薬のシロップ
インフルエンザの季節が来ると、小学生のころを思い出す。
小学生2年生のころから5年生まで、なぜか毎年インフルエンザにかかっていた。
3年目くらいから、自分としては「また今年もか」と思う程度になっていたが今になって思えば、働く父母にとって別の意味の脅威にもなっていたのだろうと想像がつく。
それはともかくとして、子が毎年インフルエンザという、ヘタすれば死に至る病に伏せるという気持ちは計り知れない。看病してくれた母には心配をかけてしまったものだ。
さらに悪いことに、私は粉薬に関して絶望的に苦手意識のある子だった。
当時はインフルエンザの特効薬の処方はなく(年齢的なものか、時代的なものかはわからない)、様々な薬を服薬していたと記憶している。その中の粉薬が異常に苦く、苦みに敏感であった年頃の体には苦難以外のなにものでもなかった。
オブラートで包む手法もあるが、「薬を飲み込む」ことが今も苦手である私にとって、オブラートは「もたもたしてたら中身が出てくる時限装置」としての恐怖心が勝るものであり、得策ではなかった。
インフルエンザなのに薬を飲むのが苦手な息子をどうしたものか。
そんな母が工夫を凝らして作ってくれたのが、粉薬を何かのシロップに混ぜ込んでくれたものだ。
粉薬を液体に溶かすということが、処方的にいいものなのかどうかはわからない。
何かを調べて作ってくれたのか、医者のアドバイスを受けてなのか、試行錯誤の元やってくれたのかどうかもわからないが、とにかく、母は粉薬が苦手な息子のため、飲みやすくする工夫をしてくれたのだ。
正直そのシロップにも苦みや独特の風味が出てしまって、好んで服薬できたということでもなかったのだけれど…。
どんな気持ちで作ってくれたのかということを、この時期になると考える。シロップの苦味も思い出してしまうのが、難点だが。
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