誕生日プレゼント

「親は子に何かしてあげたいもんなの」


ふと母が漏らした言葉が、胸に残っている。



我が家は誕生日プレゼントを家族間で贈ることを大人になっても続けていた。

しかし、結婚して世帯を持った時「これからは誕生日プレゼントはいいからね。」と母は言った。そのお金を妻や自分の家庭のために使いなさいということだ。


私の結婚により、実家には両親だけとなり、子が生まれて以来の二人きりの生活に戻ったということになる。

私としては、今まで子のために割いていた時間やお金を、自分たちの生活に使って楽しんで欲しいと思った。先ほどの母の言葉を返すようだが、自分たちの好きなことに使って、新たな二人の生活を楽しんで欲しいと願った。


その母が、例年通り私の誕生日プレゼントを買おうと言ってきた。

いやいや、そんな。こっちがプレゼントをしないようになったんだから、そんなもんええがな。働いて稼ぐようになって、自分のもんは買えるがな。せやったら俺も誕生日プレゼント買うがな。


それに対して母が言ったのが、最初の言葉だ。

「子になんかしてもらいたいんじゃなくて、親は子に何かしてあげたいの」


子を甘やかせるのとはまた違うことだろう。生活に介入してくるというわけでもない。


赤子だった頃からもりもりと大きくなり、なんと自分で稼ぐようになり、家族を持つようになった。親として見る、「子が成長していく様」というのは、いつになっても変わらんのだろうか。と思いを馳せる。


子は成長しだすと、親の援助や介入を煙たがるようになる時期が来るように思う。

しかし、子に何かをするのは、親が「何かしなきゃ」と思う義務感や、甘やかしではない。一種の親の楽しみなんだなぁと思った。


それであれば、変に遠慮すると、残念がってしまうのかもしれない。

ありがたく誕生日プレゼントを買ってもらおう。



「誕生日プレゼントはいいけど、母の日と父の日はよろしくね。」


あ、さよで。

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