第6話 ゾンビ穴をふさげ!
廃城の中では冷気が
アリアナが鋭く拳を振るうとゾンビは一瞬で凍り付いて砕け散る。
彼女は
さらに彼女の中距離攻撃用スキルである
アリアナの猛攻でゾンビの数は一気に減っていたけど、相変わらずゾンビ穴からは続々とゾンビが湧き出ていた。
「ああもう! キリがない!」
アリアナはそう叫びながらもゾンビを倒す手を止めない。
確かにこのままじゃどうにもならない。
当初、アリアナはゾンビ穴を彼女の上位スキルである
だけど
彼女がスキルを発動させて穴を
どうしたらいい?
必死に戦うアリアナの背後で僕は懸命に頭を
ゾンビ穴を
僕の頭の中に様々な可能性が浮かんでは消えていく。
そして僕は策とも呼べないような最低最悪の方法を思いついてしまった。
「……それしかないか。でも嫌だなぁ」
ああ。
嫌なことを思いついちゃったよ。
気が重いなぁ。
僕は自分の発案に重苦しいため息をつき、アリアナを取り巻くゾンビの輪が途切れたところを狙って彼女の元へ駆け寄った。
「アリアナ!」
「アル君?」
「今から僕が言うことを実行して」
僕が手短に自分の考えを話すとアリアナは信じられないという顔をする。
「あ、あなた。アタマおかしいんじゃないの?」
そうですね。
ひどい言われようだけど自分でもそう思うから反論できないよ。
「とにかく今、説明した通りにして。そうすれば数秒間は穴が
僕はアリアナの返答を待たずに駆け出した。
向かう先は玉座だけど、前方には当然のようにゾンビの群れが待ち構えている。
だけどアリアナが最大出力で
その間に僕は全速力で玉座前のゾンビ穴に駆け寄っていく。
うぅ。
本当は怖くてたまらない。
でも僕には他に出来ることなんてない。
だったらやることはひとつだ!
「うおあああああっ!」
僕は叫び声を上げ、無我夢中でゾンビ穴に飛び込んだ。
タイミングを合わせてアリアナが
ゾンビ穴はちょうど人1人分の大きさで、僕は頭までズボッと穴にはまった。
うまい具合にゾンビ穴が僕の体で
僕は決死の思いで絶叫した。
「今だ! アリアナァ!」
その途端だった。
穴の奥底から突き上げるようにゾンビが現れ、僕の胴体や腕、足に噛みついた。
イダダダダっ!
痛い痛い痛い痛ぃぃぃっ!
腕やら足やら腰やら尻やらをゾンビに噛みつかれて僕は激痛に
「イッギヤァァァァァァァァァァァ!」
さっきも言ったけどライフゲージを持たない僕は死なないけど痛みは感じるんです!
ハムハムッ!
ハムハムッ!
イダダダダダダッ!
ハムハムッ!
痛すぎるっ!
ゾンビにハムハム
でも少しの我慢だ。
すぐにアリアナがこの穴を
ん?
でも
激痛に
僕のいるゾンビ穴の四方が
あれっ?
打ち合わせと違うぞ?
状況を飲み込めない僕をよそに
そして積み上がりきった後に上から中を
さらに彼女は
「アル君! 今行くから!」
「アリアナ。何してるの? 早く穴を
そう言う僕の声を無視してアリアナはスルスルっと降りてくると僕に手を差し伸べてくれたんだ。
「私がそうやって穴を
「そ、それは……」
「私、あなたをこんな場所に置き去りにするような非人道的プレイヤーにはなりたくないから」
アリアナはそう言ってくれた。
僕はそれがとても嬉しかったけど、彼女が気に病む必要なんてないんだ。
だって僕は……。
「アリアナは何も気にしなくていいんだよ。だって僕はNPCだから」
プレイヤーはNPCのことなんて気にする必要はないんだ。
僕はそう言ったけどアリアナは首を横に振る。
「そんな人間みたいなこと言うあなたを放っておけるわけないでしょ」
そう言うと彼女は僕の手を
僕の体がゾンビ穴から抜け出た途端、穴からゾンビが湧き出してきた。
でも周囲を全部、
アリアナは僕を連れて
これでゾンビ穴の真上には吹き出し口をふさがれた煙突が、さながら塔のようにそびえ立った。
ついにゾンビ穴を
「やったぁ!」
「ミッション・クリアーだ!」
僕らは嬉しくて思わず
「アリアナ。おめでとう。それに助けてくれてありがとう」
「無茶なことするから、こっちが腰抜かすかと思った。ビックリさせないでよ、もう。でも……こっちこそありがとう。アル君のおかげよ」
アリアナはそう言うと少し神妙な顔になって僕を見た。
んん?
何だろう。
アリアナは少しだけ考え込むようにしていたけど、やがて意を決したようにこう言った。
「アル君。私、あなたに謝らないといけないことがあるの」
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