外伝第7話 シキネボケル





 我が輩は猫である。名前はシキ。


 ぬくいコタツはどうしても狭い。

 我が輩を呼ぶ声も聞こえない。

 だから外に出たいのだが、外は寒くて出たくない。


 ぬくい歌が聞こえる。我が輩の大好きな歌。

 歌を聞きたい。

 ぬくい小娘の膝の上で寝たい。


 外がほんのりぬくくなる。

 これなら出ても大丈夫そう。

 ぬくい小娘探しにいこう。

 ついでに声モ聞キニ行コウ。


 まっしろは冷たい。冷たいは嫌い。

 ほんとはまっしろ踏むのは嫌い。

 それでもぬくい小娘にあいたい。

 ぬくい小娘どこにいる。

  

 人間はたくさんいるけれど、どれもこれもぬくくない。

 声モ全ク聞コエナイ。

 やっぱりぬくいのは、ぬくい小娘しかいない。


 ちっちゃいちっちゃい小娘がくる。

 ちっちゃい小娘よりちっちゃい。

 我が輩に何か言っている。それでも声ハ聞コエナイ。


 ぽかぽかぬくい光が消える。

 くらくてつめたい森の中。

 ぬくいコタツが恋しくなって、ここにいるのが嫌になる。


 猫はコタツで丸くなる。なのにどうして此処にいる?

 我が輩は猫である。コタツで丸くならなければいけない。

 我が輩はすこしおかしかった。

 ぽかぽかぬくくてねぼけていた。


 ちっちゃいちっちゃい小娘が泣く。

 ちっちゃいちっちゃい小娘が鳴く。

 声ガ聞コエル。助ケテト鳴ク。聞コエタ。聞コエタ。声ガ聞コエタ。

 聞コエタノナラ応エナケレバ。

 ソレガ私ノ生マレタ意味。祈リハ至ル奇跡ノ元ニ。

 私ハ……。


 何を考えているのだろう。

 やっぱり我が輩はねぼけていた。

 我が輩は猫である。コタツで丸くなる。気ままにぬくく自由に生きる。

 それが我が輩の生まれた意味。

 ぽかぽかぬくい光が見える。

 ぬくい小娘ようやく見つけた。

 やっぱりぬくい小娘はぬくい。あえてうれしい。これがしあわせ?

 

 ぬくい小娘におこられた。

 勝手におでかけいけないこと。

 ぬくい小娘やくそくした。

 いい子にしてればいっしょにおさんぽ。

 ソレガ望ミデ@ルナラ――/・¥/*;くい小娘といっしょにいられるなら

 我が輩はいい子にしてあげる。


 我が輩は猫である。名前はシキ。




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