つもりエッセイ
でご
特急電車
特急電車が駅に停まった。
山、田畑、川、山、集落、山、田畑、川…しか見えなかった車窓からの風景が、人を送り迎えする駅、移動の起点となる駅の光景へと変わる。いきなり街が出てくるのは、ちょっとおもしろい。
今、私は京都駅を発ち、京都府を北へ北へと向かう特急に乗り、義実家へと向かっている。
年末年始。帰省シーズンの特急に乗り、「特急が停まる駅」を眺めると、そこで降りる人や乗る人の様子も、なんだか特別なものに思えた。
山や田畑、川を越えてたどり着くこの駅。おそらく観光地ではないこのエリアでも、特急が停まる必要性があるということは、乗降数が多いとか、何かと接続されているとか、旅路の拠点として由緒があるとかで、地元の方々にとって大切なターミナル駅なのだろう。
駅までの景色や、駅前の光景が、観光で乗る時とはまた違った風景に見える。
そういえば、と気づく。自分自身にとって、特急で帰省する、なんてことは初めてではないか?
祖父母の家は、父方も母方も大阪にあった。滋賀の家から帰るときは車だったし、昔関東に住んでいた頃も、新幹線と在来線の乗り継ぎだった。新幹線と特急はまた違う。
結婚して実家を離れ大阪に住む今も、滋賀の実家までは在来線で1時間圏内だ。なんなら結婚するまでは実家から大阪まで通勤していたくらいなので、帰省感が無い。
そうか、新鮮な気持ちになるのは、今まで知らなかったからか。
京都駅で特急を待つ際に見た、大荷物の家族。途中の駅で降りていく家族、途中から乗り込んでくる家族。出張の時は見たことのない、指定席満席の特急。賑やかな車内。
電車に乗る時の思い、車内での家族の会話、「もうすぐだよ、」なんて子どもに話しかける親、駅ではおじいちゃんが迎えにきたりするのだろうな、と妄想する。
なんだか新鮮で、見ていてわくわくした。出張や観光とは違う目的の特急電車。
今まで経験したことがなかった、ということに気がつくことができた。
「会いにいく」とか、逆に「生活に帰る」とか、そんな思いをたくさん乗せた特急電車が駅を発ち、また山道を走り出した。
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