日本視点3話 前夜

父はとても厳しい人だった。

母はとても優しい人だった。

しかし私は父も母も敬愛している。

僕は父の厳しさの裏にある優しさを知っていた。

僕は母の優しさの裏にある苦労を知っていた。

父と母の夢を見た。

父と母と食卓を囲み家族団欒の時間を過ごしている風景の夢を。

もし世界が常に平和で人が争う事無き世界なら繁栄の無い代わりに軍も必要とせずに人々は種の繁栄にのみ従事しただろう。

そこまでとは言わない、そこまでとは言わぬから家族が集まり食事を摂ることができるぐらいの幸せと幸福が僕はほしかった。

窓の外を見てみると辺り一面真っ暗になっていた。

4時間ぐらい寝ていたようだ。

何もする事がない。

私は夢で見た光景を思い出し亡き父と母のことを思い出していた。

しばらくしてノックの音とともに誰かが入ってきた。

「西九条上級大佐からの命令を伝えに参りました田中少尉と申します。」

「山村です、よろしくお願いします」

「上級少佐より連絡ですが22:00に06号室に来るようにとの事です。それと食事は18:00より20:00までに食堂に行けば食べられるから行ってもいいとのことです」

「わかりました。ありがとうございます。」

「食堂の場所わからないですよね?一緒に行きますか?」

「ぜひお願いします」

田中少尉と雑談をしながら食堂まで廊下を歩いた。

まだ任官してない為衛士でも軍属でも無いが緊張してまう。

とても広い食堂についた。

一人で食べている人も数多く居たが複数人、おそらく同じ部隊の仲間同士か同期の人同士で食べているのだろう人も多く居た。

長い列に並び定食を受け取った。

端っこの方のカウンター席に座り一人で夕食をとった。

この日はカツレツだったが評判通り軍の食事はとても美味しかった。

食事を終え呼ばれている時間に近くなったので教えてもらった部屋に足を運んだ。

夜ということあり廊下は薄暗くどこか寂しい雰囲気が辺りを包んだ。

「ここだ」

ノックをして入ろうとしたが中から声が出てしたのでその手を下ろした。

「では、行政長官は東久邇宮様にお任せる方向でよろしいですかね」

「それでよい、これで大方は決まったな。3日間でここまで決定できたのは皆のおかげだありがとう。」

「これにて解散!」

部屋の中からの解散の声が聞こえると何人かの人が部屋から出てきた。

見るからに近衛の上層部の人だろう。

僕は反射的に敬礼をした。

中から人が出切ったあとにノックをして僕は入室した。

「失礼します呼ばれましたので参りました」

「よく来た、そこに座りなさい。」

「はい、わかりました」

「君を呼んだ理由は二つだ、まず一つ書類を書いてもらいたくてな。今目を通して書いてくれ。」

「わかりました。」

数分後…

「全て書き終わりました。」

「よし、一度立ちなさい」

僕は言われた通りに立ち上がった

「現時刻を持って、貴方を近衛軍衛士として任官する。尚正式な段階を踏み任官したわけではないため一時的な特別任官とする。本件が収束した後には一般臣民に戻ってもらうが近衛に身を置いたことを誇りに思い臣民の手本となるよう心がけることを要求す。」

「承服いたします。この身に変えても皇帝陛下と臣民を御護りすることを約束し要求に応じることを誓います。」

僕は誓いを立て任官した。

「これで君は近衛軍衛士だよ。だから制服が無いとおかしいだろ?」

「たしかにそうですね」

「少し染みになってるが問題なく着れるだろう。君には制服としてこれを授けよう。」

「上級少佐、誠に失礼でございますが制服は貸し出しではないのですか?」

「見てみなさい」

僕は折りたたまれた制服をひらいて見てみた。

色が違う。

近衛軍の制服ではなく陸軍の制服だった。

「君のお父さんの制服だよ。父の無念も背負い戦いに赴こう。」

その時意味を理解した。

どうやって手に入れたのかはわからないが、上級少佐は父の遺品の制服を僕にくれたのだった。

「はい!尽力いたします、しかし上級少佐はなぜ私にここまでしてくれるのですか?」

「…私の父も無念に散った軍人だったんだ、君の心中はある程度察することができるが辛かっただろう。」

「えぇ辛かったですよでも上級少佐のお陰で僕は、僕は…」

「時間だ、明日の昼頃より作戦展開するから部屋に帰りゆっくりと眠りなさい。」

「わかりました」

僕は父と共に戦う。

腐りきった国賊売国奴を討ち倒すために、未だに囚われた母を救うために。

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