深淵。そこを旅する者たち。
文学に限らず、芸術とは底の見えない巨大な穴である。
読者はその穴の淵に立って深淵を覗いているに過ぎず、その底に何があるのかは誰も知らない。
その底を見ようと、穴の淵からから中に飛び込んだのが作家である。
おそらくそれは人が持つ知的好奇心によって引き起こされた一種の奇行と言えるだろう。底が深淵に飲まれているからこそ、そこに何があるのかを知りたくなるのだ。
好奇心。
穴があれば底がある。
そうして深淵に飲まれた底を求めて真っ暗な穴の中を落ち続けるのが所謂作家なのである。
金にならない。時間がかかる。それでも書き続けるのはその先に必ず存在するであろう何かを求めているからだ。
それは答えであり、幻想であり、真実であり、そして無である。
何物もならないそれを私は求める。外でもない私の為に。
そう。私たちが相手にしているのは、私たちの頭の奥に潜む知性そのものであるのだ。
とある若者の戯れ言。(小説コラム集) 朝乃雨音 @asano-amane281
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