第52話


 川は穏やかに流れ、空の光を映し出し、風が吹けば逆らうことなくさざなむ。

 表面はキラキラと輝き、その冷たい体内では小魚が気持ちよさそうに泳ぐ。

 空気はよく澄み渡り、どこまでも見渡せそうだった。


 そんな中を五人は辺りを楽しみながらも、次の目的地である水の都を目指す。


「この上流付近にあるはずだ」


 カルダもすっかり元気を取り戻し、土の大地にいた時よりも声に張りがあるように見受けられる。


「心地いいね、水のエレメントの影響もあるのかな?」


 相沢の心は踊っていた。カルダと同じく、先ほどの光景に比べればといったところだろうか。


 そうして、しばらくたったころだろうか、目の前に、水車のようなものが見え始め、それは幾重にも続きその奥に街らしきものが見え始める。





 門からは水が溢れ、両側が滝のようになっていた。それはまるで滝のアーチのような、構えをしていて、周りには小さな虹がいくつもできていた。


 ノークはやはり興味があるのか、近づくと、しばらくまじまじと眺める。もちろんミーナも一緒に。

 ノークと出会ってからというもの、ミーナの顔にも少しずつ変化が表れてきたように思う。

 はじめのうち、その表情は硬く、何も現してはいなかったけど、今は興味津々という顔をしていた。


 滝のアーチをくぐった街中はいくつか段差が設けられていて、水が効率よく流れているように思えた。

 流れや街の風景を楽しみながら街を進んでいくと、なんだか騒がしいことに気づく。


 辺りには、所々に、色鮮やかな風船が飾られ、子供たちが楽しそうにはしゃいでいる。

 勿論、ノークとミーナの顔も輝いた。

 そして、相沢の服を引っ張ると、行ってきていいかという顔をする。


「ちょっとだけよ、エレメント復活させなきゃならないんだから」


 そして、ノークはミーナの手を引き、人ごみに消えていき、カルダは呑んでくると言っていってしまうのだった。

 取り残された、相沢と隼人は、仕方なくといった風に、近くのベンチに腰掛け、辺りを見渡すのだった。


「みんな楽しそうね」


 隼人は、コクリと頷いたものの、実際のところ、こういった場所は苦手だった。それは苦手な人がたくさんいるからだ。


「隼人君、やっぱりこういう場所苦手なのね」


 相沢は察したようにそう言うと、こう続けた。


「人、苦手?」


 その問いに対し、頷きで返す隼人。


「私が抱きしめてみたら、人間嫌いじゃなくなるかな?」


 それに対しては、隼人は無反応だった。


「隼人君、ちょっと覗いてこよ」


 そう言うと相沢は、隼人の手を引き、彼女らもまた、人ごみの中に消えていくのだった。





 彼らはひとしきり楽しむと、また元の場所へと習合していた。


「各々デートを楽しんだみたいだな」


 おう、というノークと、無反応な隼人組。


「まぁいい、おかげで情報を掴めた。水のエレメントを目指すぞ」

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