
まるで小説に出てくるようなシチュエーション。
小説に出てくるようなヒーロー。
トキメキが止まらない。
(これが……恋……?)
憧れていた恋というもの。今のこれがそれなのだろうとシズは確信した。
相手は女性ではあるものの、シズが読んでいた本にはそういうのもあったのでまるで気にならなかった。
「まぁ、そんな訳で。仲良くしてくれると嬉しいな。」
「はい……是非……!」
シズは悩んでいた事を思い出す。
トウジに対する感情は、こういうものとはまた違うものだと思った。
(多分トウジさんの事は、助けてくれるお兄ちゃんのような気持ちで好きなんでしょう。そうに違いない、きっとそう。)
経緯はどうあれトウジのシズに対する感情と大体同じような結論に至ったという。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます