魔王城コタツ

外伝第1話 シキメザメル

　今日モ声ハ聞コエナイ。

　寒クテ、寒クテ、寒クテ、寒イ。

　寒イケド、此処ハ暖カイ。

　此処は暖カイケド、誰ノ声モ聞コエナイ。

　誰ノ声モ聞コエナイケド、寒イカラ出タクナイ。

　誰カノ声ヲ聞ク為ニ、此処ニ居ル筈ナノニ。此処ニ居テハ声ガ聞コエナイ。

　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？　ドウスレバイイ？

　誰ノ声モ聞コエナイ。

　―――コタツの中には猫が居る。

　聞コエル。聞コエル。声ガ聞コエル。

　―――私は黒い猫が好き。

　此処デモ聞コエル。強イ声ガ。

　呼ビカケル声ガ。

　―――出てきて欲しい。可愛い可愛い黒い猫。

　誰カノ声ヲ聞ク為ニ、此処ニ居ル。

　声ガシタナラ聞カナケレバ、ナラナイ。

　ソレガ、此処ニ、居ル理由。

　コタツの中には黒猫が居る。黒猫は彼女に呼ばれて出て行かなければならない。

　彼女の想う黒猫は、コタツの中で丸くなる。

　彼女の想う黒猫は、自由気ままで流されない。

　彼女の想うとおりに、黒猫はコタツの中から抱き上げられる。

　黒くて小さい彼女の小さい手に抱えられる。彼女の想う黒猫は抵抗しない。何も言わずに眠たげに、ただただ大人しく抱き上げられる。

　暖かい場所から引き摺り出されるが、彼女の手は暖かい。

　此処は暖かい。声も聞こえる。ただ此処に居て欲しいという声が聞こえる。

　黒猫は丸まって、大人しくしたまま此処に居れば良い。