第三十七幕「Ent」
「アンドロイドの核に関して、我々は構造原理を理解するどころか、その内部を無傷のまま見たことすらない。謎に包まれたこの機械を前に、我々は手が出せない―しかし、アンドロイドの機能を保ったままそれをやってのける存在がいる。そうなってしまうのですわ」
「そこで君らの登場だ」
ドクターが立ち上がる。
いつの間にか落とされていた照明が会議室を明るくした。
「君らにはある組織について調べてもらう。その名は高田ノ園―ここ最近で急速に勢力を増してきている民間団体だ。機械という一分野に関して、彼らほど詳しいものはいないだろう」
よっと、とドクターが資料を手渡してきた。
「彼らはもともと、有志の者が集って設立された組織だ。初めはアンドロイドに関する考察なんかを共有するなどしていたがやがてその規模は拡大、一つのアーカイヴを成すまでになった。それからの成長は天井を知らず、アンドロイド遺族や災厄ホームレスに支援を施す慈善活動を呑み込み、今では管制組織にも劣らない存在となった」
ただ、と彼は付け加える。
「公安局とてこの組織を黙って見ていたわけではない。当然これの調査や分析を行ってきた。そうして今にきて、彼らの名が特によく上がるようになった。それは公的な場においても、公安局の各捜査線上においても、だ」
ドクターが白衣を正し、机に力強く手を乗せて宣言した。
「我々はこれを重く受け止め、高田ノ園ならびにその構成員を全て重要捜査対象と認定―彼らを人類の共通敵、メカに関連したものであるとし、局長より与えられたアンドロイド殲滅の特務を背負う公安局機械化班の全権力をもってして彼らを調べ上げることとした。目的は大まかに分けて二つ。―
―まず一つは昨今のアンドロイド犯罪との関与があるか。そして、アンドロイド改造の手がかりだ」
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