シンプルな答え
カゲトモ
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「バイクに乗るのはやめたのか」
「え? バイク?」
駅に向かう車、ハンドルを握っているのは父親だ。
「お前、車の免許は持ってなかっただろ?」
いかにも。中型バイクの免許を取ってから教習所には通っていません。
「だって向こうは駐車料金高いし、べつに車なくても困らないし」
ICカードさえあればとりあえずやって行けるわけで。車に乗るのも憧れたけどなぁ。
「そうだなぁ、電車が沢山通っていると逆に車は邪魔かもしれないな」
「だから結局車の免許は取ってない。バイクも、新しいのを買うつもりで一度手放したらそれからなんとなく買う機会が無くて。行動範囲も徒歩と電車とかバスで間に合うし、今はいらないかなって」
「そうか、まぁそれで間に合うなら、別にいらないか」
「父さんは昔から車の免許持ってたの?」
「持ってたよ。それこそ昔は乗り回してたなぁ」
「えっ、嘘!」
父親=仕事のイメージが強くて、なんか昭和の親父って感じもするのに、昔は車乗り回してたの? 想像できない。
「嘘じゃないさ。母さんをデートに連れて行く時も大体車だったし」
「そう、なんだ」
「それに母さんに出会った頃は、今住んでいるところほどではないけど、結構な田舎でな。車がないと生活できないところだったから」
「へぇ」
「だからみんな学校を卒業したらすぐに免許取りに行ったりして。それで海までドライブ行ったり、山越えたりして、色んなところへ行ったなぁ」
「初デートもドライブだったりしたの?」
確か両親の出会いは、よくあるような友達の紹介、だったと思う。ぼんやりとしか覚えていないけど、友達主催のバーベキューで出会ったとか何とか、昔母親が言っていたような記憶。今も昔も、男女の出会い方はそう変わらないようだ。
「そうだなぁ、初デートはドライブして夜景を観に行ったな」
「へぇ、凄いじゃん。海?」
「いや、山」
「山?」
そう訊くと、父親は、ふ、と笑みを零した。
「なに、どうしたの」
「いや、実はその時、友達と予行練習しててな」
「予行練習?」
初デートのドライブに?
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