第4話体の制限

 体育の授業。

 バスケットコートにて、少年少女の青春を謳歌する音が響き渡る。


 長い赤髪を風によって揺れ動かしながらもバスケットボールを保持した少女はドリブルをしながら、ゴールへ疾走する。勇者の家系もあるせいか、彼女は運動神経がよく、運動部の男性ですらあの疾走を止めることはできない。


 彼女がゴール手前でシュートの体制をとる。


まどか「させるか!!」


 私は夏凛の前で飛び両手を上へあげた。人形に魂をいれることで転生した体は、少女の型をしているが高く飛べた。


夏凛「高い!!」


 夏凛はシュート動作途中で戸惑ってしまった。

 しかし、夏凛の後ろから…


???「後ろだ!!」


 夏凛はシュート動作から無理矢理に体をねじり、後ろを向きパスを送る。


まどか「しまった!!」


 私は空中で身動きが取れない。自分の身長と同等の高さを飛んでしまったため、数秒は動けない。


夏凛「いけー、鉄!」


鉄「おうよ、まかせろ」


 バスケットボールは夏凛から鉄へと渡る。鉄はドリブルをして前進する。私と夏凛を通り過ぎ、ゴール前で立ち止まる。そこに百合子が阻むが、鉄はシュートを決める。


夏凛「ナイス、鉄」


 鉄と夏凛のハイタッチが鳴り響く。


百合子「ごめんない、魔王様」


まどか「気にすることはない、得点を取られたなら取り返せばよい」


百合子「これさえなければ……」


 百合子は右腕のブレスレットを私に見せる。そのブレスレットは体育の授業時に必ず身につけなければならないもので、身につけていると魔法の使用が不可となる。体育の授業では”純粋な身体能力”を測りたい。支援魔法などで身体能力を底上げされると測れないためにブレスレットを義務化されている。


 私は百合子へ返した。

 百合子の支援魔法があれば、きっと楽になるはずだ。それは他のものも支援魔法を使える状態となる。しかし、私は人形の身であるせいか、魔法の元になる魔素がない。魔素がなければ、魔法を発動できない。


 周りが魔法を使える環境下で私のみ使えない状態は難儀であることを百合子に伝えた。

 百合子はすこし顔を曇らせていた。


まどか「まあ、どのような状況になっても魔王である私は勝つがな」


 百合子に元気なってもらいたくって虚勢をはった。


百合子「はい、魔王様 百合子も負けません」


 百合子も元気に返してくれて私は安堵した。


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