第52話
川は穏やかに流れ、空の光を映し出し、風が吹けば逆らうことなくさざなむ。
表面はキラキラと輝き、その冷たい体内では小魚が気持ちよさそうに泳ぐ。
空気はよく澄み渡り、どこまでも見渡せそうだった。
そんな中を五人は辺りを楽しみながらも、次の目的地である水の都を目指す。
「この上流付近にあるはずだ」
カルダもすっかり元気を取り戻し、土の大地にいた時よりも声に張りがあるように見受けられる。
「心地いいね、水のエレメントの影響もあるのかな?」
相沢の心は踊っていた。カルダと同じく、先ほどの光景に比べればといったところだろうか。
そうして、しばらくたったころだろうか、目の前に、水車のようなものが見え始め、それは幾重にも続きその奥に街らしきものが見え始める。
◇
門からは水が溢れ、両側が滝のようになっていた。それはまるで滝のアーチのような、構えをしていて、周りには小さな虹がいくつもできていた。
ノークはやはり興味があるのか、近づくと、しばらくまじまじと眺める。もちろんミーナも一緒に。
ノークと出会ってからというもの、ミーナの顔にも少しずつ変化が表れてきたように思う。
はじめのうち、その表情は硬く、何も現してはいなかったけど、今は興味津々という顔をしていた。
滝のアーチをくぐった街中はいくつか段差が設けられていて、水が効率よく流れているように思えた。
流れや街の風景を楽しみながら街を進んでいくと、なんだか騒がしいことに気づく。
辺りには、所々に、色鮮やかな風船が飾られ、子供たちが楽しそうにはしゃいでいる。
勿論、ノークとミーナの顔も輝いた。
そして、相沢の服を引っ張ると、行ってきていいかという顔をする。
「ちょっとだけよ、エレメント復活させなきゃならないんだから」
そして、ノークはミーナの手を引き、人ごみに消えていき、カルダは呑んでくると言っていってしまうのだった。
取り残された、相沢と隼人は、仕方なくといった風に、近くのベンチに腰掛け、辺りを見渡すのだった。
「みんな楽しそうね」
隼人は、コクリと頷いたものの、実際のところ、こういった場所は苦手だった。それは苦手な人がたくさんいるからだ。
「隼人君、やっぱりこういう場所苦手なのね」
相沢は察したようにそう言うと、こう続けた。
「人、苦手?」
その問いに対し、頷きで返す隼人。
「私が抱きしめてみたら、人間嫌いじゃなくなるかな?」
それに対しては、隼人は無反応だった。
「隼人君、ちょっと覗いてこよ」
そう言うと相沢は、隼人の手を引き、彼女らもまた、人ごみの中に消えていくのだった。
◇
彼らはひとしきり楽しむと、また元の場所へと習合していた。
「各々デートを楽しんだみたいだな」
おう、というノークと、無反応な隼人組。
「まぁいい、おかげで情報を掴めた。水のエレメントを目指すぞ」
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