第二十四幕「今宵の闇に踊りましょう」

【法的破壊=解除を確認。亜活性化マナ理論式臨界機構―始動します】

【法的破壊=解除を確認。反動化マナ理論式崩壊機構―始動します】

 二重に重なった音声が鳴り響く。熱が空気を焦がした。

 見覚えのあるロングコートが宙を舞った―かと思うと、青白い光の軌跡が闇に描かれた。間髪入れずに、紅の一閃が横一文字に引かれる。振りぬかれた大剣が地面を走り、アスファルトの破片を蹴り上げた。

 一方インの太刀筋を見切った機械メカが、紙一重のところでそれを避けていた。

 青白く光るかかとを踏み込み、彼女が続けざまに切り上げる。抉れた道路から剣の刃が飛び跳ね、火花を散らした。すんでのところでこれも避けると読むや、インはそのまま剣の横っ腹で機械を殴りつけた。

 乾いた音が鳴り響き、怪物の体吹き飛ぶ。刃と触れた箇所が燃えるように赤く光り出す―と、小規模な爆発が起きた。

 地べたに叩きつけられた機械が、甲高い音で喘ぐ。煙が昇るその胴からは、およそ脇腹というべき部分が消失していた。

「小僧!車の奴を頼む!」クルードがマグナムの銃声に負けぬよう叫ぶ。

 弾を浴びせかけられている機械メカの方はというと、恐らくは彼の機械仕掛けの脚の蹴りを受けたのだろう、ほとんど取れかけている腕を振り回して踊り狂っていた。

「了解!」いいながら視線を直す。その先には、黒色の軽自動車があった。未だ姿を見せぬ第三のアンドロイド、その隠れ場所だ。

「―法的破壊=解除」言い放つのと同時に、肩のジッパーを全開にする。風で押しのけられた袖が背中に持っていかれ、闇に紛れる右腕が顔を出す。

【法的破壊=解除を確認。有虚マナ理論式放出機構―始動します】

 腕を覆う装甲の隙間からお馴染みの光が漏れ、熱気を放った。

『援護は任せて頂戴。榴弾を持ってきてあるから』ベスが通信越しに言った。

 前回の復讐をする時だ。そう誓って、武器手榴弾を握りしめた。





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