第50話


 ノークを肩に担ぎ、再び彼らは歩き始める。

 目標物なんて何もない上、先のソイルワームの影響で方向も見失いかけていた。


「何かあればすぐに教えるんだぞ」


 カルダは頭の上のノークにそう話しかける。

 ノークがカルダの上で大きく頷くと、カルダの体がぐらぐらと揺れる。


「できればおとなしくしててな」


 そしてノークはもう一度大きく頷く。


 相変わらず、辺りは茶色一色で、照り付ける太陽がもろに当たり、彼らを苦しめるのだった。


「つらいはわかるが、急がねーとな」


 ふわふわする頭で、あの土砂のことを脳裏に浮かべる。

 そして、あの惨事が再び三度起こればどうなるかと。


 すると、頭の上のノークが何かを見つけたように目を細め、前方を凝らすように何かを見つめる。

「何かある」


 カルダは先ほどのこともあり、期待と不安を胸にそれに聞き返すのだった。


「何がある」


「建物?ぽい」


「ほんとか。それは街か」


「いや、一個だけ」


 そして、カルダも同じく目を凝らすように前方を見据えると、確かにあった。

 何かしら建物のようなものが。



 近づくとそれは、やはり土でできてはいたものの、細かな装飾が施されており、屋根も飾り屋根のような形で、段が区切られ、中心に向かって四角推の形を描いていた。


 その前には二体、角ばった人のような形が模られた像が据えられていた。


「こいつ動かないよな」


 カルダが慎重に小突いてみたものの、それに特に変化は見られなかった。


 そして、また警戒しながら、その入り口に立つと、それはあった。

 ほのかに茶色っぽい光を放ち、弱くはなっていたけど、それは確かに法陣だった。


「復帰させる、急ぐぞ」


 そして、彼らが、入口付近に足をかけたその時、後ろで、ゴリッという音がし、何かの気配を感じられるのだった。

 振り向くと、先ほどの二体の像は動き出し、今にも攻撃を仕掛けようとしていた。


「まずい、逃げろ」


 カルダの号令で、五人は素早く散ると、戦闘態勢に入る。


 カルダは素早い動きで、そいつに攻撃を加えるも、そいつの体は柔らかく、切り付けた傍からすぐにでも元に戻ってしまう。


 続けて隼人が攻撃するも、やはり結果は同じだった。


「ダメだ、きりがねぇ」


「そうだ、相沢、水だ、エレガントで水を頼む」


 そう言われ、はっとなった相沢は、エレガント?を構え、水のエレメントを放出すると、そいつの乾いた体は水に濡れ、先ほどまでのサラサラとした感じはなくなる。


 これならと、カルダは再度切り付けにかかる。

 カルダのダガーはそいつにガッと突き刺去った感触を覚え、カルダはそのまま一気に振りぬく。


 作戦は成功だった、見事にそいつの体の一部は崩れ落ち、戻る様子はなかった。


「隼人、いけるぞ」


 その号令に隼人もすかさず、手に持つトンファーを振るうと、ザシュという音に続き、そいつの体は崩れ落ちるのだった。


 しかし、カルダは異変に気付く。崩しても崩してもそいつが倒れる様子がないのだ。


「まずい、どうしたらいい」


 その言葉に相沢が何かを思いついたように口を開く。


「術者よ。ゴーレムなら術者がいるはずよ。それを何とかすれば」


 カルダはそれに適した人物を探した。今自由に動ける人物は……。


「ノーク!あたりを捜索!術者がいないか探してくれ!」

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