皇帝暗殺の章
日本視点 1話 真相
西九条さん達に牢屋から助け出され車に乗せられた。
それから少しして西九条さんが口を開いた。
「これから葉山にある近衛軍関東衛戍地に向かう。」
「え?近衛軍の衛戍地に行ったら国賊として僕は殺されるのではないでしょうか?」
「安心しろ関東衛戍地の衛士は皆私の部隊の人間だ。今回の件の事情を理解している」
「そうなんですか。それより今回の件の事情を詳しく教えてはいただけませんか?」
「それは着いたら詳しく話す。」
「わかりました」
車に乗せられて2時間程が経過した。
ようやく葉山の関東衛戍地に到着した。
正門の前には二人の衛士が立っていたが西九条さんの顔を見て門を開けた。
門をくぐった後は車から降り、正面の建物へと入りそこの地下にある会議室に案内された。
「改めて自己紹介させてもらう。私は西九条上級少佐、近衛軍関東衛戍地指揮官、西九条家当主だ。以後よろしく。」
少佐は持ってる肩書きを全て羅列し読み上げ威厳を示そうとしていた。
「よろしくお願いします」
「先ほど約束した通り私が、我々が知っている限りの情報を開示しよう。だがその前に質問だ、世界の超大国はどこだ?」
いきなりの質問で少しビックリしたものの高等国民学校に通っていれば簡単な質問だった。
「大アーリア帝国とアメリカ合衆国です」
上級少佐はニヤリと笑った。
「大日本帝国は超大国に含まれないのか?」
とても初歩的質問をされ僕は少し戸惑った。
「大日本帝国は含まれません。大日本帝国単独での領土は大アーリア帝国にもアメリカ合衆国にも、それどころか超大国では無いソビエト社会主義共和国連邦にすら負けてしまいます。それ故に国内総生産など国力の単純比較でも超大国とは言えません。しかし大東亜連合で見れば超大国に入ることはできます」
僕は出来るだけ簡潔に事実を述べた。
「素晴らしい完答だ。近衛軍に入ってもやっていける程の知識を持っているな。」
何かを言われるかと身構えていたが素直に褒められとても嬉しかった。
「お褒めにあずかり光栄です上級少佐」
「では話が逸れる前に本題に入ろう。もし先ほど君が羅列した超大国、そして大東亜連合の領土が一つの思想で統一されればどうなるかは想像がつくか?」
想像がつかなくは無いものの、実現する事はまず無いだろうと僕は思った。
「想像はつきます。世界が一つに統一されると言えますよね。」
「その通りだ、そして首相等はそれをやろうとしている。」
何を言っているのか理解できなかった。
「仰ってる意味がわかりません。」
僕は思った事をきっぱりと話した。
「意味がわからなくて当然だ。突拍子も無い話だからな。」
「どういうことですか?」
「一から説明する。首相は神を愚弄し悪魔を崇拝している者達の仲間だ。もちろん今までの皇帝陛下への忠誠的な態度は全て偽りであった。そして首相は悪魔崇拝者で世界を乗っ取ろうとするアーリア帝国のヒトラー二世やアメリカの奴らと共謀している。しかし皇帝陛下とバチカンの法王陛下がいる限りは自由に動く事はできない。法王派や皇帝派に止められてしまうからな。だから首相は陸軍のとある男を使い皇帝を殺した。次は恐らく法王だと思う。」
突拍子も無い話をされて混乱していたがそれよりも疑問点や、とある男の正体が知りたかった。
「とある男というのは誰なんですか?」
僕が質問をすると上級少佐は今朝の新聞を出してきた。
そこの一面には父の後ろ姿と銃を構えた一人の男が写る写真が載っていた。
「神平幸之助、君のお父さんの介錯人だよ。つまり君のお父さんを殺した人物だ。」
「父は自決したんですね。そしてこの男が介錯人…しかしこの男に何かあるんですか?」
「この男が皇帝陛下を殺し君のお父さんを犯人に仕立て上げ自決させた張本人だよ」
「嘘だろ、最低の大罪人がこんな堂々と新聞に載っているなんてふざけんな!」
僕は考えずに発言してしまった。
「相当怒りを抱えているようだな。まぁ、無理もないがな。父を殺され、罪をなすりつけられ皇帝陛下も殺されたのではな。」
「すいません、動揺もあって考えずに発言してしまいました。」
「構わんよ。だが少し落ち着きなさい」
僕はここまで話を聞き途中から感じていた違和感の正体に気づいた。
「西九条さん、一つ質問をしてもよろしいですか?」
「許可する。なんだね?」
「なぜ貴方はここまで多くの事を知っているんですか?」
「君は本当に観察力が優れているなー、その質問を待っていたよ。真犯人である神平幸之助は私の妻の兄なんだよ、だから盗聴を仕掛けてた。盗聴は戦中から今の時代まで何年たっても敵の情報を知るには本当に有効な手段だよ。」
授業でも習った、盗聴は有効だ。
「そうだったんですか、納得できました」
「それなら良かったよ。話は以上だよ。私の知る情報はここまでだ。しばらくはここの地下3階の兵舎の一室を使いなさい。面倒を見てあげよう。」
「わかりました、ありがとうございます。」
とりあえず安心した。
真相も聞けたししばらくは面倒を見てもらえるからこれからを考える事も、復讐を考える事もできる。
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