第16話 NPC救出大作戦!
薄暗い地底の空間に光の矢が高速で宙を舞う。
ジェネットの上位スキルである
その光の矢は僕を襲う
アディソンが
あれは魔法を無効化するアディソンの得意技だ。
光の矢はその
これを見たキーラもすぐにアディソンの背後に転がり込んだ。
光の矢は
今だ!
僕はすぐに小部屋から抜け出して大広間に駆け出しながら、持っている回復ドリンクを取り出してそれを服用した。
ふぅ。
危険水域にあった僕のライフは何とか50%程度まで回復した。
とりあえず危機を脱した僕は大広間の中でジェネットの姿を探す。
それにしてもあれだけ
僕がジェネットへの呼びかけをしようとしたその時、僕のメイン・システムに
その送り主はジェネットだった。
【アル様。ご無事でしたか。返信はせずにそのまま聞いて下さい】
その言葉に僕はその場に立ち止まった。
ジェネットからのメッセージは続く。
【アル様はすでに人の姿に戻られたのですね。今、私はまだフェレットの姿のまま、この大広間にいる一人のNPCの背後に隠れて攻撃を行っています】
えっ?
僕はとっくに元の姿に戻ったけど、ジェネットはまだフェレットのままなのか。
元に戻るまでの時間には個人差があるのかな。
それにフェレット状態でも変わらずに神聖魔法が使えるんだね。
【アル様。よく聞いて下さい。この後すぐに私の同志であるブレイディ率いるフェレット部隊がこの穴の中に到着します。総勢で50名ほどにはなるでしょう。彼らの手引きでここにいるNPCの人達をフェレット化し、地上へ運び出します】
マ、マジか。
確かにその方法なら、ここにいる人たちを地上へと逃すことが出来る。
僕はジェネットの実行力と
【これから私は双子の相手をします。そしてアル様にも大事なお願いがあります。NPCたちを
ジェネットの言うことは分かる。
でも……僕は心配だった。
フェレット状態なのに1人で双子を相手にするなんて……いや、ジェネットがそう言っているんだから、彼女は必ずやり遂げるだろう。
僕はジェネットを信じてタリオを握り締めた。
ここにいる人達を助けるために皆が力を合わせて動いている。
僕もその一員として自分がやれることをやるんだ。
そう心に念じて僕は壁際に
鎖から解放された人たちはその場に立ち尽くしたり、へたり込んだりしているけれど、誰も彼も自我を失っているため、その目は
ただ一部の人たちが意識を取り戻したらしく、力のない声を発し始める。
「た、助けてくれ……」
「ここから……出して」
キーラが言っていたのは彼らのことだろう。
彼らのコピーがつい先ほどまでミランダと戦っていて、敗れ去ったためにここにいるオリジナルたちが意識を取り戻したんだ。
そんな彼らの様子があまりにも悲愴で僕は息を飲んだ。
やっぱり彼らは皆、辛い思いをしていたんだ。
こんなところに
「待っていて下さい。すぐに鎖を切りますから」
僕はそう言って順番に鎖を断ち切っていく。
意識を取り戻した人は全部で十数人はいるみたいだ。
こうしている間にもジェネットはどこかに身を隠したまま
その勢いは一向に衰えることなく、双子は
だけどいくらジェネットでもこの調子で光の矢を放ち続ければいずれ法力が尽きてしまう。
おそらく数分程度しかもたないだろう。
それでもジェネットは双子を釘付けにすることで、僕の作業時間を稼いでくれているんだ。
僕は
そして端から順に鎖を断ち切っていき、およそ全体の半数の人を解放したところで僕は手を止めた。
なぜなら僕らがここに来る時に通ってきた小さな穴から、続々と小動物がこの大広間に入り込んでくるのを視界の端にとらえたからだ。
フェレット部隊だ!
ブレイディたちが到着したんだな。
僕は希望に胸が躍るのを抑えつつ作業を続けた。
すると突然、
「ん? 何かな?」
そのフェレットはいきなりムクムクと大きくなり、1人の女性の姿に戻ったんだ。
僕の目の前に立った白衣姿の彼女は
ブレイディは【
「ブレイディさん!」
「やあアルフレッド君。ご苦労様。そういえば言い忘れていたんだけど、例の薬液は他の液体で薄めると変身の持続時間が短くなるんだ。砂漠ビールで薄められた薬液をかけた君と、原液をそのままかけたジェネットとでは変身の持続時間に差が出るんだよ。その原理を利用して様々な持続時間の薬液を……」
どうやら科学者スイッチが入ってしまったみたいで、ブレイディは熱心に講義を始めようとする。
いや、あのですね。
今はそんなことよりもですね。
「そ、そのお話は後で聞きますから。早くNPCの人達を……」
「おっと。そうだったね。急がないと」
熱弁を中断するとようやくブレイディは薬
僕もすぐに自分の作業を再開する。
大広間にはすでに数十匹のフェレットがいて、そのうちの数名はブレイディと同様に人の姿に戻った男性たちだった。
彼らはフェレット化させたNPCたちを仲間のフェレットたちにヒモで縛り付けている。
自我を失った状態のNPCたちはフェレット化してもグッタリとしていて自分では歩けそうもないから、ああして上まで運ぶんだな。
一方で意識を取り戻したNPCたちは突然の奇妙な乱入者たちに驚き戸惑っていたけれど、
ともあれ、これで彼らを地上に脱出させる手はずは整った。
それから僕はひたすらにタリオを振るい、残ったNPCたちの鎖を全て断ち切ったんだ。
すると
「ジェネット!」
驚いて僕が声を上げると、彼女はこちらをチラリと見てから双子に向かって猛然と駆けて行く。
そして空中高く飛び上がるとその姿は人間である尼僧ジェネットに戻ったんだ。
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!」
気合の声を上げるジェネットはまだ光の矢を連続放射し続けている。
すごい。
僕も今まで何度も見たことのある神聖魔法だけど、これほど長く放ち続けるのは見たことがないぞ。
法力を全て使い果たすほどの気迫と勢いだ。
さらにジェネットは
光の矢で釘付けにした双子を直接叩くつもりなんだ。
だけど双子に向かうジェネットの背後の地面に急に緑色の魔法陣が生じたかと思うと、その中から黒光りする
予期せぬ攻撃に足をとられてジェネットは思わず転倒しそうになりながら立ち止まる。
「危ない!」
僕は無意識のうちに弾かれたように駆け出していた。
するとジェネットの背後にあるその魔法陣の中から魔獣使いのキーラが飛び出してきて、ジェネットに襲い掛かったんだ。
ジェネットは振り返ろうとしたけれど、その瞬間に前方にいたアディソンが
「死ねっ!ジェネット!」
物質である
「はあっ!」
ジェネットは気合いの声を発してこれを
キーラはジェネットの足に
そうはさせないぞ!
僕は全力で走る勢いのままキーラに突っ込んだ。
「うわああああああっ!」
「うぐっ!」
勢いを緩めることなく僕は無我夢中でキーラに体当たりを浴びせ、キーラは転倒したはずみで
ジェネットはその
「うわっ!」
すぐに視界が暗転し、天地がひっくり返るような奇妙な感覚に全身が包まれる。
僕は自分がどこか別の場所へと転送されるのを感じながらほんの束の間、意識を失った。
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