第53話
「街に面する内海の中央に祭壇があってその中にあるらしい
今日はその祭壇を祭る祭りだったらしいな」
相沢たち四人は、カルダのその話に聞き入った。そして、この街はお祭りをするほど、その祭壇のことを大事に思っているのだと、そう思えるのだった。
「そうなると船がいるわね」
「船着き場にいけば何とかなるだろ」
カルダのその意見は楽観的なようにも思えたけど、他に手があるわけでもなかったし、素直にそれに従うことにした。
◇
そして、五人は連れ立って船着き場へと向かう。所々に案内標識のようなものもあったし、海を目指せばよかったから、それほど迷うようなこともなかった。
途中、物凄い轟音を鳴らす水門のような場所や、噴水のような小さな広場を横目に見ながら、船着き場を目指すのだった。
そこに近づくにつれ、辺りには潮の匂いが増し、また、人々にも活気があるように思える。
船に乗り込むためだろうか、早足に急ぐ家族の姿や、荷車を引く人たち、お祭りの時とは違った騒がしさがそこにひしめいていた。
カルダは手ごろそうな船を見つけると、そこに交渉に行くのだった。そして、しばらくして戻ってくると四人にこう伝えた。
「だめだ、観光として外から眺めることができるそうだけど、着岸は無理だと言われた」
「困ったわね。だけど、この街の人たちも水のエレメントの危機に気づいてないのかしら」
「どうも神聖な場所らしいな、近づくことを恐れていたようにも見えた」
相沢とカルダはもはや考え込むしかなかった。相沢が考え込む脇で、カルダはあたりを見渡し、難しい顔をしていた。
「今夜、いや、明日の早朝。やってみよう」
「この街の対岸に移動しよう、ここからでは無理だ」
カルダは港の対岸を指さすと、そこへ行くようにみんなを促した。
◇
対岸へとたどり着くと、カルダはいつものように焚火をくみ上げ、どうやら今日も野宿になりそうだった。
カルダは、焚火をくみ上げるも、動きを止める様子はなかった。バキバキと枝を折り、ツルのようなものを採取しては、焚火の周りに集めせわしく動く。
「ノーク、ちょっとそっち抑えててくれないか」
あらかた材料が集め終わったのか、カルダはノークを呼び寄せると、何かを組み始めた。カルダは、いかだを作り出そうとしていたのだ。
そんな姿をみて、相沢は改めて感心するのだった。この人はなんでもできてしまうのだなと。
その作業は夜通し行われているようだった。その横で、相沢とミーナはうとうとし、いつの間にか眠ってしまっていたようだった。
そして、翌朝目が覚めたころにはそれはほぼ完成していた。ノークとカルダは元気なもので、楽しそうにその作業を進めているのだった。
「ノーク君、カルダさん、無理しちゃだめよ」
「無理なんかしてないぞ」
男の人って、夢中になると夜通しでもそれを成し遂げてしまうことに、相沢はどこかしら関心のようなものを抱いていしまう。
ようやく組みあがったいかだを砂地の浜に置くと、いよいよ出発だった。
そのいかだは、五人が乗るには少し小さかったけど、だれかを置いていくわけにもいかなかったから、仕方なく、詰め詰めで全員が乗り込むことに。
ノークが中央を占領し、カルダは右の舵を、隼人が右の舵を担当することになった。
そして、海に乗り出す五人。波は穏やかで、ゆったりと進むそれに安心感を覚えることができた。
しばらくたったころだろうか、ノークが何かの異変を感知する。
「なんだろ、何か様子がおかしい」
「どうしたの?ノーク君」
「分からない」
「ほら、あれ」
そう言い、ノークが指を指すもそこには穏やかな海が広がっているばかりで、何も変わった様子はなかった。
「ほら、また」
そう言われ、目を凝らすも、やはり何もない。
「何も……」
そう言いかけた時だった、黒い影が、相沢の目にもはっきりと映った。海の中をうごめくその黒い影はいかだを周回するように回ると、また消えていく。
「何、あれ……」
「皆、いかだにしがみつけ、まずいぞ!」
ペルソナ~心を失った少年~ ユウ @yuu_x001
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