第15話 冷徹なる暗黒巫女
「……まったく。愚かなお姉さま。何を遊んでいらっしゃるのかしら。こんな
突如として僕の目の前に現れたのは双子の妹・暗黒
一瞬前まで目の前にいたはずのアリアナが魔法陣の中に吸い込まれ、入れ替わりに暗黒
そのことで僕は
その一瞬を見逃すアディソンじゃなかった。
彼女は素早く屈み込むと、手にした
「むぐっ!」
僕はみぞおちを杖の先端で鋭く突かれてその場にひっくり返ってしまった。
あまりのクリティカル・ヒットに僕のライフゲージは危険水域である残り20%以下になってしまう。
さっきのキーラによる
や、やばい。
油断した。
アリアナにワクチンを投与できる好機に喜び勇み、僕は突然の状況変化に
そしてもっと悪いことに激痛のあまり、手に握り締めていたワクチン・スタンプを手放してしまったんだ。
地面に落ちたそれを目ざとく見つけたアディソンがサッと拾い上げる。
「これは……スタンプ型の注射器。ワクチンですね」
そう言うとアディソンはニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
しまったぁ!
僕は痛みを
「なるほど。やはりウイルス対策をしていましたか。こざかしい。ですが、しょせんは愚者の浅知恵。そんな程度でワタクシたちを出し抜こうなどと笑止千万です」
そう言うとアディソンは
「あなたがここにいるということは、行方が分からなくなっている
そう言うとアディソンは
僕もタリオを構えるけど、
「くそっ! こいつらぁ! 放しやがれ!」
だけどキーラは威勢よく悪態をつきながら
あれ?
僕の表情から考えを読み取ったようでアディソンが
「フン。いずれあなたがまたワタクシたちの前に現れると予想していましたから、眠りの効果については既に事前対策済みです。以前はまんまと一杯食わされましたからね。二度も同じ手が通用するほど甘くはないのですよ。愚か者」
そ、そういうことか。
何らかの手段で誘眠効果への対処を行ってきたんだ。
くっ!
僕は自らの
もうライフは残り少ないし、さっきみたいな一撃を浴びたら即ゲームオーバーだ。
かといって回復アイテムを使う間をアディソンがみすみす僕に与えるはずがない。
せめてジェネットにこの場所を知らせることが出来れば、僕がゲームオーバーになってもきっと彼女がアリアナを助けてくれる。
ジェネットも僕が大広間から消えたことにもう気付いているはずだ。
そうした僕の内心の
「あなたには早々にこの場からご退場いただきます。
そう言うアディソンの目には一分の油断も
姉のキーラとは違い、彼女は徹底して冷静だった。
僕が何かを考える間を与えず、アディソンは
僕は左手に握ったタリオで必死に応戦するけれど、アディソンは
「死ねっ! くたばれっ! 息絶えろっ!」
「ううっ!」
彼女の攻撃の激しさに僕は思わずタリオを落としそうになる。
見た目にそぐわないこの荒々しいファイトスタイルこそが彼女の特徴だ。
その打撃力は脅威で、右腕を失って片手でしか剣を握れない僕は受け止めるだけで、体が砕かれるような衝撃に
くっ!
これはやばい!
反撃どころじゃない。
僕はアディソンの繰り出す攻撃の圧力に押されて、ジリジリと後退するしかなかったけれど、この狭い空間ではすぐに背中を壁に追い詰められてしまう。
僕を攻撃しながら前進するアディソンのすぐ近くにはタリオの
アディソンは攻撃の手を止めると、足元のそんな姉にチラリと視線を送る。
「ザコ相手に足元をすくわれた
容赦なく姉をそうあげつらうアディソンの言葉にキーラは怒って反論する。
「うるせえな! ちょっと遊んじまっただけだっつうの!」
そう言うとキーラは縛られたままアイテム・ストックを呼び出した。
すると彼女の目の前に、大人が何とか両手で抱えられるほどの大きな虫かごが現れた。
僕は思わず目を見張る。
なぜなら虫かごの中には、僕が砂漠で散々苦しめられた
「さあ行け!
キーラがそう叫ぶと虫かごだけがパッと消え、解き放たれた
うぇぇぇぇっ!
また
もう
狭い虫かごに閉じ込められていた
広大な砂漠でもあれだけ苦戦したのに、こんな狭い場所じゃ逃げ場もない。
僕は
そんな僕の絶望的な心理状態をあざ笑うかのように、十数匹の
「ひいっ!」
思わず恐慌状態に陥りそうになり、僕は浮き足立ってしまう。
仮に
ここでゲームオーバーになって
そもそも運営本部から僕に再度の外出許可が出るかどうかすら分からない。
どちらにせよ、ここでジェネットと協力してアリアナを助ける計画から僕は脱落を余儀なくされてしまう。
悔しさに
そんな僕の危機を察してくれたようで、キーラに巻きついて縛り上げていた
再びタリオの柄に巻きついた
だけどそれもいつまでも続かないだろう。
体の自由を取り戻したキーラは怒りの眼差しを僕に向けて
その間にアディソンはメイン・システムを操作していた。
すると岩壁のモニターに映る景色の中にアリアナが姿を現した。
くっ……アリアナが……。
戦場となっているジェルスレイムのオアシスでアリアナはミランダと対峙していた。
その映像を見たキーラが得意げに胸を張る。
「ハッハッハ! 少し遅れちまったが、アリアナのメイン・コントロールはコピーの方に移譲されたぞ。無駄な努力だったなぁ。ヘタレ野郎! まあ後はアタシらがアリアナの勝利をきっちり演出してやるから、お前は安心して死ね!」
キーラの言葉を号令に、
クソッ!
簡単にはやられてやらないぞ。
僕が決死の覚悟でタリオを握りしめたその時だった。
突然、轟音が鳴り響き、狭いこの空間の四方を囲む壁の一つが崩れたんだ。
そしてそこから無数の光の矢が飛来して次々と
突然の攻撃に双子は
飛んでくる光の矢はうまい具合に僕だけを避けてくれる。
ジェ、ジェネットだ!
ジェネットが来てくれた!
思わず顔を
あれ?
ジェネットは?
相変わらず大広間には多くのNPCたちが
だというのに大広間の天井から降り注ぐ光の矢は次々と
射撃手の姿がどこにも見えない光の矢。
だけどそれは確かにジェネットの上位スキル・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます