第八・五幕「まいあんさぁ」

『私達と一緒に、シンジュクを、人類都市を、守ってくれる?』

 僕にはその言葉がこだまをしているかのように、繰り返し聞こえた。

 

 ここで頷くことが、どれほど僕の運命を変えるのか。

 それは、僕の想像をはるかに超えている。ただ理解できるのは、今この瞬間、決して後戻りのできない選択を迫られていることだった。

 答えはもう既に決まっている。いや、決まってしまっている。

僕は死人だ。ここで生きていくこと以外、もうできはしないのだろう。

 情けないことに、僕は泣き出していた。喪失感が、不安が、恐怖が、今になって胸を締め付けていたのだ。

 

 ただ、ここが正念場だと、僕は僕に言い聞かせた。

 これまでの人生でも、今この瞬間までも、振り回されることが多かったように記憶が訴える。

 ならば、いつまでも被害者ぶることは辞めて、己の運命を定める時が、今なのかもしれない。

 もう少し、楽な選択肢が欲しかったな、なんていうのは贅沢か。


 最後の冗談を噛みしめて―腫れた喉から声を絞りだす―

「はい。よろしく、お願い、します」

 キャンベル局長の瞳が光で溢れた。そして、静寂が消えた。

「うん!あらためてよろしくね、ヒロ!」

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