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「そう。実はドライブデートって初めてでどこに行けばいいのか分からなくて、友達に協力してもらってたんだ」

「どこの夜景が良いか、とか?」

「ん。海が良いのか、山が良いのか。いろんな本とか読んでな。で、五か所くらい付き合ってもらって」

「五か所!?」

「で、結局山になって。無事行き先が決まったのは良いけど、父さんだって免許を取ってそんなに時間が経ってないから、ドラテクを必死に練習してだな」

「えー、本当に」

「本当本当。仕事以外はずっと車に乗ってたってくらい」

「そんなに下手だったの?」

 危険な運転してるって思った事、一度も無かったけど。

「いや。まぁ上手くはなかっただろうが、それよりも。母さんに喜んでもらいたかったから。それに」

 格好よく車に乗れた方がイケてるだろ、と続けた父親は初めて見るようなドヤ顔で。

「イケてるって」

 父親の口からそんな言葉を聞いたのは初めてかもしれない。

「母さんは喜んでくれたの」

「そりゃもちろん。何度も綺麗だって笑ってくれて。男の人はやっぱり車を運転できる方が格好いいわよねって言って、毎回デートの時は車出してたなぁ」

 単純、と思いつつも、その格好よさが良いなとも思って。

「じゃあ、ここは母さんの場所なんだね」

 父さんを横で眺められる特等席は。

「今日は特別だからな」

「ありがと」

 ハンドルを握る姿が、いつもより頼もし気で格好良く見えて。

 うちの駐車場って、月極めいくらだっけ。なんて、免許もないのに気が早いか。

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